『ウサギとカメ(あるべき姿版)』
執筆者 東町健太

 昔々、あるところにある動物村と呼ばれる村がありました。動物村ではたくさんの動物たちがみんな仲良く暮らしていました。  
 その動物村の西側は高級住宅地が広がっていたり、駅前に行けばオサレなカッフェー(笑)などが立ち並んでいたりする上品な土地でした。その西側に広がる高級住宅街の一角にある、とりわけ民度が高そうな人たちが多く住む地域に一匹のウサギさんが住んでいました。 
 このウサギさんは、幼少の頃からとても真面目に熱心に勉強に励んだので、一流私立中学、一流私立高校を経て一流国立大学に現役で合格した秀才でした。そしてその学歴を鼻にかけることもなく、いつも謙虚でさらにとても人当たりも良かったので、ウサギさんはいつもたくさんの取り巻きを従える人気者でした。ついでに言えば容姿も非常に端麗で、まさに完璧な人間でした。
 このウサギさんの特技は走ることです。中学、高校と陸上部に所属し長距離走で国体にも出場したほどの実力を持っていました。なんとウサギさんはスポーツマンでもあったのです。すごいですね。
 さて、このウサギさんがある日、気まぐれに動物村の東側にいつもの取り巻き連中(陸上部仲間が多い)と遊びに行きました。動物村の東側はどんづまりのド底辺の吹き溜まりのようなスラム街があったり、駅前に行ってもパチンコ屋や怪しげな街金や激安ピンサロばかりが立ち並んでいるような、下品極まりない腐った土地でした。いくら気まぐれとはいえ、何故ウサギさんはこんな場所に出かけたのでしょうか?
 そんなゴミ溜めのような場所では当然育ちのよろしいウサギさん(アンド取り巻き)は楽しめません。スラム街の中でどうにか見つけたあまり小汚くないギリギリまともさを保っているように思われる喫茶店に彼らは逃げ込みました。
 そこで水で薄めすぎてもはやコーヒーなのか紅茶なのかすら定かではないわけのわからない飲み物(一杯750円)を飲みながら彼らは虚脱していましたが、そこはやはりいつもつるんでいる仲間です、やがて元気を取り戻し、いつものようにウサギさんを中心にして陸上談話で盛り上がっていました。
「ウサギさん、マジ速いっすよね、ハンパないっすよね」
「いやいや、俺なんてまだまだだよ」
「そんなことないっすよ、ヤバイっすよ」
こんな会話で盛り上がっていたのです。おやおや、取り巻き連中はあまり頭が良くなさそうですね。大体の場合、集団の中で影響力を持つ人間に無闇に擦り寄りたがるヤツラというのはバカで話しがつまらない連中なのです。まるで虫けらのようですね。それはさておきそんなウサギさんたちの会話を隣の席で聞いている一匹の動物さんがいました。そうです、カメさんです。
 このカメさんはただでさえ民度の低い東側地区の中でもとりわけ荒廃した一角に住んでいました。カメさんは幼少の頃からグズなことで有名でした。小学校のときの彼は授業中は死んだ魚のような目で虚空を見上げてよだれを垂らしていたり、たまさか教師に当てられると「フォーーーーー!!!」と甲高い奇声を挙げつつ白目をむくなどの愚行を繰り返していました。まさにバカでした。カメさんと同じクラスになったことのある女子の一人は当時の彼を振り返って「何故カメさんが普通学級にいるのかとても不思議だった」と語っています。そんな彼も給食の時間だけは輝いていたようで、カメさんの担任を受け持ったことのある教師の一人は「まるで飢餓で苦しんでいる難民のようだった」と語るほどのすさまじい勢いで給食を貪り食らっていました。余談ですが、カメさんの家庭は給食費を6年間びた一文払っていなかったとのことです。中学に入学したカメさんは入学後すぐ学校に行かなくなります。といっても親や社会に反抗して学校に行かなくなったのではなく、あまりにもカメさんがグズだったため入学式の最中に先輩たちにボコされるという前代未聞の事件があったからです。そんなカメさんでしたが中学卒業後は何の間違いか奇跡的に村内のとても頭の悪い子ども御用達の工業高校(偏差値33)に進学することができました。しかしカメさんは「なんか違った」という意味不明な理由を吐いて、せっかくまぐれか手違いで入学することのできたこの高校に入学式の日に退学届けを提出しました。村内一のバカ高校中退、しかも在校時間わずか32分という驚愕の低学歴を誇るカメさんは、20歳を過ぎた今もアルファベットの読み書きすらろくに出来ず、今は派遣労働などをして糊口をしのいでいます。
