2020年中国と開戦した日本は中国軍航空母艦による首都東京空襲により壊滅する。核兵器が使用され、東京は廃墟と化した。この戦いで、同盟国アメリカは参戦しなかった。日本は見捨てられたのだ。遥達防衛省技術開発本部の面々は核爆弾の直撃時に昭和元年にタイムスリップした。皆、中国、アメリカへの復讐に燃えていた。皆、家族を東京空襲で亡くすたのだ無理も無い話だった。
防衛省技術開発本部がタイムスリップしたのは帝国海軍海軍施設内だった。遥達と帝国海軍軍人が接触すると、たちまち海軍上層部は大騒ぎになった。開発本部長「鳴海 晃」と海軍の連合艦隊司令長官「加藤 寛治」、軍令部長「鈴木 貫太郎」とが会談を持ち、技術開発本部と海軍が協力する事となった。
技術開発本部は海軍内でJSDFと呼ばれる事となった。遥と隼人は海軍に配属される事になった。
タイムスリップから2年、日本には段々変化が出始めていた。大規模な景気刺激策により好景気に湧いた。旧史の製糸業に加えて化学繊維業界とアパレル業界が日本の主力産業となりつつあった。
日本の繊維業界とアパレル業界がいよいよ躍進してきた。ついにナイロン66が完成した。
日本は新しい繊維とファッションセンスを海外に提示する予定だ。
遥と隼人は海軍将校としてヨーロッパに来ていた。そんな中、技術開発本部の仲間から連絡が入った。
お昼の紅茶を飲んで過ごしていた遥に一本の電話が入る。ここは英国の日本領事館だ。
「なんだろう。私に電話なんて?この時代に私の知り合いは少ないのに。」
「もしもし?え、みなみさん?どうしたの?助けて欲しい?」
みなみは技術開発本部の研究員だ。今、パリにいるらしい。彼女は今回の繊維業界とアパレル業界の宣伝の為、パリに来ていた。目的はずばりパリコレだ。
「でも、パリコレでなんで私が必要なんだろう?」
遥は訝しいんだが、とにかく急ぎ、パリに向かった。飛行機は無い、船と列車でパリを目指す。
「みなみさん久しぶり。」
「遥も元気そう!」
「でも突然なんなんですか?それに普段着を持って来いって?パリコレでしょ。オートクチュールのファッションショーになんで私の普段着がいるのですか?」
「なかなか、いい服が出来なかったのよ。もちろん、いくつかはあったけど。それに私たちが提案するのは豪華なオートクチュールじゃ無いわ。ファストファッションよ。」
「ファストファッション?だって、これパリコレでしょ?パリコレでファストファッションって?私、本当にユニクロやシマムラもって来ましたよ。」
「日本の技術じゃ未だ、欧米の技術には太刀打ち出来ないのよ。逆に、ファストファッションならこの時代の人の度肝を抜けるわ。この時代にはミニスカートすら無いのよ。」
「うーん。話は判ったけど、それなら、せめて国際郵便で何とかなったのに。いくら何でも、宅配便扱いは酷いですよ。」
「何を言っているのよ。服があってもモデルがいないんじゃ仕方が無いじゃ無いの?」
「モデル?何の事ですか?あっ。ちょっとわかっちゃった気がします。パスパス。ちょっと無理。」
「駄目よ国の威信がかかっているのよ!」
「だってモデルなら他にいるでしょ。現地のフランスの人を使ってもいいじゃ無いですか?」
「あなた奇麗だからしょうが無いじゃないの。三十路の私が出る訳にはいかないんだから。」
「うー」
「それに日本人がモデルという事が重要なのよ。ショーをよりインパクトにあるものにするにはあなたが必要なのよ。」
みなみが遥をモデルに起用しようとしたのは訳があった。この時代の日本人は正座して過ごす事が多く、生活習慣が違う、平成時代育ちの遥は昭和時代のモデル達より遥かに長い手足を持っていた。それに加えて170cm近い長身。そんな日本人女性はこの時代いなかった。
