崎嶋(以下、崎):「さーて、忘れられないうちに、前回の解答編といきましょうか。どうして脳の一部でドパミンが足りなくなる病気(パーキンソン病)の治療に、ドパミンそのものじゃなくてドパミンの元を使うのか!?」


青田(以下、青):「俺に答えさせようとかするなよ?」


崎:「誰もそんな事言ってないじゃないですか」


青:「口に出さなくったって、お前の考えてる事は、まるっとお見通しだ!」


羽生(以下、羽):「つまり二人は、心と心で通じ合ってるって事ね」


崎:「勘弁してくださいよ。私の方にそんな趣味はありません」


青:「俺だってねえよ!」


羽:「さっき『言わなくても分かるよ、キミの心の中は』みたいな事を言ってたくせに」


青:「言い方が全然違う!」


羽:「意味は同じでしょ」


青:「言い方一つでニュアンスは違ってくるんだよ!」


羽:「はかばかしくバカバカしい話はこれくらいにしといて、解答をどうぞ」


崎:「まあ、あれですね。前回と前々回の話を読めばなんとなく予想はつくんじゃないかと思いますが、ドパミンの元であるレボドパは血液‐脳関門を通り抜けて 血液中から脳に入り込むことができますが、ドパミンはそれができないんです。だから、ドパミンそのものは飲んでも注射しても脳には入りません」


青:「それだけじゃあ説明になってないような気がするなぁ。なんでドパミンの元はその関門を通ることができて、ドパミンそのものはできないのかを言わないと」


崎:「自分は説明できないくせに…。まあ良いでしょう。ドパミンの元、レボドパは血液中から脳に入る時、L‐中性アミノ酸トランスポーターという、脳がアミノ酸を取り込むための搬入口を通って入ります」


羽:「レボドパはアミノ酸の一種、チロシンと構造がよく似てるからその搬入口を通っちゃう事ができるわけ」


崎:「実際、体内で合成する時は、チロシンから作られますしね。…もっとも、『レボドパ』というのは薬として使われる時の名前で、体内で合成された場合は物質としての名前『L‐DOPA』で呼ばれますけどね」


青:「アミノ酸から合成される『L‐DOPA』はアミノ酸用の搬入口を通れるのに、それから合成されるドパミンは通れないのか?」


崎:「ドパミンも一応チロシンと似た構造をしてはいるのですが、ドパミンにはレボドパ(L‐DOPA)には有る『カルボキシル基』という部分が有りません。というよりは、レボドパとドパミンの違いは、このカルボキシル基があるかどうかだけなんですけどね」


羽:「そして、このカルボキシル基は全てアミノ酸がもっている部分でもある。というわけで、以下次号…」


崎:「あっ�( ̄口 ̄)、それは私のセリフなのに!」


青:「今回はわりと早く更新できたな」
崎嶋(以下、崎):「いや~、最近は時間に余裕があるはずなのに、いっこうに更新速度が戻りませんねぇ。どうしてでしょう?(笑)」


青田(以下、青):「何が(笑)だ。お前が怠け者だからに決まってるだろうが」


崎:「人間という生物種が怠惰という性質を有しているのは、余計なエネルギーの消費を避けるその性質が自然淘汰の過程において有利に働いたからである。つまり、怠惰は合理的であるのだ」


青:「科学的な話をするフリして開き直るな(-.-;)」


羽生(以下、羽):「話し方も変だし」


崎:「えー、さて、前回は、脳の血管は細胞同士がぴったりくっついていて、余計な物が脳の神経細胞に入ってしまうのを防いでいる、という話をしましたね」


青:「強引に話変えやがって」


羽:「ま、良いんじゃない?速やかに本題に入ったわけだし」


崎:「いちいち茶々を入れないでください。さて、ここで一つ疑問がわいてきませんか?」


青:「別に」


崎:「…疑問をもってくださいよ(-.-;)」


青:「どんな疑問もてってんだよ」


崎:「それじゃあ、脳の神経に作用するような薬は、どうやってそこに入り込んでるのか、って疑問ですよ」


羽:「コカインとかヘロインとかアンフェタミンとかね」


崎:「…もうちょっとまともな例をあげてください(-"-;)」


青:「で、どうやってるわけ?だるいからちゃっちゃと終わらそうぜ」


崎:「なげやりですねぇ、人には怠け者とか何とか言っておきながら。ま、良いでしょう。前回も言ったと思いますが、細胞と細胞の間の隙間がふさがってるのなら直接細胞を通り抜けるしかありません。そしてこれもまた前回説明したように、細胞の膜はリン脂質という脂質でできているので、油に溶けやすい薬なら、脳血管の壁をつくっている細胞を通り抜けて脳の神経細胞までたどり着くことができます。それから、脳に必要な物質を取り込むためのトランスポーターという専用の出入り口を通って入る場合もあります。例えば、パーキンソン病の治療に使われるレボドパという薬なんかがそうですね。

