ペーザロ ベルカントコンサートとランスへの旅 | operabuffのブログ

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ペーザロ滞在も残すところ1日となった。昨晩はベルカントコンサートと称するアメリカのテノールミカエル・スパイレスのリサイタルに行ってみた。
会場はロッシーニ音楽院の2階にある素敵なホールだった。
演奏も素敵だとなお良かったのだがこれは残念な結果だった。歌った曲はスカルラッティ、ロッシーニ、モーツアルト、ヴェルディその他だった。
とにかくテクニックは素晴らしい。上から下までスムーズに危なげなく出してみせる。ハイノートは当然ながら下の音も器用にこなすのは刻苦研鑚の賜物だろう。ただテクニックは完璧だが音楽は無かった。彼の頭の中には声の誇示しかないようで最初のスカルラッティを聴いただけであきてしまった。ロッシーニやベルカント系ならともかくモーツアルトのコシファントゥッテのフェランドのアリアまでに装飾音を入れたのには呆れた。ピアニストがプログラムに刷り込まれている女流の人ではなく男性に代わっていたのは多分このセンスが許せなかったのではないかと想像する。
歌のセンスとはなんだろうと考えた。こんなにいい声を神様からもらったのにセンスがゼロというのは惜しいことだ。多分幼年期や学生時代にいい歌手をあまり聴かなかったのかもしれない。
センスだけはどんなに高音を磨いても育てることはできない。
プログラムの最後にリゴレットの公爵のアリアを歌ったがヴェルディは声が良ければ何とかなるというこの作曲家の偉大さを証明する良い機会だった。
熱狂してブラボーを叫ぶ人がいる反面白けて拍手もろくにしない人がいるのに安心する。

そして今日マチネーでの若手の上演、ランスへの旅に行く。歌舞伎でいえば若鮎の会といったところだろうか。これはとてもおもしろかった。とても幸せだった。
簡単なセットで船のデッキ上に白い椅子が並べられているだけで衣裳も1幕は白Tシャツ、白ズボン、白バスローブでリゾートしている。最後のグランフィナーレは2幕のパーティ用の衣裳に着替えながら歌う。2幕はそのままドレスアップ姿で歌う。
とにかくこのオペラあまり内容がなく次々に登場する歌手たちの顔見世といえる。
とにかくスピード感とテンポの良さが命だ。指揮の若いダニエル・スミスはとても優秀。この人将来楽しみだ。2階の桟敷から彼の楽譜をみることができたがマーカーを色分けして書き込みだらけだった。歌手たちも熱演。日本人もアントニオに上田君、モデスティーナに楠田さんという人が出ていた。彼らには悪いがどうしても西洋人に交じるとあまり絵にならない。張り切って動きすぎなのかもしれない。2幕でモデスティーナにカメラを持たせて写真を撮らせていたが明らかに日本人のカリカチュアであった。カーテンコールの時すぐ下の同邦人が3人並んでスマホで写真を撮っていたのに苦笑する。歌手たちはいい声でそれぞれ持ち味を出していたがシドニー卿を歌ったバスがいい感じだった。さてこの若手の中からメジャーになれる人は何人いるだろう?
昨晩のテノールのように声とテクニックだけでは上にはいけない。厳しいものだ。