 そしてカメさんには友達がいませんでした。というのも、カメさんの話す会話の内容が「こないだ埼京線乗ってさ、めっちゃ混んでてマジだりいなとか思ってたんだけどさ、近くに巨乳な女子高生いてさ、お、お、おっぱいが俺のひじに当たっててさ、そりゃあもう、でへへへへへへへひいひいっ」などという救いようのないものであったり、「俺ってさ、他人には理解されないけどさ、なんかスペシャルっていうか、すごくね?なんでみんな俺の素敵さに気づかないかなあ?俺はもうほぼ神なのになあ?」などと根拠のない自信を前提とした狂人としか思えない問いかけを唐突にしたりするのでみんなカメさんを敬遠しているからです。ついでに言えばカメさんは容姿が非常に奇妙であり、不気味としか形容できないような顔面の持ち主であったことも、カメさんに友達ができない要因の一つでありました。
 そんな友達がまったくいないカメさんだったので、ウサギさんが仲間連れで喫茶店に入ってきた瞬間から彼らにムカついていました。ひがんでいました。しかもよく見るとウサギさんたちは皆とても洗練された都会感あふれる高そうでこぎれいな服を着ていました。それにひきかえカメさんはというと、もう二週間近くも洗濯していないタバコのこげ痕のついた黄ばんだ臭いティーシャツにしょうもないチノパンに穴のあいた安全靴といったホームレス同然の姿でした。さらによく見ればウサギさんたちはどうやら自分と同じくらいの年齢ではありませんか!そこまで気づいたとき、カメさんは思わず彼らの会話に割って入っていきました。
「足が速い、足が速いてそれがなんぼのもんなんじゃこら。さっきから聞いてりゃあしゃらくせえくだらねえことばっかしゃべりやがって。殺すぞバカが。調子のんなよド餓鬼が。走るなんて誰にでもできる行為でそこまで増長できる君たちはほんたうに哀れだよ。走るのが速いのがそんなに偉いのかなあ?はは。笑えるよ。そしてもはや泣けるよ。君たちはかわいそうな子羊だよ。道に迷っているんだね?はっきり言っておく。君たちは罪人だよ。悔い改めよ。世の終わりは近づいている。」
 突然隣の席にいた薄汚い乞食がわけのわからないことをまくしたててきたので、ウサギさんたちはとてもびっくりしてしまいました。少しの間ぽかんとしてしまいましたが、取り巻きの一人が「いやいや、どう見ても一番哀れなのはお前だろ」というしごくまっとうな反論をしたのを皮切りにみんな一斉にカメさんに食ってかかりました。
「なんなんだよてめえ」「くせえんだよ」「頭おかしいんじゃねえのかこら」
その程度の罵倒でめげるカメさんではありません。思えばカメさんは物心ついたときからいつも誰かにバカにされ侮られ虐められてきました。家が貧しいこと、容姿が醜いこと、初めはそんなことがからかいや嘲りの対象になっていました。そのような常に他人から見下されながら過ごした環境の中でカメさんはねじれ、歪み、狂い、夢や希望を見失い、現実から目をそむけ続け、全ての努力や精進を放棄した結果、見るも無残な大人に成り果てたのです。侮られ虐められて当然なごくつぶしになったのです。もう彼はいまさら人に何を言われようと何も感じません。真っ赤になってまくしたててくるウサギさんの取り巻き連をカメさんはさもうんざりしたような嘆息などを漏らしつつ、にやにやしながら眺めておりました。そんなカメさんの態度にさらにムカついた取り巻きの一人がカメさんに言いました。
「お前さっき走るなんて誰でもできるとか、速いのがそんなに偉いのかとかほざいてたけどよお、じゃあお前ウサギさんより速く走れんのかよ?走れねえだろ?ああん?」
そんなことを言われたカメさんはちょっとイラっとしました。図星だったからです。カメさんはバカなばかりか非常に鈍重で運動神経のまったくない男で、さらに怠惰な生活を続けていたために走るなどという行為からはここ10年遠ざかっていました。この男には取り柄が一つもないのでしょうか?生きていて恥ずかしくないのでしょうか?しかしイラっとしたカメさんはバカなので後先考えず売り言葉に買い言葉で言い返しました。
「ほほ、神に出来ぬことなどない」
当然、じゃあやってみろよ、ということになりウサギさんVSカメさんチキチキ長距離走対決が数日後に開催されることになりました。ウサギさんとしては何のメリットもない対決ですし正直イヤで仕方なかったのですが、自分を信頼しついてくる子分たちを裏切ることもちょっとアレだなあ、なんかやだなあ、と考え、「あ、別にいいんじゃない。やろうよ」などと言いました。カメさんはこの展開に本気でビビリましたがいまさら「すんませんすんません。調子のって本当にすんません。俺なんてただの下等な家畜です。豚です。私を哀れんでください。お願いだから赦して‥。お願い‥。」とさめざめと泣いて詫びるわけにもいかず、本音では全裸で渋谷のスクランブル交差点で土下座をしてでもいいから赦してほしい、助けてほしいと思っていたにもかかわらず口からでたのは「ふう‥いまさら泣いて詫びてももう遅いよ。後悔するがいいよ。神の裁きを思い知るがいい。ははん。」などというキチガイじみた言葉でした。本当に後悔していたのはカメさんで、泣いて詫びたいと願っていたのもカメさんでした。

