2/26事件の映画と言えば、1980年『動乱』森谷司郎監督。
1989年の『2/26』五社英雄監督の2作品が
有名だが、この作品も2/26事件が取り上げられている。
あらすじ
7歳で遊郭に売られ、10年間下働きをしている千代(波谷有紀)は
17歳の誕生日が迫り、水揚げの日が近づいている。
そんな千代をお店の稼ぎ頭のお雪(佳那晃子)は気にかけて
面倒を見ていた。ある日遊郭街を仕切る稲葉組に直次郎(若山富三郎)が帰ってくる。
組長の定吉(ビートたけし)は兄貴分である直次郎を温かく迎える。
ある日、直次郎は人探しをしている陸軍士官の丹下中尉(川野太郎)と出会う。
丹下は幼馴染で将来を誓い合ったセツという女性を探していたが
実はセツはお雪であった。直次郎は丹下の人となりに惚れ込み、
お雪と丹下の間を取り持つが…
重要な点
2/26事件がテーマだとどうしても『動乱』や『2/26』と比べてしまう。
この作品は千代、お雪、丹下、直次郎がそれぞれ
メインなのだが誰にも感情移入しずらいのだ。
狂言回し的な千代が今一つ目立つ女優でないのもあるし、
丹下があまりにも好人物過ぎるのも残念だ。
直次郎は若山富三郎の好演も光って唯一存在感があるキャラだが
極道にしては優しい過ぎる点も多少違和感を感じる。
脚本も書いている須藤久監督は社会派の映画を中心に作品を撮っている
監督なので、千代の友人の学生に左翼的な思想を語らせたりしているのだろうか
製作の野村秋介も美意識が高いイメージがあり、その影響なのか?
良かった点
若山富三郎は素晴らしかった。当時60歳
晩年の『事件』『衝動殺人息子よ』などの傑作の演技を
彷彿させられた。
メインのヒロインである佳那晃子も美しかった。
悪かった点
この映画のメインキャラ4人が皆いい人過ぎて違和感があったし、
ぶっちゃけ遊郭ものならば『鬼龍院花子の生涯』『吉原炎上』
に比べて派手さがない。言い換えれば東映映画から
東映らしいカタルシスを抜いて作りましたという感覚。
若山富三郎が素晴らしいので最後までしっかり観れたのは良かった。