…さて、ここで問題です。パーキンソン病は脳の中の線条体という部分でドパミンが足りなくなる事によって起こる病気なのですが、さっき言ったレボドパという薬は、ドパミンを体内でドパミンを作るための元になる物質です。では、なぜドパミンそのものではなく、ドパミンの元を治療に使うのでしょうか?正解は次回ってことで」


青:「次は早めに更新しないと、問題自体が忘れられるぞ?」
崎嶋(以下、崎):「大切な事を思い出して欲しいから、『オフィス学問の蛇道』はゲド戦記を応援しません」


青田(以下、青):「…しょっぱなから何言ってんだよ、いったい?(-.-;)」


崎:「別に。ただ、最近『大切な事を思い出して欲しい』だとか『私達が忘れてしまった大切な…』とか、そういうのがやたらと多くて実にウザ…いや、多いなー、と思いまして。皆さんよっぽど『なんか忘れてるぞ感』があるみたいですね。私は全然ありませんげどね」


羽生( 以下、羽):「忘れている事を指摘されて、『ああ、忘れてた』というようなら単なる物忘れ、指摘されても『何それ?』って感じなら老人ボケの始まりだって昔なんかの番組で言ってたわね」


崎:「ろ、老人ボケって…なんて事言うんですか、あなたは?!」


羽:「ああ、今は認知症って言わなきゃいけないんだっけ?」


崎:「そうじゃなくて…いや、それも確かにそうなんですが…」


青:「どっちなんだよ?」


崎:「♪ト~トロを何に例えよう?ひ~とり道行くこのトトロ♪」


青:「ごまかすなよ(-_-#)」


崎:「それはそうと、映画『ゲド戦記』は原作者にまで『説教くさく感じる』って言われちゃったそうですよ。まあ、あれですね、『命を大切にしない奴なんて、大っ嫌いだ!』なんてセリフを映画の中に入れるだけならともかく、CMでまでやたらと流すのはねぇ…」


青:「流すのは…何なんだよ?(-.-;)」


崎:「何というか…大事なセリフはここぞ!という時にだけ言わないと、連発すればするほど説教くさく、鬱陶しくなってどんどん説得力が無くなっていくものなんですよね。藪譲二米大統領が使う『正義』なんかが良い例です」


青:「誰だそれ…?」


羽:「でも確かに、これでもう、実際に命を大切にしない奴に会っても『大っ嫌いだ!』とは言えないわね」


崎:「言ったら『テルーか、お前は』と倒置法を用いて冷ややかにつっこまれそうですね」


青:「なぜ倒置法??」


崎:「それはともかく、本題に入らないといけないんですが、最近もうこの話題を続ける事に飽きてきたんですよね」


青:「始めたからには責任もって終わらせろよ。誰も読んでなくても」


羽:「そうそう、いったん始めたからには終わらせる義務があるわよ。誰も読んでなくても」


崎:「や、やる気を削ぐような事を言わないでください。まあ良いでしょう、どのみち今回で終わりです。…さて、吸収されてしまえば、それでもう無事に脳にたどり着けるかというと、そうでもありません。人間の体の細胞は、血液に栄養分を運んでもらっていて、これは脳細胞でも同じなのですが、人間にとって脳というのは非常に重要なものなので、栄養分以外の余計な物が入って脳に悪影響を与えないように、脳の血管を作っている細胞は細胞同士がぴっちーっとくっついていて、細胞と細胞の間を通れないようにしています」


羽:「逆に、肝臓なんかは体に入ったいろんなものを処理するためにあるから、血管の壁がスカスカで、通りやすくなってる」


青:「ちょっと待て、それじゃあ、脳はどうやって血の中の栄養をもらうんだよ?」


崎:「ブドウ糖とか、そういう脳細胞に必要なものは、前にも紹介した『トランスポーター』という専用のドアを通れるんです。それに、水のような小さな分子は、細胞膜を自由に通り抜けて中に入る事ができます。網戸をカブトムシは通れなくても、小さい羽虫とかなら通れるのと同じような感じで」


青:「うちは網戸してても、カマキリとか普通に入ってくるぞ?」


崎:「それはどっかに穴があいてるんでしょう」


青:「あとゴキブリも」


羽:「それは中で繁殖してるんじゃない?」


青:「………」


崎:「えー、それから、油に溶けやすい物質もやっぱり細胞膜を通り抜けられます。これは、細胞膜が『リン脂質』という脂質でできているので、自分と同じように油っぽいもの、油に溶けやすいものはわりと簡単に通してくれるからです」