 そしてあっという間に時間は流れ、二人の対決の日がやってきました。喫茶店での対話からこの日までに「カメ逃走未遂事件」や「カメ診断書偽造騒動」や「カメ雨乞い祈願祭り」など様々なことが起きましたが、当日は幸か不幸か絶好の好天に恵まれました。レースのスタート地点は例の喫茶店で、ゴール地点は動物村のはずれにあるお隣山の山頂です。スタート地点には大勢のウサギさんの友人や取り巻きたちが応援にかけつけ、頑張れウサギコールが巻き起こっていました。この点からもウサギさんの人望がうかがい知れます。一方青ざめた顔をして現れたカメさんには誰一人として応援にかけつけてくれる人はいませんでした。親兄弟すらきていませんでした。いや、正確に言えば来れなかったと言ったほうがいいでしょう。どういう事かというと、カメさんの父は以前少し暴力的な感じのする金融業の方から融資を受けたのがきっかけでその時はとある山中に監禁されていましたし、母もよんどころない事情があって和歌山の方で懲役に服していました。妹さんは分裂していましたし、兄さんの行方は今も明らかではありません。たとえそのような諸々の事情がなかったとしても彼らがカメさんの応援にくることはなかったであろうということはさておいて、とにかくカメさんは可哀想にひとりぼっちでした。
 さあ、どうでもいいカメさんの家族の紹介をしているうちにスタートの時間がやってきました。どきどきする瞬間です。一体どのようなレースになるのでしょうか? 
 パーン!スタートの合図のピストルの音が雲ひとつない青空に響きました。ウサギさんはとても美しいフォームで風を切って走り出しました。みんなはすごいなあ、さすがだなあと思いました。そして素晴らしいタイムであっという間にゴールにたどり着きました。
「やったあ、ウサギさんすごいね」「いい走りだったよ」「感動しました」
ゴール地点ではウサギさんを中心に歓喜の輪ができあがりました。みんなニコニコしていてとても幸せそうです。ウサギさんもとても嬉しそうです。そしてウサギさんはみんなに向かっていいました。
「応援してくれたみんなのおかげでとてもいいレースになったと思います。自分を信じて努力を続ければ夢は必ずかなうんだ、ということを観ていてくれた国民の皆さんに伝えたいと思って走りました。夢と感動を与えたいと思って走りました。本当に応援ありがとうございました!」
このウサギさんの言葉にみんなとても感動しました。目に涙を浮かべている者もいました。さて、喜びの絶頂にあった彼らでしたが、そのうちの一人がふと思い出しました。
「あれ?そういえばカメは?」
確かにカメさんの姿はみえません。ウサギさんがゴールしてからいつの間にやら2時間が経過していました。一体カメさんはどうしたのでしょう?取り巻きたちはカメさんを探しにいきました。
 そのころあのカメさんはなんということでしょう、スタート地点の喫茶店に程近いモツ煮込み屋でレモンサワー、焼酎、ホッピーなどを飲んだくれていました。このバカガメはまだゴールもしていないというのに何をしているのでしょうか?なめているのでしょうか?いえ、別になめているわけではありませんでした。このバカガメもスタート直後はマジで走っていたのです。しかし相手はウサギさんです。見る見るうちに差は拡がっていきました。とても不細工なフォームでどたどたはんべそをかきながら走っていたカメさんでしたが、ウサギさんの姿が見えなくなると地面にへたりこんでしまいました。どだい、勝てるわけがないのです。生まれた瞬間からカメさんは誰からも負けているのです。しばらくへたりこんでいたカメさんでしたが、やがて起き上がり、ちょうどすぐそこにとめてあった自転車を盗んで駅のほうへ向かいました。駅前の歓楽街についたカメさんはいつもいっているピンサロにまようことなく入店しました。ちなみにその店は地元で「お化け屋敷」「バイオハザード」などとよばれている、ある意味有名店です。20分後、死神のような顔色のカメさんがでてきました。よほど怖い思いをしたのでしょう。だったら行かなきゃいいのに、と思いますが、カメさんはお金があるとこのお店に行くのです。それからカメさんは牛丼屋で腹ごしらえをしたあと、パチンコ屋に行きました。新台が入荷されているのをおもいだしたからです。数時間後、ひどい負け方をして憔悴しきった表情のカメさんがでてきました。彼はパチンコですら負けるのです。そして例のモツ煮込み屋に入って飲んだくれていたのです。そして店から出てきたところをカメさんの行方をさがしていたウサギさんたちの取り巻きに捕まってしまいました。
「どういうことだよコラ」「ふざけてんじゃねえぞ」「殺すぞコラ」
みんなとてもカンカンです。そしてカメさんの釈明が始まりました。
「いやあのね、俺は世間に訴えたいわけですよ。勝ち負けだけが全てであるかのような世の風潮はいかがなもんかなと。レースでどちらが速い遅いかなんていうのは私から見たらナンセンスだよナンセンス。そんなちいさなことではなくもっとさ、大きなものに目をむけようよ。勝ち負けなんかどうでもいいんだよ。ほらやっぱり俺ってそこらへんんとこもう超越しちゃってるからさ、勝ち負けなんかもう興味ないよね。そんなミクロなことにはもはや捉われてないわけよ。人物が大きいっていうのかな?そういう意味ではあの、ウサギ君だっけ?彼との差は歴然だよね。小さなことばかり追いかけるウサギ君と、超越した俺との差だよ。器がちがうよね。もうスタートするはるか以前から勝負はついていたよ。だからもうね、勝負なんて意味をもたないよ。今回の俺の行動でウサギ君もそのあたりのこと、気づいてくれないものかねえ?小物のウサギ君では無理かなあ?はは」
このカメさんの釈明を聞いてみんなの怒りは爆発しました。
「死ね!死ね!死ね!死ね!」
みんな口々に叫びました。卵や石をカメさんにむかって投げつけました。カメさんは「ひいっひいいい」と言って逃げていきました。みんなはおいかけていってケリをいれたりしました。


