名匠今村昌平監督による殺人と更生のストーリー。
カンヌ映画祭でパルムドール受賞作であり、当時観たはずなのだが、
完全に忘れていたのと『赤い橋の下のぬるい水』と混同していたのが原因か。
嫉妬で妻を殺してしまった男が反省していない。
愛しているからゆるせないという気持ちはよくわかる。
どうでもいい人ならば殺したいほど憎みはしまい。
あらすじ
会社員の山下(役所広司)は不倫した妻(寺田千穂)を殺害してしまう。
8年後出所した山下は保護司の住職の中島(常田富士男)の世話で
ひっそりと理髪店を始める。やがて船大工の高田(佐藤充)や
野沢(哀川翔)など地元の人々がお客として訪れるようになる。
ある日睡眠薬を飲んで倒れている桂子(清水美沙)を発見した
山下は彼女を助け、彼女は山下の理髪店で働くようになる。
刑務所時代の仲間、高崎(柄本明)が現れ、山下に嫌がらせをするようになる。
また桂子は不倫相手の堂島との間にトラブルを抱えていた。
重要な点
回想シーンや妄想シーンが所々挿入されていて、ぐいぐい引き込まれてしまう。
柄本明や手紙のシーンなどはどこまでが真実かわかりづらい。
しかしながらテーマは再生(更生)であり、ラストの大乱闘で全て落ち着く。
結果よければすべて良しという感じでもあるが、爽やかな救いのあるラストが素晴らしい。
良かった点
主演の役所広司は日本を代表する名優で邦画における緒形拳のポジションに
この映画でカッチリハマった感がある(後継者という意味でも)
また脇を固める常田富士男,佐藤充、哀川翔、倍賞美津子も素晴らしい。
悪役の柄本明、田口トモロヲもよかった。
悪かった点
清水美沙の凛とした美しさ。山下に拒絶されても耐えて待つ強さ。
そして体当たりの演技も見応えがあった。
1989年のNHKの朝ドラ『青春家族』から注目していたが
ヌードも辞さない確かな演技力は女優としての貫禄を感じた。
山下の妻役の寺田知恵も美しい。(出番少ないけど)