羽:「小学校に別の小学校の生徒が入り込むのは簡単だけど、エロそうなおじさんが入り込もうとすれば、不審者だと思われて入れてもらえない、みたいな感じかな?」


崎:「(-"-;)その例えが適切かどうかはともかくとして、では肝心のプリオンはどうなのかというと、プリオンはタンパク質で、なおかつタンパク質は高分子…つまり、大きい分子なので、水のようにはいきません。しかも、前々回くらいにも言ったように、分解されてないそのままのタンパク質用のトランスポーターもありません」


青:「となると、あとは油に溶けやすいかどうか、だな」


崎:「あー、それなんですけど、プリオンが油に溶けやすいかどうか、私はよく知らないんですよね(^_^;)」


青:「なんだそりゃ?!ここまできて…」


崎:「すいません、勉強不足で。また機会があったら、このあたりの事で説明できなかったところを補いたいと思います」


青:「おいおい…( ̄○ ̄;)そういや、タイトルのBBBってのも何の事だか分からんぞ?」


崎:「ああ、忘れてました。BBBというのは、ブラッド‐ブレイン‐バリアーの略です。ブラッドは血、ブレインは脳、バリアーは障壁で、ようするに、血の中に入っている物質が脳に入るのを邪魔する障壁の事ですね。さっき言った、細胞同士がぴったりくっついている脳の血管の壁をこう呼ぶんです」


羽:「ちなみに、BBBの日本語名は『血液‐脳関門』」


崎:「なんかえらく長くなっちゃったので、今回はこのへんで」
崎嶋(以下、崎):「あ~、ようやく更新する余裕ができました。さて、前回は、タンパク質は吸収される前に分解されてしまうという話を…」


青田(以下、青):「そんな話してたっけか?」


羽生(以下、羽):「さあ…?なにしろ1ヶ月も前だし、もうさっっっっっっっぱり…」


崎:「促音便が多いですよ…(- -;)」


青:「本当は何か全然別の事やってたりしてな」


羽:「そうそう、確か『さきしまんblog~ボクが彼氏の彼氏になるブログなのさ!~』?」


崎:「そんなわきゃないでしょう!っつーか、ダメでしょう人のブログをネタにしちゃ」


青:「こうやってスペースを浪費するあたりは昔のままだな」


崎:「誰のせいで浪費してると思ってるんですか?!っていうか、1ヶ月で昔とか言わない!…なんてこんな事をいつまでも続けるとそれこそスペースの浪費ですから、そろそろ本題に入りますよ。…さて、もう一度言いますが、前回は、タンパク質は吸収される前に分解されてしまう…というか、分解されていないそのままのタンパク質は吸収されないと書きました。しかしこれには、実は抜け道があったりします」


羽:「つまり、前回はウソを書いたという事ね」


崎:「いや、そんな言い方をされるとちょっと…(‐ ‐;)」


羽:「1ヶ月あれば人も死ぬし、その大嘘を信じたまま亡くなった哀れな人もきっといるのでしょうね。ああ!なんて罪深いの!」


青:「いや、このブログの人気の低さから考えて、それはないと思うぞ」


崎:「そうそう、『学問の蛇道』の人気の低さから考えて…って何言わせるんですか!」


羽:「今時ノリツッコミ?古いわね」


青:「ノリツッコミは古いのか…?」


崎:「(-.-;)…もう良いですよ。とにかくです、タンパク質は分解された後、前回紹介したペプチドトランスポーターというペプチド(タンパク質が切られて短くなったもの)専用のドアのようなものを通って吸収されるわけです。普通は。普通は、という事は、つまり特殊な方法で腸の細胞に取り込まれる場合もあるという事です。その取り込み方とは、ずばり『エンドサイトーシス』!」


青:「いや、ずばりとか言われても分からんから(-.-;)」


崎:「…でも『エンドサイトーシス』って絵を描かないと説明するのが難しいんですよね。…そうですねぇ…例えて言うなら、家の外側から壁にもたれてたらその壁が突然内側にヘコんで、ヘコんだ方に倒れ込んでしまったら今度はヘコむ前に壁があった場所に再び壁が再生して閉じ込められた!みたいな?」


羽:「分かりにくい」


青:「横着しないで絵を描けよ」


崎:「この更新は電車の中からケータイでやってるので、それは無理です。…まあ、ともかくですね、食中毒を起こす細菌が作り出す毒素もたいていはタンパク質ですし、分解されてないタンパク質だからといって必ずしも腸の細胞の中に取り込まれないって事はないんですよね。…というわけで、今回はここまで」