 さてこのレースが終わって数年後のことです。あのウサギさんは一流企業に就職し、順風満帆な人生を謳歌していました。勝ち組でした。ある日、昔の友人たちと久しぶりに会い、旧交を温めあっていたときです。友人の一人がおもむろに新聞を出して言いました。
「これってあのカメだよね?」
その新聞記事は次のようなものでした。


[所持金は十円玉3枚…25歳男性ミイラ化遺体]

 動物村東区のアパートで独り暮らしをしていたカメ(25)が先月死亡していたことが26日分かった。
 動物警察東署は餓死した可能性があるとみている。
 同署などによると、2月11日、管理会社からの通報を受けた署員が、ベッドで亡くなっている男性を発見した。ミイラ化しており、死後3~4か月たっているとみられる。男性の部屋にはテレビと毛布一枚しかなく、現金は、十円玉3枚が財布にあっただけだった。
 司法解剖で死因は特定できなかったが、同署幹部は「室内に食料品がなく、餓死した可能性がある」としている。
(2012年3月27日10時07分 動物新聞)


「ああ、あのカメだね。」
「なに、あいつ死んだの?だはははは」
「マジかあ、なんかめっちゃ笑えるね。餓死て、あははは」
この会話でウサギさんたちはみんなとても楽しそうにげらげら笑いました。とても素敵な笑顔でした。めでたしめでたし。

<終>

 

[裏探偵稼業日記其ノ三~私の報告書~]

執筆者 内村トシアキ

 昨今のSNS悪用による振り込め詐欺被害に関して、私が独自に取材したレポートを警察に提出したことがきっかけとなり、私内村と警察との合同捜査 (と書けば大袈裟ではあるががスタートした。本来ならば自身のSNSに投稿して情報公開しようと考えていたが、大学時代の親しい友人であるオパーリン編集長のおかげで、『不定刊オパーリン王国』へ、不肖「内村トシアキ」としての連載が開始されることとなった。同氏のご厚意に心から感謝したい。前号にて同氏との思い出話を、ご本人の巧みな筆力により大変面白く可笑しく描いていただいた。「内村トシアキ」とはいかなる人間であるかを、おぼろげながらでも理解していただけたならば幸いである。

 さて今回は何について書こうかと思案した際、先日編集長から「内村氏が警察に提出したレポートを転載させてほしい」と言われたことを思い出した。私もなるべくそうしたいところだが、何分、犯行手口や送りつけられるメール等の情報を詳細にまとめようとするあまりレポート自体が冗長になり、事情をよく知らない読者諸君には理解し難いと思われる部分も少なくない。また捜査上、公開できない情報も含まれる。そこで私は一連のレポートの内容を簡略化し適宜脚色を加えることで、純粋に読み物として楽しめ、かつ、日々刻々と進化していく詐欺団体から身を護る術を身につけられるような文章を書くことにした。今後も私内村の一人称で話が進んでいく、所謂「探偵小説風ルポ」というスタイルをとろうと考えている。現実に発生している事件を扱うため、小説のように上手くは事が運ばないことが多いのは承知の上だ。だが私は、持ちうる力の全てをもってタイムリーに情報を提供するつもりなので、どこまで行けるかどうかは分からないが、最後までお付き合いいただければ幸甚である。

 

 レポートを警察に渡した際のやり取りについては、前号を参照いただければと思う。したがって以下には、その内容を大まかにまとめたものを記す。

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平成24920

捜査関係者各位

SNS (ソーシャルネットワーキングサービス悪用による出会い系詐欺についての調査

過日未明、世界最大の会員数を誇るSNSの「facebook」を悪用した不審者が接触してきた。御存じのように、facebook側は本名で登録して使用することを利用者に求めているが、中には悪意があって偽名による登録を行い、不特定多数の利用者に接近する者がある。

色々な手段が予想されるため、その不審者の全貌を把握することは現状不可であるが、私が今回握った情報は、その不審者の多くは容姿端麗な女性の写真を使って登録し、偽名及び職業を使い分け、主に独身男性をターゲットに友達申請 (連絡交換が可能な状態にすることを行って、プライベート用のメールアドレスを送りつけるというものである。私の知人にも同様のケースで接触した者がいるということを聞いた。

実はこのメールアドレスが曲者で、一度でもこのメールアドレスに返信をすると、言葉巧みに男性を操って恋心を抱かせ、悪質出会い系サイトへの登録にまで誘導を行うというものだ。私は試しに、いつでも消去可能なフリーメールアドレスを作り (捨てメールアドレス作成、甘い言葉に騙された振りをして、彼らの手口を調査することにした。以下に、実際のメールのやり取りをもとにした、簡単な実況中継を書き記す。

◆不審者の情報 (あくまでfacebook上、或いは個別に聞き出したものであるので、全て架空の情報と思われる)

氏名:Hinako Miyamoto

性別:女性

年齢:25

職業:保育士

上記の女性 (以下Hとするから友達申請を受けた際に、身に覚えがないため、「どちら様ですか」とメッセージを送り、およそ一週間後、返信が来た。

H:「申請承諾いただきましてありがとうございます☆ちょっと知られたくない人にfacebookやってるのがバレちゃって、やめようと思ってるんです。良かったら直接メールしませんか?yukica****@yahoo.co.jp (※著者注 レポート本文には隠した部分もすべて表記した)迷惑だったらごめんなさい()少しでも興味もっていただけてたら嬉しいです☆」

このメッセージを受け取った時点で、Hfacebookのアカウントを消去していた。よって私は送られたメールアドレスに返信した。

内村

「そうですか、世の中変な人も多いですから気をつけてください。私でさえ、身の覚えのない貴女のことをまだ信用しているわけではありません。ですから、貴女から友達申請をした以上、自己紹介してもらえませんか?」
H:「返信してくださってありがとうございます!!
まさか来るとは思わなかったので嬉しいです☆内村さんとは仲良くなれそうだなぁと思って申請しちゃいました。本当の名前はゆきって言います!(^^)!仕事は都内で保育士をしてます。最近あたしの組の子が他の組の子と喧嘩して怪我しちゃって、その親御さんから嫌がらせ受けてたんです(>_<)今はその職場は辞めて、先輩を頼って別の幼稚園に勤め始めたばかりなんです。ケータイも、前の職場で支給されたものをそのままプライベート兼用で使用していたので、今は持っていないんです。近々買う予定なんで、買ったらそこからメールしてもいいですか?(>_<)内村さんて、足立区に住んでるんですね☆あたしも足立区です(^^)良ければ近々、ご飯食べに行きませんか?明後日以降の夜って空いてませんか?色々お話ししたいです。あたしのことは適当にゆきって呼んでください☆内村さんのことはトシちゃんって呼んでいいですか?(^^)それと、あたしを助けてくれた先輩夫婦の赤ちゃんの写真がとっても可愛いんです♪一緒に送るので見てね!あと、友達があたしのブログを作ってくれたんです。会う前にあたしの日記とか読んでほしいな☆ニックネームの登録だけで見れるよ!http://c.s***th**rt.cc/i/login.php?id=*************」

