映画バカ一代~観らずに死ねるか~

映画バカ一代~観らずに死ねるか~

映画に関する想いのたけをぶちまけますね。辛口で行きます。たまに甘くなりますが。

『四畳半襖の裏張り 』とは大正時代の小説で永井荷風の著作と

同じ名前の春本が有名とのこと。1973年に『四畳半襖の裏張り 』として

神代辰巳監督で映画化されており。本作は翌年に同じ神代監督で映画化されている。

 

 

 

 

あらすじ

芸者置屋の息子正太郎(中沢洋)は家が狭いために

旦那が来た時には芸者と共に寝かされている。早熟な

正太郎は若い芸者たちと関係を持つ。母親でおかみの花清(宮下順子)

は正太郎を自由に育てるが正太郎は花清の実の息子ではなかった。

 

 

 

重要な点

ロマンポルノ界の名匠神代監督による前作は日活ロマンポルノ最高作と

評価されているが今作の出来栄えは正直今一つ。

『ブリキの太鼓』(1979年:日本公開は1981年)のアクを

全て抜いたような淡白なストーリー展開は物足りない。

 

良かった点

宮下順子は美しいが、他の女優さんが地味だ。

 

悪かった点

主人公の中沢洋も今一つ地味で残念な出来栄え。

脚本と演出にも問題があるのかもしれない。

気になる方がどこがダメかぜひ確認してください。

石井輝男監督の新東宝時代の傑作。

新東宝の映画はあまり観たことがなかったが

とても面白い作品だった。

新東宝(1947年~1964年)

と言う会社は俳優を縛る五社協定(1953年~1971年)

の1社(松竹・東宝・東映・大映・新東宝・日活※のちに参加)

だから当時はかなり人気があったのだろう。

ちなみに五社協定の適応外なのは三国連太郎と安藤昇だけ。

と思っていたら田中邦衛も当時バンバン色んな会社に出ている(笑)

 

 

 

 

あらすじ

神戸の波止場では古参の海堂組と竜神組が対立していた。

海堂組の女組長ゆり(久保菜穂子)の身体と利権(シマ)を利権を狙う

竜神組の副組長の剛田(天知茂)は部下に命じて竜神組が仕切る港まつりに

乱入するが謎の風来坊ハリケーンの政(宇津井健)と言う男に邪魔される。

政の腕を見込んで郷田は政を金で雇い、海堂組への嫌がらせを続け、

次第に対立が激化していくが…

 

 

 

 

 

重要な点

娯楽性の高い作品は名匠石井輝男の真骨頂。痛快で面白い。

一見すると70年代の東映の仁侠やくざもの(高倉健主演)

『昭和残侠伝』や『日本侠客伝』のような展開と思っていたら

予想外の展開を迎える。こんな痛快な作品を1958年に撮っていたとは

驚かされる。石井輝男凄すぎる。

 

良かった点

久保菜穂子が美しく気風の良い2代目組長を好演。

三原葉子も色っぽい姉御の中居役も素晴らしかった。

高倉みゆきも華を添えている。

宇津井健は流石の貫禄。何故だかキョンキョン主演のTV

『少女に何が起こったか』を思い出した。

 

悪かった点

悪役が天知茂で用心棒は菅原文太という

あまりにも豪華な顔ぶれの悪役が印象的。

菅原文太はのちに東映に移籍しての

大活躍は良く知られている。

 

 

 

石川県出身の嘉門洋子。元グラドルで女優

昔好きだったタレントさんだったので主演作品を観てみた。

Misson1もあるみたいだが今回は2を観てみた。

 

 

 

 

 

あらすじ

組織の殺し屋ナミ(嘉門洋子)は中東のテロリストと

取引しようとしている韓国の製薬会社社長を暗殺するため

韓国に潜入するよう指令を受けるが組織内に敵の内通者が

いることが判明する。韓国に潜入したナミはターゲットの娘

と接触することに成功するが…

 

 

 

重要な点

東映のVシネマにありがちなエロチックアクション

だが主役の嘉門洋子は全く脱がずに韓国の女優の絡みばかり。

監督は成人映画やVシネマで活躍する職人監督の片岡修二。

サスペンス色も入れて最後まで一気に観せる演出は流石だ。

 

良かった点

嘉門洋子好きな方は楽しめると思う。

 

悪かった点

あまりひねりはないが肩の力を抜いて楽しめる作品。

 

 

根津甚八主演の人気シリーズの1作目。

原作は月刊パチンカー連載漫画

※『ゴト』とはパチンコやパチスロにおいて、不正な方法で出玉を出すという意味。

今作で主人公のゴト師と悪質ホールの対決が主に描かれている。

パチンコやスロットを全くやらないのであまり興味がある作品ではなかったが、

観てみると中々面白い映画であった。シリーズ化されて続編も製作されている。

 

