東京に戻った翌日の午前。

予約していたミシュランの店へ向かった。外観は静かで、看板も控えめ。けれど扉を開けた瞬間、空気がすっと変わる。照明は落とされ、木と石の匂いが静かに漂っていた。

出てくる料理は、どれも余計なものが削ぎ落とされている。素材の味がまっすぐに伝わり、一口ごとに、少しずつ心が落ち着いていく。ワインを一杯だけ。昼から飲むグラスは、なぜかいつもより贅沢に感じられた。

特別なことをしたわけではない。ただ、静かな店で、丁寧につくられたものを、ゆっくりと食べただけ。それなのに、この時間が妙に贅沢に思えた。

東京に戻ったばかりの午前。急ぐ理由は、まだどこにもない