この時点でかなり馴れ馴れしく一気呵成に (良く言えば可愛らしくまくし立ててくる。上記のURLにも非常に可愛らしい人物の写真が何枚も載せられている。純な男性が相手ならば、たちまち恋心を抱いてしまうに違いない。そして何を隠そう、このブログなるものこそが悪質出会い系サイト『CUORE(クオーレ)』の正体である。写真は数枚見ることが出来るのみで、それ以上画面を進もうとすると、「こちらに空メールを送信して、ニックネームを登録してください」と指示される。操られるがままに登録してしまうと、いよいよ魑魅魍魎の如き迷惑メールの奔流が押し寄せる。

もちろんこの時点で、最初に使用されていたメールアドレスyukica****@yahoo.co.jpは使用不可となっている。曰く、「そのアドレスもパソコンも先輩夫婦から借りていたものだから」とのこと。他人のパソコンの使用はあり得ても、メールアドレス (アカウント自体を拝借するのは常識的にまずあり得ない。Hが躍起になって虚言、妄言を並べ、出会い系サイトに誘導してやろうという魂胆が見え見えだ。

よってHと連絡を取るには、CUOREの掲示板を通じて行うしかなくなる。このサイトはポイント課金制をとっており、メールの開封、メールの送信、写真の閲覧等をするごとに一定のポイントが引かれていく(最初に70ポイント与えられてはいたが、すぐに無くなった)。馬鹿馬鹿しいと思いながらこの70ポイントを消費してやると、サイト運営側から正会員への登録案内がやってくる。

100ポイント=1,000

500ポイント=5,000

2000ポイント=20,000

…ぼったくりもいいところである。しかも、

携帯電話番号送信=800ポイント

携帯電話メールアドレス送信=1,000ポイント

……もう開いた口が塞がらない。

Hはじめこのサイトに登録している女性は、ほぼ全員サクラと思われる。要は利用男性と親しくなって、必要以上にだらだらメールを長引かせて課金ポイントを購入させ、荒稼ぎしている詐欺集団だ。

これ以上のやり取りの記録は必要ないためここで終わりにするが、私がインターネット検索エンジンに「CUORE 詐欺」と入力して調べたところ、私が捨てメールアドレスでやり取りしたものとほぼ同様の手口で騙された男性達が書き込みしているページを複数発見した。被害の額はわずかなものから数十万円に及ぶものなど、多様であった。

内村トシアキ

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以上がレポートの概要である。警察関係者は当初、私を胡散臭そうな目で眺めていたが、レポートを見せ説明を行うと、私に捜査協力を依頼してきた。私は引き続き「内村トシアキ」として情報を集め、警察に報告することで、詐欺集団撲滅に協力することを決意した。

(次号に続く)
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「オパーリンの感想」

執筆者 オパーリン

 先日、本誌にて鮮烈なるデヴューを飾った内村トシアキ氏であったが、早くも「裏探偵家業日記」の第三話を執筆してくださった。今回の内容は、SNS恋愛詐欺商法を撲滅せんと義憤に駆られた探偵・内村氏が捜査協力の為に警察に提出したレポートである。私が前回の原稿を頂いた際に「ぜひともそのレポートを公開して欲しい」と熱望したところ、内村氏が「捜査機密として見せられない箇所があるから、そこを上手く編集してみるよ」と請け負ってくれ、今回の第三回の原稿となった。であるからして、今読者の皆さんが読んだのは、捜査協力レポート(編集版)である。編集したとはいえ、探偵・内村氏の緻密な分析によってSNS恋愛詐欺商法の全容を知るに十分な内容であることはいうまでもない。

 さて、内村氏の原稿を読んでいて「なるほど、恐ろしいまでに巧みな手口だ。気をつけなければ」と兜の緒を締め直した私・オパーリンであったが、一点気になる箇所というか疑念が湧いたので、この感想ではそれについて書くことにする。

 一連の内村氏の文章から、この恋愛詐欺商法で美味しい思いをすることできそうにないのは言わずもがなである。では、このメール一体誰が送っているのだろうか?ということは誰しもが思うことであろう。実際にキャワイイ女の子がメールを送っているのであれば、仮にだまされたとしてもまだチンコのせいにできるというか、なんというか、救いようがあるように感じる。しかしながら、たいていの場合、この「純情少年の恋心をくすぐる、巧みな」メールを送っているのはサクラ(出会い系で利用者を騙す為のメールを送る人をサクラという)のバイトで雇われたただのオッサンである可能性が高い。

 昔、2chまとめでサクラのバイトをしていた人の非常に面白いスレがあったので、以下にそのリンクを紹介しておく。

「昔サクラのバイトやってたら相手がお前らだった件」

http://blog.livedoor.jp/nicovip2ch/lite/archives/1711952.html

 サクラという職業はいつからできたのだろうか、と考えると中々面白い。おそらくはインターネットや携帯電話の普及とともに急速に拡大した「出会い系サイト」と誕生の時を同じくするのだろうと思われる。ちなみに、それ以前の「出会い系」的なツールといえば「テレクラ」が主流だったのだろう。テレクラにサクラがあったのかどうか、詳しくは知らないが、現在の様に広範な被害を出すほどには存在していなかったのだろうと思われる。