 

 

 

 

あらすじ

ゴト師のグループでリーダーの君島(根津甚八)は

パチンコホール『インター』の社長である戸張貴和子(名取裕子)

から依頼され悪質ホール『モナコ』を脱税で検挙させる。

貴和子は刑事の菅原(藤岡弘、)や政治家の鬼塚と繋がっており、

倒産した『インター』の店舗を手に入れる。

嵌めれたと知った君島だったが事務所を爆破され仲間は四散するが…

 

 

 

 

重要な点

根津甚八はNHK『男たちの旅路』の『墓場の島』での寡黙なシンガー戸部竜作役

がとても印象に残っている。その後主役、脇役問わず活躍された俳優。

今作製作時は石井隆監督の作品にも多数出演しており、

作風としては全く違う人気シリーズで活躍されていたのが役者としての人気と

幅の広さを物語っている。監督はホラー作品を得意とする鶴田法男。

テンポ良く作品をまとめ、パチンコを知らない人間にもわかりやすい

演出なのは流石だ。

 

良かった点

主役の君島役の根津甚八はもちろん仲間のでんでん、松田勝、

高田万由子らが個性的かつチームワークで仕事していくのが

痛快で良かった。

 

悪かった点

ヒロインで名取裕子が色気ムンムンで勝気な悪女を好演。

悪徳刑事役で藤岡弘、が特別出演しているが、

出番は多めで中々良かった。

 

横山やすしといえば一世を風靡した西川きよしとの漫才コンビ『やす・きよ』

だが、破天荒な芸人としても知られる。映画出演も多数あるが

今作は映画初主演である。原作は小林信彦の大ヒット小説で

製作には紆余曲折があったようでウキペディアにも詳しく書かれていた。

※主演2作目の『ビックマグナム黒岩先生』(1985年)も有名。

 

 

 

 

 

あらすじ

対立する暴力団島田組の島田組長(遠藤太津朗)を

襲撃し刑務所に入った元ボクサーのダーク荒巻(横山やすし)

は出所そうそう島田組に攫われ、殺されそうになり、

辛くも逃げ出すが、事務所につくなり唖然とする。

会長の須磨(丹波哲郎)の鶴の一声で『須磨組』は株式会社となっていた。

ダークを兄貴分の黒田(伊藤四朗)は温かく迎えるが、

ダークに新しく与えられた仕事は須磨組長の愛人であるスナックのホステス

ひとみ(甲斐智枝美)を歌手としてデビューさせスターにすることであった。

ダークは芸大出身の原田(桑名正博)とともにプロジェクトを進めるが…

 

 

 

 

 

重要な点

小林信彦によるベストセラー原作の今作は、

はじめに松竹で映画化の話が来て二転三転し、最終的には東映で映画化になったとのこと。

監督や主演も色々なキャストに変わったが最終的には横山やすしが快諾し主演となった。

監督は日活出身の『嗚呼‼花の応援団』『嗚呼‼花の応援団2役者ヤのぉー』を演出した

曽根中生が最終的に呼ばれた。監修は『仁義なき戦い』シリーズの笠原和夫が担当し脚本は

内藤誠と桂千穂が担当しているが大方の骨組みは笠原が書いたとのこと。

 

良かった点

ダーク役の横山やすしは動きにキレがあり、暴力(喧嘩)のシーンは一発OKだが

セリフはNG連発だったとのこと。ボートの操縦シーンは流石のカッコよさ。

原田役の桑名正博も歌手出身とは思えない演技の旨さ。痺れる2枚目でもある。

そしてヒロインの甲斐智枝美は前作『逃れの街』で演技開眼し、我儘なホステスから

スターに上り詰めていく女性を好演している。

 

悪かった点

主要な配役3人がフレッシュな顔ぶれになった分、脇を固める俳優陣は手堅く豪華。

わがままでぶっ飛んだ組長役の丹波哲郎、原作では主役のダークの兄貴分黒田役の

伊東四朗、スッポンのようにしつこい嫌味な刑事役の杉浦直樹などこちらは

丁々発止の演技で安心してみていられた。ラストもドンデン返し的な展開で

いい終わり方だった。かなりの力作で東映もシリーズ化を目指したが収益が物足りず

続編はなかった。松竹で作っていたらシリーズ化したかもとなど考えると楽しい。

 

