🌿すべては通り過ぎていく。
だけど、それでも──
誰もいない。
行為者もいない。
この現実も、ただの夢のような
映画の一場面にすぎない。
そう気づいたとき、
胸に広がったのは「自由」ではなく、
言葉にできない、
静かなむなしさでした。
なにを信じればいいのかもわからず、
誰が感じているのかも、曖昧なまま。
それでも──
ひとつだけ残った感覚がありました。
それは、
名前のない “在る” という感覚。
すべてが剥がれ落ちたあとに、
なお残る、
澄んだ透明な気配。
それだけが、
どこまでも真実でした。
🌿
そして私は、
ただ「在る」ということをはじめました。
なにかを目指さず、
誰かになろうとせず、
証明も、主張も、いらない。
ただここに、
風のように在るだけで、
世界はそれを“完全なもの”として
受け入れてくれている気がしたのです。
探すことをやめたとき、
本当は、ずっとここにあったと
気づきました。
🌸
そんな「ただ在る」日々のなかで──
私は思いがけず、
誰かと出会ってしまいました。
それは、
何気ない会話だったかもしれないし、
交わらなかった言葉の、
その沈黙だったかもしれません。
その一瞬に、
涙がにじむような、
言葉ではない“共鳴”が
起きていた。
「あなた」と「わたし」が
分離していると知りながらも、
その分離の夢の中で、
たしかに ふれあってしまった という事実。
それは、幻想の中でしか味わえない、
かけがえのない真実でした。
🕊️
このからだで味わう日々もまた、
すべて幻想かもしれません。
でも、だからこそ──
湯気に包まれた朝、
そっと差し出された手のぬくもり、
ふとしたまなざしに心がふるえるような瞬間。
そのすべてが、
この肉体でしか感じられない奇跡 だったのです。
私はもう、
うまく生きようとは思わなかった。
ただ、
深く味わいたい と願うようになりました。
そして気づいたのです。
それが、
「魂が肉体を選んだ理由」だったのかもしれないと。
🌑
そして、いつか訪れる「死」もまた──
おそろしいものではありませんでした。
それは、終わりではなく、
ただ静かな帰還。
名前も、記憶も、役割も手放して、
“誰でもない場所”にそっと還っていく。
それは無でも虚無でもなく、
すべてとひとつに溶ける静けさ。
そしてそのとき、
私がこの人生でふるわせた
小さな“響き”だけが、
どこかで永遠に残っている。
たった一度きりの、
「わたし」という響き。
それは誰に知られなくてもよかった。
ただこの世界に、
そっと残せただけで十分だったのです。
🌿
いま、言葉たちはすこしだけ
沈黙のなかに戻っていこうとしています。
でもそれは、
お別れではなくて──
ただ、
呼吸をひとつ置くような、そんな感覚です。
いつかまた、
なにげなくこの場所に
言葉が戻ってくることがあるかもしれません。
そのときはまた、
自然に、ふとお会いできたら嬉しいです。
今日まで、
ここにいてくれてありがとう。
出会ってくれて、
耳を傾けてくれて、
ただ、その時間を分かち合ってくれて──
ほんとうに、ありがとう。
また、どこかで。
風のなかで。
光の粒のような、沈黙の奥で。