青:「久しぶりの更新だってのに、あんまり実のない内容だったな」


崎:「勘弁してください。最近夏バテ気味なんですから(^_^;)」
崎嶋(以下、崎):「うう…なんという事でしょう、前回の更新から約1ヶ月も経ってしまいました。しかし視聴者の皆さん、これにはちゃんとした理由が有るのです。書くと歳がばれてしまうので書けませんが、決してパチスロに通っているからでもキャバクラに通っているからでもありません」


羽生(以下、羽):「見苦しい言い訳ね」


崎:「あと1ヶ月したら元のペースで更新するようにしますから、それまではなにとぞご勘弁をm(_ _)m」


青田(以下、青):「1ヶ月もかよ?!�( ̄口 ̄)」


崎:「え~さて、時間を節約しないといけないので、ちゃっちゃと進めたいと思います。前回までは、タンパク質の一種に過ぎないプリオンが胃酸やタンパク分解酵素に耐えられるのかいな、という疑問点について話しました」


羽:「多分誰も覚えてないと思うけどね」


青:「なんせ1ヶ月も前だしなぁ」


羽:「1ヶ月もあれば人も死ぬ」


青:「�(・ ・;)えっ…?!あ、いやそりゃ死ぬかもしらんけど」


崎:「ちょっとそこ、ただでさえ少ない時間を浪費しないでください。さてさて、仮に胃酸やタンパク分解酵素にプリオンが耐えられるとしても、まだ問題はあります。タンパク質は腸の壁を通り抜けられないのです」


青:「それじゃ肉とか魚食べても、タンパク質はそのまま出ちゃうじゃんか(ー ー;)」


崎:「だ~か~ら、そうならないように分解するんじゃないですか。分解してアミノ酸やジペプチドやトリペプチドになれば、腸の壁も自由自在に…」


青:「通り抜けられるってわけか」


崎:「いえ、やっぱり通り抜けられません」


青:「なんじゃそりゃあ!?」


崎:「そのかわり、『トランスポーター』という腸の壁についている専用のドアから細胞の中に入れるようになります。ここで重要なのは、このドアが『専用』だという事です。例えば、『グルコーストランスポーター』だとグルコースしか通れません。同じように、ジペプチドやトリペプチド用のトランスポーターだと、今度はジペプチドやトリペプチドしか通れません」


羽:「ちなみに、ジペプチドというのはアミノ酸が二つくっついたもので、トリペプチドというのはアミノ酸が三つくっついたもののこと。タンパク質はアミノ酸がたくさんくっついてできてるから、分解するとこういうものが出てくるわけね」


崎:「ジペプチドやトリペプチド用のトランスポーターはジペプチドやトリペプチドしか通れない…これはつまり、分解されていないそのままのタンパク質だと、こういったドアを通って細胞の中に入る事もできないという事なのです。というわけで、以下次号(^ ^;)」


羽:「次号はいつになるのやら」
崎嶋(以下、崎):「前回…はいったんプリオンとは何の関係も無い話をしたんでしたね。で、前々回はというと、あまり時間が無くて、タンパク質の変性について少し説明不足な感じでおわってしまいましたね。というわけで、今回はその辺りを補うとしましょう。司会は毎度のことながら、私、崎嶋です」


青田(以下、青):「前々回って…随分前だなぁ…もう忘れちまったぞ?」


崎:「( ̄□ ̄;)!!そんなに早く忘れないでくださいよ!せっかく教えた意味が無いじゃないですか」


羽生(以下、羽):「早くってことはないわよね。前回すら一週間以上も前だし」


青:「パチスロに通ってるヒマがあったらもっとマメに更新しろよ」


崎:「通ってません!」


羽:「じゃあ、キャバクラに通ってるヒマがあったら…」


崎:「( ̄□ ̄;)!!だ・か・ら、通ってませんってば!」


羽:「ふーん」

青:「へぇ…」


崎:「(´ `)=з…さて、前々回言い忘れたんですが、タンパク質の“変性”においてもっとも重要なポイントは、変性…つまり、性質が変わってしまったタンパク質は、もう、前と同じ働きをする事はできないという点です」


羽:「例えるなら、グラビアアイドルがある日突然、海の男みたくマッチョになっちゃったら、もう元々やってた仕事はできない、みたいな感じ」


青:「どんなシチュエーションだよ、それ(- -;)」


崎:「では、何故そんな風に、元の働きができなくなってしまうのかというと、それはタンパク質の立体構造が変わってしまうからです」


羽:「そもそも、タンパク質っていうのはアミノ酸がずらずら並んでできた鎖みたいなもの。だけど、ただまっすぐな鎖じゃ役に立たない」


崎:「針金でカギをあける時の事を思い出してください。まっすぐなままの針金では、カギをあけられませんね?ちゃんと、そこのカギ穴にフィットした形に曲げないといけません」