『暗黒街の顔役』『暗黒街の対決』に続く、暗黒街シリーズ三作目。

主演は鶴田浩二→三船敏郎ときて、今作は加山雄三。

加山のイメージは『若大将』のイメージがあるが、シリアスな役を

演じることも多い。岡本監督も好んで主役にした。

 

 

 

 

 

あらすじ

山間の峠、三角峠でテストドライバーである兄一郎が事故死

との連絡を受けた草鹿次郎(加山雄三)はエンジン開発技師

の小松(中谷一郎)から一郎の死は事故死ではなく何者かが

仕掛けた殺人かもしれないという話を聞いた次郎は事件の

真相を調べることにした。手始めに業界誌を経営し、競輪に詳しい

大学時代の旧友須藤(佐藤充)と再会するがやがて須藤も

二郎とともに命を狙われるようになるが…

 

 

 

 

 

重要な点

岡本監督はテンポよくスリリングでスタイリッシュな映像を

構築している。主人公の親友で、俗に言うトップ屋

(企業に情報を売買して、お金をせしめる)役で世慣れた佐藤充

演じる須藤と真面目で剛毅な加山雄三演じる草鹿との対比が面白い。

 

 

悪かった点

岡本監督は同じ俳優を使うことが多く、今作も前作(暗黒街の対決)と

出演者がかなり重複しているが、前作では怪しい敵役だった

ミッキー・カーチスがラストに大健闘している。

後に仮面ライダーで死神博士を演じる天本英世も前作に続いて

殺し屋役でいい味だしている。

 

良かった点

主人公と相棒(トップ屋)がそれぞれバラバラに調査して、

その結果として、行き当たりばったり的に真相を突き止めるのだが

ラストにドンデン返しもあり、中々面白かった。

ミュージカルタッチのシーンはご愛敬である。

PS.刑事役の三橋達也のカッコよさに痺れた。

 

名匠岡本喜八監督の初期の傑作『独立愚連隊』(1959年)と

同じ年に製作されたクライムアクション『暗黒街の顔役』

がシリーズ化され2作目が今作『暗黒街の対決』である。

原作は大藪春彦の初期の作品である『血の罠』。

1作目の『暗黒街の顔役』の主役である鶴田浩二が

今作では脇役に回り主演は三船敏郎。

二大スターが共演している珍しい作品。

 

 

 

 

あらすじ

ある地方都市である荒神市に札付きの汚職刑事である

藤丘(三船敏郎)は赴任してくる。荒神市は新興ヤクザの大岡組と

古手の小塚組の2つの暴力団が対立しており、藤丘は

ひょっとしたことから妻を交通事故で失ったバーの経営者

鉄雄(鶴田浩二)と知り合う。鉄雄の妻は藤丘の女だったが

対立する小塚組にいた鉄雄の妻となったのちに死亡していた。

大岡組は市役所の上層部を抱き込んで小塚組の利権である

砂利採取権を取り上げ、藤丘組に与える決定がされたことに

より壮絶な殺し合いが始まっていく…

 

 

 

 

 

 

重要な点

なんだが『用心棒』の現代版みたいな話と思って観ていたのだが、

調べてびっくりした。今作は1960年公開で、

黒沢明監督の用心棒(1961年)よりも早い。つまりは黒澤監督より早く

三船敏郎に対立する二大組織に潜入し、両方とも壊滅させる役を

撮影していたことになる。

元々は原作者の大藪春彦氏の作品のプロットだからその点も評価されるべき。

さらにすごいのは得意のユーモラスな演出でエッセンスを利かせる

ことにより大藪作品の痛快さを残しながら、血生臭い点を消し去って

男の友情の物語がテーマのアクション巨編に昇華している点。

流石は手練れの岡本喜八である。

 

良かった点

三船敏郎と鶴田浩二の陽と陰の対比。

演技の特性を活かした配役も素晴らしい。

岡本組(常連の名優たち)もいい仕事をしている。

キャバレーで歌う殺し屋衆というのも最高だ。

 

悪かった点

娯楽作品のお手本のような作品で悪い点があまりないのが

悪い点(笑)というべきか。モノクロだがその点も

作風(フィルムノアール)形成に大いに貢献している。

長門裕之(1934年~2011年)が日活で今村昌平監督と

傑作を撮った中の一本。80年代の人間味溢れる

脇役で多くのTVに出ていた頃とどう違うのか

気になって観てみた。

 

 

 

 

 

あらすじ

米軍占領下の(横須賀がモデル)架空の街で

組から米軍の残飯を餌にして養豚をすることになった

暴力団の日森組。チンピラの欣太(長門裕之)は養育係を

命じられる。欣太には春子(吉村実子)という

恋人があった。春子は欣太にチンピラから足を洗って

二人で川崎に出て工場で働こうと言われるが

豚への投資で兄貴分から褒美として大金がもらえると

信じている欣太は耳をかさない。そんな時…

 

