「この作品は決して歌ってはならない。演技をもって表現し、ヴェールでおおったような暗い声で朗唱しなければならないのです…」(G.ヴェルディがサルヴァトーレ・カンマラーノにあてた書簡より)
引用:名作オペラブックス2 ヴェルディ椿姫 音楽之友社
皆さんは「椿姫」というとどの様な印象をお持ちですか?🤗
豪華絢爛なシャンデリアに才色兼備なプリマドンナ、世界で一番上演回数が多い、誰もが知る大人気作品ですね🌸
感染症に振り回される今だからこそ、この「椿姫」本来の魅力に触れる絶好の機会なのだと知っていただきたいです😌
デュマ・フィス著書
「椿の花の貴婦人」
(小説)1848年
(戯曲)1850年
ヴェルディ作曲
ピアーヴェ台本
「道を踏み外した女」
私達に馴染み深い題名
「椿姫」の初演は1853年
戯曲からオペラ初演に至るまで、なんと僅か3年しか経っていません😳
現代に置き換えると、Covid-19が流行している最中、その感染症の生死を題材とした作品をヴェルディは上演決行していたのです‼️
イギリスの産業革命、劣悪な労働環境によって、当時、不治の病であった結核が大流行したのは1830年頃🏭当時は5人に1人は結核で亡くなり(白いペスト)とよばれ、恐れられていました😱
では、その結核の原因が分かったのはいつ頃だと思われますか?
細菌学者ロベルト・コッホが、結核菌を発見したのが1882年👨🏻🔬
椿姫初演から約30年後にして、ようやく原因解明します👍※特効薬ができたのはそのまた30年後💊
1853年フェニーチェ座の謝肉祭のイベントに対し、他宗教が多く集まる寛容なヴェネツィア(当時ロンバルド=ヴェネト王国)でさえ、パリで流行ったこの現代作品に対し、検閲官庁はいくつか条件を提示してきました🙅🏻♂️
①題名「愛と死(Amore e morte)」を変更→後に「道を踏み外した女」へ
②1850年代ではなく、1700年前後の衣装設定 ※写真衣装デザイン画参照
を義務付けられました😬
本来は「愛と死」直接的な題名であったことや、時代背景を変えたことは疫病の存在を広めたくなかったのでは?と勘づきます🤨
それは先程言っていた結核菌が発見された1880年代にして、ようやくヴェルディが強く望んだ1850年代の衣装が認可されたからです👰🏻🤵♂️※初演から30年後
せっかくなので少し話を膨らませると、当時は結核の薬はありませんでしたが、身体を心配するフローラと侯爵に対して、ヴィオレッタは
Lo voglio;
al piacere m'affido, ed io soglio
con tal farmaco i mali sopir.
Lo voglio; sono solita abbandonarmi al piacere e con questa medicina calmare i miei dolori.
私はそれを望むわ、私はいつも快楽に身を委ねていて、それに、この薬を使って痛みを鎮めているの。
と異様なテンションで言っています🙄
先程も伝えた通り、当時はまだ結核の原因が分からず特効薬はありません。ですが、症状を和らげる薬が既にありました😵
それは1840年にイギリスと中国の間で戦争にもなった⚔
阿片(あへん)
そう麻薬です🌿当時は嗅ぎタバコなどで処方していたそうです🚬
※阿片丁幾(アヘンチンキ) アヘンをエタノールに浸出させたものである。鎮痛、咳止めに用いられる。
信じるかどうかはあなた次第です😆
ヴェルディが「愛と死」を題材とし、デュマの作品を更なる高みへと導いたこと🙂そう思いながら、台本を読むと新たな感動に包まれます😌
これまで私は「愛と死」を感じ、この作品を読み解いたことがあっただろうか?
かの有名な「乾杯の歌」でさえ、心の内を打ち明け、生死を花に例えていたヴィオレッタの言葉に、私は耳を傾けていただろうか?
己の残酷な運命を受け止め、贅沢に身を委ねても満たされぬ思い、虚無感に苛まれていたヴィオレッタに気付いたのは、あの大衆の中で唯一アルフレードだけだった。だから曲の最後では二人だけが旋律を歌うのでしょう。
ヴィオレッタという役は、犠牲✝️という名の下に本心が言えません。
だからこそ直接観客に向け、本心を打ち明けられる箇所と、嘘/偽りの箇所の対比が重要だと感じ、それこそが冒頭に書いたヴェルディの要望なのだと思います。
そして、誰であろうと皆平等に生死が気まぐれで判断される。明日はどうなるか分からない、もはや誰も信用できない異様な世界観。
それが身近にある現在だからこそ、椿姫、本来の魅力に触れられるのだと信じて疑いません。
9月5日(日)14:00開演予定
6月には発売日などを含む、公演詳細を発表します‼️どうぞご期待下さい👍
次回は【イギリスの産業革命について】説明したいと思います🏭🚂🧵
引用/転載
名作オペラブックス2 ヴェルディ椿姫 音楽之友社
Wikipediaより
結核
結核の歴史
産業革命
La Traviata
阿片戦争
アヘンチンキ