演奏者はどうあるべきか?考えてみます。


演奏者とは?(私の思う演奏者)

翻訳家のように、その作品を自分の演奏で人々に伝える人。

以前は表現者であり役者と同じようなものと思っていましたが、それは違う気がして来ました。


昔、趣味で小説を書いていました。

プロットを考えて創作している段階では、役者が役作りをするように、自分の中にキャラクターを降ろして来てキャラになりきり、性格や感情を再現します。(この時は次々とキャラクターになりきるので、多重人格者みたいになります)

しかし、小説を書く段階では感情も冷静で、そこに居るのはキャラでなく私自身で、文章に起こして行きます。


演奏の場合、譜読み練習の過程では、役作り的なことをしますが、演奏する時はどうだろうか?

感情はあるけれど、監督のような感じで見ています。ここはこうしてああして…とコントロールしながら。

ナレーションに近い感覚かもしれません。情景や人物を淡々と語る。けども、無機質で無感情では決してなく、そのシーンに相応しいトーンで語ります。張り詰めた感じ、ほのぼのした感じなど。あまり感情的になるとうるさく邪魔になり、作品の内容が伝わって来ません。


演奏者の理想について。

感情的に演奏しない方が良いかもしれません。

過度に気持ちを込めてしまうと、作品でなくて自分の気持ちだけ先走って伝わってしまうのではないか?

小説も音楽も、読者・聴衆に想像を委ねるのが本来の形ではないだろうか?

誰かが演奏している事に意識が向かない方がいい。

演奏者の存在感が無くなった方がいい。

演奏を聞いて、作品の世界だけを感じてもらえたら、それが私の理想です。


素晴らしい演奏を聴いた時、無意識に目を閉じています。心の中に浮かぶイメージを見ます。

有名なピアニストだと、演奏する姿をずっと見ておかないと勿体ない気がしますが(笑)


演奏者である私でなくて、作品そのものに意識が向かうような、そんな演奏ができたらいいな。


雑念を捨て、心を無にすれば、本当の音楽が見えるかもしれない。

演奏する際に、まだまだ余計なものが作品の邪魔をしているように思えてなりません。