「解き放たれて 軽やかに」
大まかな、新シーズンへの個人的なモットーです。
2022-23は、バッハコレギウムジャパンとの初共演に始まり、
シューベルト、シューマン、
そして先日の木下牧子先生/フォーレの瑞々しい世界観を堪能したシーズンでした。
歌手を超えて音楽家として、
音楽の基本を見つめようと努めた1年でした。
ベルリン在住の指揮者 高橋達馬氏に指導をお願いし、
ひとつひとつの楽曲の調性、テンポ、Gliederung 構成/組織 を1から学び始めました。
そのお陰で、自分が歌うフレーズのひとつひとつの流れに、
より音楽的な根拠を見出すことが出来ました。
「今自分が歌っているパートが音楽の中のどの立ち位置なのか」を知覚しながら歌うことに意識を向けた1年間でした。
結果、音がより「座る」ようになり、深みを増したと思います。
文学、詩にも出来るだけ時間をかけて取り組んだ一年でした。
何を歌っているのか、言葉が分かる歌を目指して工夫してきました。
ですが、シーズン2023-24は、
音楽家としてだけではなく、
「テノール歌手として」今までにないほどに成長したいなと思っています。
具体的には、イタリアンテノール的な高音へのこだわりを持って、音の一つ一つに軽やかさと鋭さと、そして艶を見出せるように、
自分の声を磨くことにフォーカスして一年頑張っていきたいです。
4年ほど前の、自分のロッシーニのアリアの演奏に励まされる時があります。
ドイツでの日々を通して、ある意味落ち着いてしまったテノールらしい高音への情熱を今もう一度取り戻したいと思います。
すでにこの秋からテノール「らしい」ソロが僕を待っています。
メンデルスゾーン《エリア》モーツァルト《レクイエム》、そしてなんと!
遠くザルツブルクでヴェルディ《レクイエム》の依頼が来ました。
僕はテノールヴェルディアーノではありませんが、リリックテノールとしてこの作品に、聴衆側のイメージ(あるいは固定観念)と上手くやり合いながらどこまで対峙できるのでしょうか。
頂いたせっかくの機会、ベストを尽くしたいと思います。