とても小さかったあの頃

夜 眠れないでいると

世界中で起きているのは

自分一人だけのような気がして

とても怖かった。


地球が大きいって知らなかったあの頃

宇宙の孤独を感じた気がした。


私の世界は

私の知っている人たちだけだった。


でも今は違う


生き抜こうとしている人

闘っている人

星空を見あげている人

誰かを抱きしめている人

涙する人

微笑む人


白い人も黄色い人も黒い人も

名もなきヒーロー・ヒロインが

この地球の上で

奇跡のリレーを続けている




*** 朝のリレー ***

              谷川俊太郎


カムチャッカの若者が

きりんの夢を見ているとき

メキシコの娘は

朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が

ほほえみながら寝がえりをうつとき

ローマの少年は

柱頭を染める朝陽にウインクする

この地球では

いつもどこかで朝がはじまっている



ぼくらは朝をリレーするのだ

経度から経度へと

そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと

どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる

それはあなたの送った朝を

誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