青:「いや、思い出してくださいとか言われても、そんなのやった事ないから(- -;)」


崎:「はぁ?君は学校でいったい何を習ってきたんですか?」


青:「習うか、んなもん(-"-;)」


崎:「習いますよ、義務教育で」


青:「どんな義務教育だよ?!」


崎:「それが分からないって事は、青ピロー君は小学校すら出ていないという事ですね」


青:「しかも小学校かよ?!」


崎:「ま、それはともかく、カギを開ける時の針金と同じで、タンパク質もアミノ酸でできた鎖が折り畳まれて、その目的に合った形になってないといけないわけです。…さて、ここでちょっと考えてみましょう。田中さん家の玄関のカギを開けるために、そこのカギ穴にぴったり合うよう折り曲げた針金あったとします」


青:「誰だよ、田中さんって?」


羽:「田中康夫?それとも田中眞紀子?」


崎:「…別にそんな大物の家に忍び込もうなんて考えてませんよ」


羽:「じゃあAさんとかで良いじゃない」


崎:「だってそれじゃ味気ないじゃないですか。…ともかく、ここに、田中さん家の玄関のカギ穴にぴったりフィットするよう折り曲げられた針金が有ります。この針金をそのまま使えば、ドアのカギを開けられるのですが、もしこれをさらに、グチャグチャに折り曲げてしまったらどうなるか…当然、カギは開けられませんね?もしかしたら、カギ穴にすら入らないかもしれません。タンパク質の変性もこれと同じです。ちゃんとした形になっていれば機能するものが、熱や酸のせいで形が変わってしまうと、前のような働きができなくなるというわけです。…さて、久々の更新なのでもう少し多めに書くべきなのかもしれませんが、そうもいかないので、今回はこのへんで(^-^)ノ~~」
崎嶋(以下、崎):「まだプリオンの話が途中なんですが、今世間はワールドカップで盛り上がっていますので、せっかくですから今回一回くらいはプリオンの話を休んでそちらに関係した話題でいきましょう」


羽生(以下、羽):「ついこの間は、ここは純・理系ブログだから世間には流されないとか何とか言ってたのに」


青田(以下、青):「だいたい、ワールドカップ本当に盛り上がってるか?どっちかっていうと、この前のオーストラリア戦のせいで盛り下がってる、って感じだぞ?」


羽:「下がってるのに“盛り”っていうのは変よ」


青:「じゃあ何て言うんだよ?」


羽:「掘り下がってる…?」


崎:「( ̄○ ̄;)まったく、君達は…。なんて言いつつ、私が提供する話も、実はただでさえ掘り下がってるワールドカップを更に掘り下げるような内容なんですけどね」


羽:「なんか変な日本語」


崎:「さて、それでは本題に移りましょう。動物の世界では、赤という色が強さを意味する場合がけっこうあるそうです。例えば、イトヨという魚では腹のより赤いオスが、リーサスザルという猿では顔のより赤いオスがメスに選ばれる傾向があるとか。自然界では、より強い子孫を残すために、より強いオスが選ばれるのが一般的ですから、これは赤い方が強いとメスが判断しているのだと見て構わないでしょう。私が思うに、これは赤という色が目立つ…すなわち敵に見つかりやすいにも関わらず、それでも生き残ってきたという点がそのオスの強さを証明しているから、なのではないでしょうか」


羽:「鳥のオスなんかでもクジャクをはじめとして、赤に限らずハデで目立つ方がメスに選ばれる場合も多いってこともあるしね」


崎:「サンゴヘビや一部のヤドクガエルみたいに、赤い色で自分の危険性をアピールしている例もあります」


青:「…で、それがいったいワールドカップにどう関係してくるんだよ」


崎:「実は、この話は人間にも当てはまるかもしれないんですよ。人間も怒ると顔が赤くなりますが、これは自分が強いのだとアピールする事で相手を弱気にさせたり、相手の方から勝負を避けさせたりする意味があるのではないかとも考えられます。こういう、実戦を避けたり、避けられなくても相手を逃げ腰にさせて勝負を有利に運ぶための行動は人間以外の類人猿でも見られますからね。チンパンジーが木を引きずり回したり、よく知られたものではゴリラが胸を叩くのなんかもそうです」


羽:「でも、人間の顔が赤くなるのは単に、戦いのために筋肉により多くの酸素を送ろうとして血管が拡張した結果だとも考えられるけど?」


崎:「それはまあそうかもしれませんが…しかしです!それでもやっぱり、人間でも赤と強さの関係は否定できないんですよ。というのは、イギリスの大学でされた調査によりますと、2004年のオリンピックの格闘技(テコンドー、ボクシング、レスリング)では、赤い色を身につけていた選手の勝率が、青い色を身につけていた選手よりずっと高かったという事らしいのです。どちらの色を身につけるかは、ランダムだったにも関わらず、ですよ?さらに、同じ2004年のヨーロッパでのサッカーについて調べてみると、ここでも赤いユニフォームのチームの勝率が、青をはじめとする他の色のユニフォームのチームの勝率に勝っていたそうです」