 

 

 

重要な点

今村昌平監督の徹底したリアリズムの視点と

ドキュメンタリータッチの演出は泥臭いが

どこか優しく人間臭いところが面白い。

米軍将校の妻となって出世する女性もいれば、

それに反発して工場ではたらく女子もいて

当時でも色々自由な生き方ができたのだという

ことは素晴らしい。

 

良かった点

長門さんの演技は当然素晴らしいが

春子役の吉村実子が新人なのに半端ない

存在感であった。

 

悪かった点

欣太を利用するやくざ組織もどうかなぁと感じてます。

とにかく都合が良すぎます。

 

 

 

 

 

イギリスの名優サー・クリストファー・リー

50年代後半から吸血鬼『ドラキュラ』役などで多数の作品に出演し、

悪役としても『007黄金銃を持つ男』の殺し屋スカラマンガ、

『ロードオブザリング』の魔法使いサルマン

『スター・ウォーズ2・3』のドゥークー伯爵と数多くの有名な作品で

印象に残る役を演じた名優である。(映画出演数のギネス記録もっている)

が主演したSF映画。日本未公開とのこと。

 

 

 

 

あらすじ

 

故郷の星が寿命を迎え、移住先として地球を選んだ異星人の

ラムゼス(クリストファー・リー)は月の裏側で待つ戦艦群の

尖兵として地球に潜入する。そして宇宙の秩序を守るために

密かに海底に作られた宇宙同盟の基地に潜入し、ラムゼスは

宇宙同盟の基地を占領する。偵察に出かけていて難を逃れた

宇宙同盟の地球司令は故障したUFOを修理するために

地球人のUFO研究家アラン教授(ロバート・ヴォーン)

に協力を要請するが…

 

 

 

重要な点

監督・脚本はエド・ハント。

正直いってかなりのB級作品で当然特撮もしょぼい

地球征服を企む悪の宇宙人としてはいささか乱暴な手口。

でもいいんです。ツッコミところ満載で面白い。

自殺光線で地球人を抹殺していく作戦も大胆極まりない。

でもいいんです。ハッピーエンドで終わるので。

 

良かった点

主演のクリストファー・リーが出演を後悔したという

黒いもじもじ君を彷彿させるダサい衣装。

そして全くイケてないUFOの造形(セット)もお約束。

でも一生懸命に作った感があって楽しめます。

 

悪かった点

助演の地球人ロバート・ヴォーン(ナポレオン・ソロで有名)

と助け合う正義の宇宙人も中々良かったです。

興味がある方は是非一見されてください。

 

 

渡辺淳一が日本経済新聞に連載したベストセラー小説の映画化。

渡辺淳一氏の小説は言わば高尚な言葉でエロスを描く、

要するにインテリ向けのポルノ小説。(褒め言葉です。)

東映では『ひとひらの雪』や『化身』『別れぬ理由』などが

映画化されてヒットしたが今作も大ヒットした。

当時は心中するという心境が良く理解できなかったが

主人公と年齢が近くなったせいか観てみることにした。

 

 

 

 

 

あらすじ

出版社に勤務する久木(役所広司)は営業との対立で

編集長の座を追われ,閑職の調査室に勤務している。

久木は凛子(黒木瞳)という美しい人妻と不倫関係にあった。

凛子との関係は次第に深まってゆき、久木は凛子を求め続ける。

凛子の義理の父の死に通夜を抜け出しだ凛子と久木はホテルで

逢瀬を楽しんだことがきっかけで

凛子と久木は家族そして会社からも孤立し、

二人はしだいに追い込まれていく。

 

 

 

 

 

 

重要な点

監督は森田芳光。美しい自然の中でひたすら求めあう

二人の逢瀬を自然と融合するかのような美しい映像で描いている。

二人は心中という破滅に向かったいくのだがそこには哀しみは少ない

むしろ二人の純粋な愛の結晶というべきか。

今作は森田作品の傑作のひとつに挙げられるべき作品である。

 

良かった点

黒木瞳がヌードも厭わず情熱的で美しい

清楚な人妻凛子を演じていて素晴らしいのだが

久木を演じる役所広司の男の色気が半端ない。

 

悪かった点

脇を固める俳優陣も素晴らしく、凛子の夫の柴俊夫。

上司の中村敦夫、友人の寺尾聡など手堅い布陣であったが

特筆すべきは、久木の妻役の星野知子の抑えた色気が

破壊力抜群で黒木瞳とは別の色気を放っていた。

(出来ればラブシーンも観たかった)