これらSNSの台頭の中で、企業と消費者のコミュニケーション、マーケティング)も、変化せざるを得ず、そのあるべき姿と、推進の方法が書かれているのが本書になります。
従来、消費者に対する企業のコミュニケーション手段は、主としてマス媒体(TV、新聞等)でした。如何にして広い範囲に、自社の主張を届けるか、これが重要だったわけです。
決してこれらの媒体の重要性が低下したわけではないですが、SNSという新たなコミュニケーション手段は、新たなコミュニケーション方針を必要とします。
例えば、自社のブランドに共感してくれる一部の消費者にメッセージを届け、後は消費者内のコミュニケーションでメッセージを拡散するという考え方です。
この手段をとる場合、企業はコミュニケーションの内容(メッセージ)を統制し続けることは出来なくなります。従って、いわゆる「作られた」メッセージは意味を成さなくなるでしょう。メッセージに作為がある場合、消費者はそれを察知して、異なるメッセージを拡散するでしょうから。企業は自らが伝えたいメッセージを、まさに体現した企業となる必要があります。
そのためには、まずどのような企業になるべきなのか、今まで以上に理解を深め、考察する必要があります。
これまで、企業は「購買」という特定の活動に焦点をあて、「消費者」という視点で顧客を捉え、自社のあるべき姿を考えてきました。しかし、今後は消費だけに焦点を当てていたのでは、その全体像を理解し、差別化を生み出すことは困難になりそうです。消費者の生活全般に焦点を当て、「生活者」という視点で顧客を捉える、これが重要ではないでしょうか。
生活者の視点で顧客と接し、その意見を「傾聴」し、オープンなコミュニケーションを心がけることで、企業は今後、顧客のパワーを最大限に取り込むことが可能となると著者は言います。
例えば、Facebook等での生活者同士のコミュニケーションは、従来の販促コミュニケーションが行っていたリード・ジェネレーションではなく、デマンド・ジェネレーションの機能を持ちます。的確なコミュニケーションを取ることで、これを最大限に活用することが可能となるでしょう。
また、顧客のバリューチェーンへの参画も期待できます。顧客が参画するバリューチェーンはブランディングを中心としつつ、更に商品企画、販売と従来以上に拡大しつつあります。
消費者の中には、「生産」を手がける人もいますね。自分で小説を書いて、ネット上で公表されていらっしゃる方も多いと思いますが、いわゆる「生産する消費者(=プロシューマー)(※2)」ですね。
本書では、これらに関する多くの企業の先進事例が整理され、提示されています。目を通す価値は高いといえるでしょう。
更に、上記を実現するためには、顧客との関係を高め、従来以上にエンゲージメントを推進する必要があると著者は言います。
より長期で効果的なエンゲージメントを構築するためには、企業のミッション、ビジョン、コアバリューを明確に定義し、組織内に周知徹底すること、社内の情報格差を可能な限りなくすため、顧客の声(VOC)をの社内へ展開することが必須の要件となります。
これらの具体的な内容、及び推進のステップについても、本書では詳細に記載されています。
ちなみに蛇足ですが、政治の領域についてはどうでしょうか。新たなコミュニケーションテクノロジーを利用した直接民主政治の可能性は否定できないかもしれません。ただ、マキャベリの「ローマ史論」には、次のような趣旨のことが書いてあります。
政体には3つあり、それぞれ「君主政体」、「貴族政体」、「民衆政体」である。そしてそれらは、容易に変化しうる。君主政体は専制政体に、貴族政体は寡頭政体に、そして民衆政体は暴政に。(※3)
随分昔の人の書いたことですが、今でも十分検討するに値する言葉のような気がしますね。
(※1)socialbakers 2012.07.08時点
(※2)「第三の波」 (アルビン・トフラー/中公文庫)
(※3)「ローマ史論」 (マキャベリ/岩波文庫)
- ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと/日本経済新聞出版社

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