羽:「まあ、筋肉の強さとかが変わるわけはないから、心理的なものなんでしょうけど」


崎:「心理的効果をバカにしてはいけませんよ?カブトムシ相撲なんかでも、試合に挑む前の練習で何度も自分のカブトムシにワザと勝たせて“勝ちぐせ”をつけるそうです。ようするに、自分は強い、戦い続けていれば勝てるのだ、という自信をつけさせる事で、一歩も退く事なく勝負させる事ができる、ってことですね。逆に、実戦の場において相手の強さをアピールされれば、どうしても及び腰になってしまう部分が出てくるものです。強い相手を恐れるのは、動物の本能ですからね」


羽:「そう言えば、本当のサムライの話でもなんかそういうのが有ったわね。豪傑で敵にもよく知られた武将が、身内の若い侍の頼みで自分のトレードマークになっている赤い鎧と普通の黒い鎧を交換して戦場に出たところ、若侍は逃げ腰の敵をやすやすと倒していけたのに、鎧を交換しただけで豪傑の方は予想外の手強い反撃にあい、結局刺されてしまう、っていう話。“形”って題だったかな?」


青:「へえ……ん、待てよ?日本代表のユニフォームは…(- -;)」


崎:「そう、“サムライブルー”の名の通り、青です。…そして、結果は…ジーコの顔色も、ファンの気分もブルーになるようなものでしたね」


羽:「中田は怒りで赤くなってそうだけど」


崎:「サムライで青といえば、思い浮かぶのは新選組ですが、あれも結局は負け組に終わりましたしね。さて、それでは、日本代表はこれからいったいどうしたら良いのか?心理的効果に左右されないほど圧倒的な実力をつけるというのも一つですが、相手チームだって練習を積むんですからそれは難しいでしょう。というわけで、私としては、次のワールドカップからはユニフォームを新調して、“サムライレッド”で挑むことをお勧めします」


青:「次の!?今回はもう諦めるのか( ̄□ ̄;)?!」


崎:「蛇道ですから」
崎嶋(以下、崎):「『古世界の住人』のoldworldさんと『性転換ドキュメンタリーブログ』のはるかりんさんがブロガーインタビューを受けていましたね。性転換ドキュメンタリーブログの方は今度書籍化もされるみたいですが、いつか私がインタビューを受けたり、『学問の蛇道』が書籍化されたりする日もくるのでしょうか」


羽生(以下、羽):「こない」

青田(以下、青):「くるわけがない」


崎:「( ̄□ ̄;)!!なんて夢が無い人達なんですか、君達は?!」


羽:「人の夢と書いて、儚いと読む…儚く散る前に、せめて今これを読んでくれてるごく僅かな人達のに、生活の役に立たないムダな知識でも提供してあげたら?」


崎:「ごく僅かなんてことはないです!最近はそこそこ増えてるんですよ\(゜□゜)/?!」


青:「見栄っ張りめ」


羽:「もう良いから…聞いてるこっちが悲しくなってくる」


崎:「くっ…言いたい放題ですね。良いでしょう!今回は、多少の生活に役立つ知識も交える事によって、ランキング上々↑↑を目指します」


羽:「ま、せいぜい頑張って。星あきこのように電柱の陰からコソッと見守ってるから」


崎:「…気が散るからやめてください。えーさて、今回はBSEの原因と言われるプリオンについて、『ここが疑問だよ、プリオン仮説』第…え~と何弾でしたっけ?…まあいいや、です。前回は、食べ物といっしょに口に入ったプリオンが脳などの神経細胞内に入るまでにくぐり抜けなければならない関門をいくつか挙げていきましたが、今回はその第一番目、プリオンタンパクは消化液に耐えられるのか?、です。たいていの人は知っていると思いますが、胃や腸などの消化管では、食べたものを分解するための消化液が出ています。…ああ、青ぴろりんは知りませんか?」