「アジア人独特の華奢な肩幅に長い手足、パリっ子もびっくりするわよ。それに、あなた、お化粧道具持っているのでしょ?私のもあるから、それを使えば。」
「あっ、なるほど、かなり化けられるわ。」
この時代の日本、いや、世界中探しても遥やみなみの持っている様な優秀な化粧道具は無い。それだけでも話題になりそうだ。
こうして遥はモデルの一員となった。断れる訳が無かった。
いよいよ、パリコレが始まると、日本や現地採用のモデル達が驚いた。
「そんな、破廉恥な。そんな短いスカート着るのですか?」
「でもとってもかっこいい。遥さん手足長い。すごい。」
「えっ、やめてよー。恥ずかしいですよ。」
確かに遥の私服はなかなかのものだった。春夏ものだが、ピンクやクリームイエロー等の淡い色の服を中心に、特にTシャツに注目が集まった。
「何か、すごい、大胆。そんな姿で私、外を歩けないわ。」
「はは。」
遥の平成での普段着だが、この時代の人にとってはかなり刺激的らしい。
パリコレが始まった。
遥はメインのモデルとして起用された。モデルウォーキング等できないが、当時は未だ、モデルウォーキング歩きは確立されていないので問題ない。
パリコレの日本のオートクチュールには以外と人が集まった。やはりアジア人の始めての出品なので、気になるのだろう。最も、欧米の者は皆、未だ、未熟な日本のファション業界を確認しにきたにすぎない。しかし、彼らの受けた衝撃は凄まじいものだった。
トップは遥が勤めた、Tシャツ1枚にピンクのスカート。平成のパリコレなら論外だが、いきなり会場はどよめいた。Tシャツにミニスカートいう露出の多い服に皆、度肝を抜かれた。それにお化粧で化けた、いや、遥は以外と奇麗な顔立ちだ。猫の様な魅力的な瞳に知的な風貌。ヨーロッパの人間にとった、とてもエキゾチックに見えた。
次々と出るファストファッションに欧米の人々は衝撃を受けた。そして、遥はたちまち有名人となった。しかも、彼女が海軍将校である事が判明するとますます。驚きが広まった。
当時、女性の軍人等存在しなかった。それがまして将校など信じがたい事だった。
遥はたちまち時の人になった。
こうして日本のパリコレは大盛況となった。日本のアパレル業界にはたちまち買い付けが殺到した。彼らが驚いたのは価格だった。ファストファッションだから当然だが、安価だ。当時の日本の賃金だと、極めて安価に製造出来る。日本のアパレルは安価だが、すばらしくおしゃれなのである。
「あー。緊張した。」
「お疲れ様。とても助かったわ。すごい盛況。大成功よ。持つものは美人の友人だわ。」
「もうからかわないで下さいよ。私そんなに美人じゃ無いですよ。」
「あら、隼人君はそうは思っていない様よ。」
「なっなっ、なんで隼人さんの話しが出るんですか。やめて下さいよ。」
「いや、隼人君もまあまあだからお似合いよ。」
遥は本当にそうなら、早くアプローチして欲しいものだわと心底思った。とても気になる男性だったけど、彼はかなりの朴念仁だ。
「はぁ。」
盛況ぶりとは裏腹に、遥は一人、ため息をついた。
「本当、隼人さん。私の事どう思っているのだろう。あんなにチャンスあげたのに、全然何のお誘いもないのだから嫌になる。好き好きおーらだしているつもりなんだけどなぁー。」
これは彼女の勘違いだ。隼人は遥の事は好きなのだ。しかし、いかんせん、かなりの朴念仁なのだ。なかなかアプローチ出来ないのだ。
「ヨーロッパにいる間にヨーロッパの町並みでデートしたいな。」
彼女の願いは幸い叶えられた。それは別のお話出の事になった。