 今でこそサクラはバイトのオッサンが主流になっていると思われる状況にあるが、その黎明期には結構の割合で実際の女の子がやっていたと思われる。というのは私は実際にそのサクラの女の子と友達だったことがあるのだ。詳しくは拙著
『存在と記憶の距離感』
(「月刊オパーリン王国2012年1月号」収録。
http://p.booklog.jp/book/44566/chapter/74134
に書いてある。

 手前味噌で申し訳ないが、小説の中身をかいつまんで話すと、純粋無垢な15歳の少年がひょんなことから出会い系でサクラのバイトをしている援交・家出少女と出会い、そこからグチャグチャと愛欲の禍に巻き込まれていく、というお話だ。僕が15歳というと大体10年位前の話だから、2003年位かな。この頃は出会い系サイトとかも結構混沌としていて、実際に女の子と出会えちゃったりとかも結構あったのかもしれない。まあ、今もやり方によっては会えないことはないのかもしれないけれども、やったことないから良く分からんわな。

 と、ダラダラと書いてきましたが、とにかくまあ、この比類なき新人・探偵・内村トシアキ氏の作品・視点は間違いなく時代の一側面を鋭く切り取っている、ということがいいたかったわけであります。次回作を心待ちにしつつ。

「不定刊 オパーリン王国」編集・発行人 オパーリン


 はい、こんばんは。
今日はまた新聞記事の感想でも書いていきますよ。前回やってみて、別に好評だったとかそういう訳ではないんだけれども、自分としては「折角金払ってまた新聞読むようになったんだから、なんか書かなきゃな、もったいない。」と、そういう心境ですね。
 以前から月オパで東町健太さんと「その「声」は「誰」の声?」という某朝○新聞の声欄を批評する企画を連載していたんだけれども、「声」の選定は東町さんに一任してあるし、僕の視点で面白おかしく記事を選定するってのもアリかなあ、と。
 しかも、新聞をちゃんと読んでみると、編集委員の書いた主張的な文章は全くつまらない(逆につまらなすぎてめっちゃ面白いのだが)んだけども、社会面のちっこい記事とかめっちゃ面白い事件があったりするんだよね。
 ということで、前置きはこのくらいにして、早速始めていきます。

[2012年9月20日(木)]
・「著者殺害の懸賞増額ー「悪魔の詩」イランの宗教財団ー」(朝日新聞、国際面)
 インド系英国人作家のサルマン・ラシュディという人が書いた、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺する小説「悪魔の詩」を巡っての出来事だそうで。イランの宗教財団はラシュディ氏の殺害懸賞金を280万ドルから330万ドル(約2億6千万円)にしたそうだ。
 で、何故この記事を選んだかっていうと、この小説を和訳した五十嵐一助教授という人が殺されちゃったんだよね。でこの五十嵐教授は筑波大の教授だったのです。で、確か食堂付近のエレベーターのところでやられたというのをどこかで聞いて覚えていて、「ウワー、アソコでやられたんか」と思い出したので選びました。特に他に言うことはないね。

・「「仲良し」の書、転送3万回」(朝日新聞、オピニオン面「耕論」) 
蒼井そらちゃんが中国で人気だよー、って言うインタビュー記事。それ自体はまあ、あっそうという感じだし、昨今の日中関係に関しての言及として蒼井そらを載せるのも別に妥当かどうかは知らんが、「新聞にもAV女優が出るんだぁ」と嬉しく思ったのが一点。
 しかし、もう一点は駄目出し。それは彼女のプロフィールについて。まず、職業の欄には「タレント」と書いてあって、彼女が今AVに出ているのかどうかは知らないから、まあ良しとしよう。が、だね、プロフィール欄が酷かった。引用しよう。「83年、東京生まれ。セクシー女優として出演作がアジア圏で大人気。~」。これは問題ですね。いや、朝日に限らず、よく「セクシー女優」って使われるけど、意味が分かりません。そんな職業はありません。普通にAV女優って堂々と書けばいいじゃん。「セクシー女優」とか、全く訳の分からんオブラートに包むって、差別的だと思う。乞食を「ホームレス」と言うとか、そういうのと同じで、「配慮しました」ってポーズを取っているだけで、すごく表面的だし、逆に差別的だし、実際は差別に真剣に取り組もうという姿勢は全くなし。
 昔、NHKの「真剣十代しゃべり場」みたいな番組で、色んな職業の大人と議論するみたいな企画があって、そこに及川奈央が出演していたんだ。でね、東大出身が売りのゴミ屑みたいな出演者が「AVやってるヤツなんてクソだ。」的なテンプレどおりの蔑視発現をしたのさ。そしたら及川奈央は毅然とした態度でこういったのさ「私はAV女優です。自分の出演した作品に誇りを持っています。」的なことをさ。カッコイかったな、及川奈央。
 とまあ長くなったが、何が言いたいかというと、「身体の不自由な方」みたいな意味の分からない配慮という名の言葉狩りは、全く意味がないばかりか、逆に差別的だと思うよ、ということです。

・「アノニマス騒動 自由侵さぬ著作権管理を」ドミニク・チェン(朝日新聞、オピニオン面、「私の視点」)
 「CC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンス」という言葉を始め知って、「へぇー、いいじゃん」と思ったので。要するに、作品の2次利用(同人誌がメインの問題なんだろうけど、僕の場合は引用とかさ)において、どこまで・どうやって使っていいかを6種類のライセンスにして、作者が作品にそれを明記するという制度らしい。

[2012年9月22日(土)]
・「原爆慰霊碑にスプレー 男を逮捕」(朝日新聞、社会面)
ちっこい記事だったんだけど、めっちゃ面白かったので。広島平和記念公園の原発死没者慰霊碑に赤いスプレーをかけたとしてアルバイトの男(35)が逮捕されたそうだ。で、彼の動機が面白すぎる。「オスプレイや沖縄問題に腹が立った」から原発慰霊碑にスプレーしてしまったらしい。メチャクチャやん!右も左も合ったもんじゃないな。爆笑した。