青:「最近自分の方がいじられキャラになりつつあるからって、無理矢理俺を馬鹿にしようとするな(-_-#)」


崎:「いえ、無理矢理じゃなくてごく自然に馬鹿にしたつもりなんですけどね。ま、それはともかく、消化液にはタンパク質を分解するための酵素も含まれています」


羽:「ペプシマンとか、トリプシンとかね」


崎:「さりげなく嘘を織り交ぜないでください。(- -;)ペプシマンじゃなくてペプシンです!」


羽:「別にさりげなくやったつもりはないんだけど。それはともかく、病気の原因になる異常型プリオンタンパクはタンパク分解酵素に分解されにくいのよね。だからこそ、分解されずにどんどん細胞内にたまっていっちゃうわけなんだけど。だからそのあたりは、大丈夫なんじゃないの、って感じかな、私としては。…まあ、人間から見ればそんなもの分解されちゃった方が良いに決まってるから、大丈夫、っていうのは変かもしれないけどね」


崎:「あ、あれ、そうでしたっけ?まあしかしですね、問題はタンパク分解酵素だけじゃあありません。胃の中では、皆さんもご存知の通り酸が出ています。胃で出ている酸は塩酸で、これのせいで胃の中はpH1~3という強い酸性になっています」


羽:「pHは7が中性で0に近づくほど強い酸性、14に近づくほど強いアルカリ性だから、pHが1から3っていうのはかなり強い酸性になるわね」


崎:「そういう厳しい環境ですから、腸とは違って、胃にはほとんど細菌も住んでいませ。例外といえば、水に溶けるとアルカリ性のアンモニアを作り出して周りの酸を中和する事ができるピロリ菌くらいです。そして、この強い酸性という環境はプリオンのようなタンパク質にとっても過酷なものであるハズです。何故なら、タンパク質は酸によって“変性”してしまうからです」


青:「変性…?」


羽:「変態的な性癖の事」


崎:「だから、嘘教えないでくださいって(- -;)。だいたいタンパク質の変態的な性癖ってなんですか?」


羽:「荒縄で縛りたがるタンパク質とか、メイド服に集まるタンパク質とか」


崎:「……」


羽:「フッ、沈黙は肯定を意味し…」

崎:「呆れただけです!」


青:「嘘だったのか?!」


崎:「本当にあると思ってたんですか?!( ̄○ ̄;)良いですか、変性というのは、変態的な性癖ではなくて、タンパク質の性質が変わる事です!たとえば、よく知られている例としては、熱変性があります」


青:「よく知られてるって…俺はそんな言葉聞いた事無いけどな」


崎:「よく知られているというのは、熱変性という言葉ではなくて、現象そのものです。例えば、焼いたり茹でたりする事で卵が固まったり、肉や魚の食感や切りやすさが変わったりする…これが変性です。そして、この変性は熱だけではなく、酸によっても起こるのですよ。…さて、ここで生活の役に立つムダじゃない知識の紹介です」


青:「ようやくか」


崎:「チキンラーメンに卵を落とす時、あらかじめ酢を入れておくと、熱による変性に酢(→酸性)による変性が加わるので、固まりやすくなるそうです」


青:「大して役に立たねえ( ̄□ ̄;)!!」


崎:「もっとも、この話は聞いた事があるだけで、私自身はまだ試した事はないんですけどね」


青:「試した事も無いのか?!」


羽:「なんで試してみないの?」


崎:「だってチキンラーメンに酢の味とかついちゃったら嫌じゃないですか。…さて、さすがにそろそろ長びき過ぎという感じがしますので、今回はこのへんで(^-^)ノ~~」
崎嶋(以下、崎):「どうも、崎嶋です。世間は村上ファンドのニュースでもちきりですが、ここは純理系ブログですので、そんな世間は気にせずプリオンの話を続けましょう」


羽生(以下、羽):「世間は気にせず?単に世間知らずなだけなんじゃないの?」


崎:「�( ̄口 ̄)し、失礼な!知ってますよ、インサイダー取引でしょっ。それいけやれいけ日本放送はチャレンジャーに優しいですか?って聞いちゃった、でしょ」


羽:「フッ…┐(´ー`)┌」


崎:「なっ、何なんですかその笑いは?!感じ悪いですね!良いですか、本当に私はちゃんと…」


羽:「そんなムダ話より本題に入ったら?世間は気にしないんでしょ?」


崎:「…分かりましたよ(´ `)=з…さて、今回はプリオン仮説の疑問点を私なりに挙げていくつもりなんですが…と、ここで一つ、お知らせしておかないといけない事がありまして、前々回にも書いたんですが、私は『プリオン仮説は本当か?』をまだ読んでいませんし、そもそも、プリオン仮説を唱えたプルミナー先生の論文も読んでいません。と、いうわけで、私がここで挙げる疑問点は的外れだったり、もう解決されたりしているものである可能性がありますので、その点ご了承ください」


