スッチーだった頃 4 | 「真面目にふざけて、ふざけて真面目に』 真面目なゆうき先生の妄想シリーズ紹介

「真面目にふざけて、ふざけて真面目に』 真面目なゆうき先生の妄想シリーズ紹介

 ひらかわ ゆうき の電子書籍の自信作『妄想総理シリーズ もしも〇〇が総理になったら』の紹介ページ

4.恐怖の脱出シュート

 スチュワーデスの訓練の中に、当時主流になりつつあった、ジャンボジェット機の
脱出シュートを滑り降りる避難訓練がありました。 
脱出シュートは不時着など緊急時に使用する脱出用の滑り台のようなものです。 
飛行機のドアが閉まり、離陸が確実になったら、緊急時に脱出シュートが開くように
スチュワーデスがドア操作して、パーサーに報告することになっていました。

ジャンボジェットは、高さが10m(翼を入れると20m)近くあります。 
ドアも地上から5mくらいの所にありましたから、高さ5,6m程の滑り台だと
思っていただけるとわかりやすいかもしれませんね。

訓練生はつなぎの作業着に着替え、順番に階段を上って、
脱出シュートのてっぺんにある台まで行きます。 
そこから、ポンとジャンプして、お尻をつけた状態で滑って降ります。 
斜面は、普通に滑り台を滑るのと同じ体勢なのですが、一刻を争うので、
ジャンプして飛び降りてもらうのです。

同期がどんどんジャンプして楽しそうに滑っていきます。 だって滑り台ですものね。 
いよいよマザーユウキの番です。
「さあ」 と台の上に立ち、シュートを見降ろしました。

「・・・・・!!!」

マザーユウキの頭の中に恐怖心が渦巻きました。 
「なにこれ!」
「こんな急角度、絶対前につんのめるわよー」
そう思った途端、マザーユウキの脚は動かなくなりました。 
台の上で立ち往生してしまったのです。
マザーユウキの後に上ってきた同期に、先に滑ってもらいながら、
マザーユウキはなんとか恐怖心に打ち勝って滑ろうと試みました。 
でも、なかなか思い切れませんでした。

とうとう同期全員が滑り終えて、マザーユウキ一人が台の上に取り残されました。
「大丈夫よ~」
「頑張って~」
同期の励ましを受けても相変わらず立ち往生のマザーユウキに、教官がかけてくれたのは、

「お客さんを助ければいいんだから、スチュワーデスは滑れなくていいよ」

という優しい???言葉でした。