・「月末まで特別価格で提供 DVD「自閉症の人が見ている世界」」(朝日新聞、社会面)
 宣伝なのかな、朝日新聞厚生文化事業団が出しているDVDが安くなっているらしい。価格は3巻セットで1万5000円だそうだ。高!!気が狂っているのかしらん。

・「大阪の慰安婦写真展 中止に」
ニコンの運営する写真展で開かれる予定だった「元従軍慰安婦の写真展」が右翼の抗議で中止に追い込まれた事件に関する記事。月刊「創」が力を入れて抗議的なのをしていて、それは東京での開催が中止された時のこと(6~7月)で、大阪での開催も中止になっちゃったという記事。
それにしても扱い小さすぎ。さっきのDVDの宣伝の方が大きかったもん。もう新聞に期待してもしゃーない。がんばれ「創」!

・「宗教施設で暴行死容疑 京都信者8人を逮捕」(社会面)
 宗教法人「空海密教大金龍院」の施設内で信者が集団リンチされて死んじゃったという記事。
この日の記事では「教えに反する行為をしたため、暴行した」という信者の供述までしか分かってなかったんだけど、翌日の続報で動機は「タバコを吸ったから」だと判明したらしい。
 カルト系の事件は安定してぶっ飛んでるなあ。でも、現在の日本社会に蔓延する「嫌煙ファシズム」を先取りしているという見方もできなくはない。筒井康隆氏の「最後の喫煙者」を思い出した。

[2012年9月24日(月)]
・「出生前 血液で父子判定 学会「協力しないで」」(朝日新聞、何面かは忘れた)
 妊娠中に母親の血液に含まれる胎児のDNAを調べ、父親を特定する親子鑑定の出生前診断ビジネスが日本でも始まったらしい。その診断の精度は99%以上らしい。で、日本産婦人科学界は倫理的に問題があるとして反対しているらしい。安易な中絶に繋がりかねないと危惧しているみたいだ。
 実際「自分の子じゃありません」といわれたら、結構「香ばしい」気持ちになるんだろうな。石川辰三の「青春の蹉跌」を思い出しましたよ、と。

[2012年9月25日(火)]
・「オウム捜査終結 高橋容疑者起訴」(朝日新聞、一面)
・「オウムの闇に切り込めたか」(朝日新聞、34面、1ページぶち抜きの特集)
・「オウム流 今も -アレフと光の輪 続く勧誘-」(朝日新聞、社会面)
 オウムの捜査が終わったので沢山記事が掲載されたのでまとめて。気になったのは最後の記事だね。よく「麻原回帰」が問題視されるけど、「麻原回帰」を問題視することが問題だと思う。信教、思想、精神の自由を全く無視している。犯罪を犯して捕まるのはその通りだと思う、何の問題もない。しかし、「あいつをぶっ殺してやる」と思っただけで捕まったのでは大問題だ。
 「麻原に回帰してはいけない」なんていうことはあってはいけないと思う。頭の仲は自由であるべきだと思う。仮にそれが凄惨なテロ事件を起こしたカルト団体の教祖であっても、「信じる」ことは自由だ。犯罪を犯さない限りは何の問題もないはずだ。ジョージ・オーウェルの「一九八四年」を思い出す。「思考犯罪」だっけかな。「麻原回帰禁止」を国家権力が強制力を持って行う社会は恐ろしい社会だと断言できる。

[2012年9月27日(木)]
・「変化を求めて 「暴論」じゃない、まともだよ」作家 高橋源一郎(朝日新聞、オピニオン面、論壇時評)
 高橋源一郎氏のインタビュー記事。高橋氏はエロ業界の人だと認識していた(嘘です)が、マジメっぽくキチガったことを主張しておられて「さすが」と思った。それ以外には、この論壇面には外部から「論壇委員」を招いているらしく、そのメンバーに森達也氏が入っていて嬉しくなる。朝日はインタビュー系の人選は面白いと素直に思う。東浩紀氏とかもチョクチョク登場するし。

・「安倍さん再登板に一言」(朝日新聞、社会面)
 オウムを擁護して干された宗教学者の島田裕巳さんがアドバイスしていた。あと鈴木邦夫さんがまた登場、朝日は鈴木さん大好きみたいね。

・「「赤旗」記者の会見を拒否」(朝日新聞、社会面)
 原子力規制委員会が「しんぶん赤旗」記者の記者会見への出席を認めなかったらしい。象徴的な事件ですね。多くは語るまい。ご想像にお任せいたします。

以上、長くなりましたが、今週の面白記事でした。
役に立ったかな?