青田(以下、青):「ちゃんと読んでからにしろよ( ̄  ̄;)」


崎:「言ったでしょ、最近の私は忙しいんです」


羽:「パチスロに?」


崎:「だから違いますって!…ってこんな事してたらいつまで経っても進まないじゃないですか。さて、プリオン仮説についての一番の問題点は、BSEのようなプリオン病が経口感染…つまり、プリオンの入っているものを食べる事で感染するという点です」


羽:「ちなみに、そもそもBSEが最初に出てきたのは、プリオン病(多分スクレイピーだったと思う)にかかった羊の肉だか何だかを牛の餌に混ぜたからだっていうしね」


崎:「そう言えば、マイクル・クライトンの小説『ロストワールド ジュラシックパーク2』では、肉食恐竜の子供の餌に羊肉のエキスを使ったせいで、恐竜達がプリオン病にかかっている、という設定でしたね」


羽:「映画では消えた設定だけど」


崎:「あの頃はBSEもまだそんなに話題になっていなかったと思いますが、さすがクライトン、だてに有名大学の医学部出てません。それはともかく、何故経口感染が問題かと言いますと、単なるタンパク質の一種に過ぎないプリオンが口から入って神経細胞の中にまで達するには、下のような厳しい関門を全てクリアしないといけないからです。


1.胃酸や、胃・腸内にあるタンパク質を分解してしまう酵素に耐えなければいけない。

2.腸の壁を通り抜けて血液中に入り込まないといけない。

3.血液から薬物などが脳に入るのを防ぐバリア“血液-脳関門”(英語ではブラッドーブレイン・バリア)を通り抜けなければいけない。

4.細胞膜を通り抜けて細胞質内に入り込まなくてはいけない。

…とまあ、私が思いつくのはこんなところなんですが、詳しくは次回説明します」
崎嶋(以下、崎):「どういうわけか、ランキングが急に500番台から300番台まで上がっていますので、これに気を良くして更新しときましょう」


青田(以下、青):「そんなのがなくてもちゃんと更新しろよ」


崎:「こう見えても意外と忙しいんですよ、私は」


青:「怪しいな。本当に忙しいのか?(- -;)」


羽生(以下、羽):「きっとパチスロに忙しいのよ」


崎:「�( ̄口 ̄)そんなものはやった事もありません!!」

羽:「ふーん」

青:「へえ~」


崎:「…もういいや、本題に入りましょう。プリオン仮説では、BSEのようなプリオン病は体の中に入った異常型プリオンタンパクがもともと細胞の中にある正常型プリオンタンパクを異常型に変えてしまうせいで、どんどん異常型が増えて細胞の中にたまってしまい、そのせいで起こる…という事になっているというところまで前回は進みましたが、実は、この異常型プリオンタンパクが自分と同じ異常型をどんどん増やす、というところが、最初にこのプリオン仮説が発表された時には、斬新というか、ある意味非常識だったんですよ」


青:「ふーん」


崎:「ちょっと!そこで『えっ、いったいどうしてそうなるの?不思議だなっ』とか言ってくれないと話が進まないじゃないですか!」


青:「そんなNHK教育の子供向け番組みたいなセリフ言えるか( ̄□ ̄;)!!」


羽:「NHK教育の子供向け番組でそんなセリフある…?」


崎:「ああもう、青ぴろりんになんか期待した私がバカでした!良いですか、それまでは、自分と同じものを作り出して増やせるのは生物だけの特権だと思われていたんですよ」


羽:「増える事はできても、ウイルスは厳密には生物かどうか微妙なところだけどね」


崎:「その話をし出すとまた長くなるので、ここではおいておきましょう。とにもかくにもプリオンは“生物かどうか微妙”なんてものじゃなくて、明らかに生物でも何でもないただのタンパク質なのに増えるという点が斬新だったんですよ」


羽:「斬新な説というのは攻撃されるのが世の常…でもこのプリオン仮説はすっかり受け入れられちゃってるわね」


崎:「その辺りの情事…じゃなくて事情までは、調べていないのでよく分かりません。プリオン仮説が出されたのは1980年代?だったか、まだ確認していないのでちょっと責任もって言えませんが、とにかくもう結構前なので、実は今のように認められるまでに苦難の歴史があったのかもしれませんし、もしかしたらこのプリオン仮説を発表したプルミナーという研究者が学会の権力者だったのかもしれません。しかしまあいずれにせよ、今では大学の講義でも普通に教えられ、BSEなどについての一般向けの解説でも使われたりするところまで広まったわけです」


羽:「酵素もタンパク質だけど(リボザイムのような一部の例外を除く)ある物質から化学反応で他の物質を作り出せるし、それなら自分と同じものを作り出せるタンパク質があっても良さそうって気もするしね」


崎:「しかしここで、本当にそうなのか?プリオン仮説は本当に合っているのか?という意見が出てきたわけです。それでは、ここから先は次回に続く!」