大映のスター俳優市川雷蔵の当たり役『眠狂四郎』シリーズ。
全部で12作製作されているがこれは8本目。当時はメインの俳優が
他社の映画に出演するのが難しい時代だったので、今作のヒロインは
3回目の出演の藤村志保。眠狂四郎は映画では鶴田浩二、市川雷蔵、
松方弘樹が演じている。TVドラマでは江見渉、平幹二朗、田村正和、
片岡孝夫が演じている。最近はあまり製作されていない時代劇だが
新しいスタッフで観てみたい気もする。

あらすじ
油問屋の弥彦屋に無理難題を押し付ける一団。その頭目愛染(天知茂)
弥彦屋の手代からのし上がった一文字屋を付け狙う謎の女勝美(藤村志保)
愛染一派の正体が大塩平八郎の残党と知った眠狂四郎(市川雷蔵)は
水野越前守の側用人武部仙十郎(永田靖)から愛染一味を葬るように
依頼されるが断る。愛染も眠狂四郎に惹かれながらも対決を決意するが…
重要な点
監督は時代劇の匠である三隈研次。『勝負』『炎情剣』に続いて三作目である。
この作品は原作者の柴田錬三郎は気に入らなかったらしいが、
その理由も良くわかる。『無辜の大衆が苦しむのは見過ごせない』
と言うセリフは無頼の徒である狂四郎らしくないのである。
藤村志保の立ち位置もヒロインなのに微妙。
映像美の完成度は非常に高いだけに脚本が残念だった。
良かった点
三隈監督の映像美(様式美)で構築された世界観は素晴らしい。
中でも悪役の天知茂が素晴らしい演技で愛染も好演している。
藤村志保の勝美も純粋な女性で好感が持てた。
悪かった点
脚本が淡白。幕府側の隠密などを出して筋を複雑にして欲しかった。
ラスボスも天知茂は良かったが別に幕閣の内通者などの、汚い権力者をだして
天知茂演じる愛染と対比させれば良かった。
遠藤多津雄の用心棒は素晴らしく下品で最高だった。
蛇足ながらエロいシーンも皆無なのも残念。

