日活ロマンポルノ(1971~1988)には低予算だが魅力的な作品が多い。
現在のAVと違って性行為に特化した映像ではなく。
最低限のフォーマットを踏襲すれば自由に製作できた。
フォーマットは①10分に一回程度の性行為シーン
②ボカシやモザイクは入らないようにする。③上映時間は70分程度など。
日活はロマンポルノで若手監督や助監督を登用したため、
彼ら新しいスタッフがその後の日本映画界を支える逸材となったことは知られている。
あらすじ
志麻子(宮下順子)は小さな工場で住み込みながら事務職をしている30歳のOL。
志麻子は社長の後藤(山下洵一郎)の愛人であり、二度も子供をおろしていた。
ある日工場に盗みに入った矢野(安藤信康)と知り合った志麻子は
後藤の妻則子(中島葵)と後藤の二人目が生まれたとの会話を聞き、
会社を休んで矢野のアパートへ転がりこむ。
そこに矢野の元彼女トコ(亜湖)が矢野とよりを戻そうと帰って来たことから
三人の奇妙な生活が始まる。
重要な点
何と言っても主演の宮下順子の魅力に尽きる。
ロマンポルノ初期から息長く活動している上に
ロマンポルノ以外の作品にも多数出演する名女優。
時代劇で悪女役が多かったせいか、若い頃はあまり好きではなかったが
今改めて観るとスタイルもよく色気もあって演技も素晴らしい。
良かった点
根岸岸太郎監督は肉感的な映像に定評があり、
『遠雷』(1981年)の評価が高いがこの作品も
主人公志麻子の渇きのような感覚をうまく表現している。
ギラギラして嫌らしい中年の後藤と対照的に
飄々とした若者矢野を配置しての描き方も面白い。
非日常を描くことが多い映画でが多い中で、
日常のストレスや飢え,渇きをうまく表現している。
悪かった点
後藤の娘明美を利用して復讐を企む
点はやや後味が悪いが女の嫌らしさをうまく
表現している。短いが面白い作品だ。