 
新連載!!
・「裏探偵稼業日記其ノ一 ~迫り来る陥穽(かんせい)~」
執筆者 内村トシアキ

【Caution!!】
 男性の皆さんぜひ御一読いただき、注意してください。余裕のある方はこの記事をシェアして、友達に周知願います。遂に出会い系詐欺、facebook進出の動きが出ています(女性の方も、お時間ある方は読んでみて下さい。長いですが)。
 3日くらい前に見知らぬ女性から友達リクエストを受けました。覚えがないけどまぁいっか、と承認。(Hinako Miyamoto、保育士と名乗っておりました。facebookには基本情報や写真など、特に怪しくはないので普通の人に見えます。)
 すると何とmessengerにスパムメール&スパム写メールの雨アラレ(笑)。いわゆる逆ナンてやつですね。居住地をしつこく訊かれ、会いたい!と連発してきます。
 最初スルーしてたんですが、次にこの女性は悪名高くて有名な「みんブロ」のリンクを貼り付けてきて、『アタシ日記書いてるから読んでね。ニックネームと年齢を登録するだけで読めるよ♪』とメッセージ。このリンクはみんブロとは別の出会い系サイト「CUORE」というサイトへの飛ばし行為です。ワンクリック詐欺のような気がするので、開かないことをお奨めします。(多分架空請求されます)
 そして最後に『知られたくない人にfacebookやってるのが知れてしまったから、やめます』と言って、アカウントそのものが消えました。
 要するにこの女性(というか詐欺グループ)は、不特定多数の男性に友達リクエストを送信し、悪質出会い系サイトに誘導して金を搾り取ろうっていうわけですね。…腹立ちますよね。写メの人物の色香に騙されてはいけません(笑)
 ちなみに僕は相当腹が立ったので、社会人になってから乱読したビジネス書、法関連書の知識を活かし(笑)、この女性が消える前に、
・ネット上で「CUORE 詐欺」と検索すれば、同様の事例がヒットする件
・特定商取引法上、企業には会社概要の欄に拠点となる住所を記載することが義務付けられているが、「CUORE」は東京都新宿区としか記載されておらず、所定の手続きに則った企業活動をしていない件
・国家権力を動員すれば、取引先銀行の口座情報(詐欺に使われている口座)を調べ、代表者や居住していると思われる物件の情報を得ることができ、更に、被害届無しでも詐欺の疑いが立証されれば、刑法上債権の剥奪及び、口座の凍結が可能である点、etc.
 要は、『あなたの組織を潰すことは、一般人でも出来ますよ』と警告してやりました。
 それからは一切迷惑メールが来なくなりました。架空請求も今のところありません。ネット上を見ると、最近の日付で、同様の手口による被害の情報がかなり報告されています。恐らく、これを読んでいる方にも不審者から友達リクエストが届く可能性もあります。少しでも怪しいと思ったら、無視するなり、友達をやめるなり、メールアドレスを変えるなりして対処しましょう。(仮にサイトに登録し、クレジット決済をしてしまっても、消費者生活センター経由でお金を取り返すこともできるようです)
 間違っても、登録して課金ポイント購入してメールのやり取りをすることは避けましょう。ぼったくられます。世の中にウマい話など、一切ありませんから。

〈コメント〉
・Aさん(男性)
 僕のところにも来たよ。(第三者の為、コメントはその趣旨をオパーリンが編集。以下「オパ編」と記載。)
・内村トシアキ
 Aさんへ
 Aさんにも来たか(^-^;
 ピアノボーイ=純情=引っ掛かりそうという、いかにもな短絡的思考の構図ですな。歌舞伎町ヤクザの考えそうなことだよ。出会い系に手を出すほど落ちぶれちゃいねーっつうの( ̄^ ̄)実にけしからん!!
久々の毒舌内村節を炸裂させまして、大変失礼しました(笑)お付き合いいただいてどうもありがとう。


・「裏探偵稼業日記其ノ二 ~協力者との邂逅(邂逅)~」
 執筆者 内村トシアキ

【報告とお知らせ】
 先日の『SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を悪用した振り込め詐欺』に関する記事を読んでくださった方々、ありがとうございました。
 今回は経過報告と、今後の対応についてのお知らせがあります。例によって大変長いですが、なるべく皆さんに有意義な情報をご提供できるように書きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
 さて、先日見知らぬ女性からの友達リクエストを受けたことが発端となり、スパムメールが届き始めました。うっとうしいので逆に奴等を脅すメールを送ってやり、いったん影をひそめたかと思われた迷惑メールですが、先日とは違う複数の詐欺団体から、魑魅魍魎[ちみもうりょう]の如く押し寄せて来ました。奴等はfacebookアカウントのメールアドレスを巧妙に盗み出し、奔流のように拡散させています。恐ろしいことですよね。腹立たしい限りです。
 皆さんも本当に気をつけて下さいね。
 今回の件で、僕は『インターネット経由の金融犯罪』について興味が出ましたので、ここ数日でネット上のソース(情報源)の閲覧および、関連書籍の立ち読みを行い、オレオレ詐欺から還付金詐欺、出会い系詐欺などの複数の振り込め詐欺について予備知識を仕入れ、更にgoogleやyahooアカウントを偽名で作り(捨てメールアドレス作成)、これらの迷惑メールの内容に引っ掛かった振りを装い、サイト情報、架空請求の手口、詐欺に使われている口座などを可能な限り記録し、迷惑メール本文と併せてレポートを書きました。
 そして本日、所轄警察署にアポを取り、勤務時間外ではありましたが、金融犯罪を担当する刑事さんと面会することができました。
 受付で「先程連絡した者です」と言うと何やら不審な目で見られ、何と通された先は、取調室でした(笑)入ったのは生まれて初めてです。
 二人の刑事さんが入ってきて、まず「おたく職業は?」と訊かれ尋問モードに入りましたが、何とか自分は怪しい者ではないことを納得させることに成功しました。そして作成したレポートを見せ、インターネット(特にmix, Twitter, facebookの弱点をついた)出会い系詐欺について話を聞いていただき、僕は情報提供の目的でやってきたのだということをお伝えしました。
 そうすると先程の尋問モードからうって変わって、刑事さん達が優しくなり、「このような振り込め詐欺は日々刻々と進化していって、相談者も増加の一途を辿っているが、相手はプロの詐欺集団なので足がつきにくく、被害届受理も難しいので被害者は泣き寝入りせざるを得ないのが現状。更に実態の掴みにくい相手では、どうしても人員数の都合上、捜査に十分な戦力を投入することができない」とのことでした。被害者の中には借金をしてまで奴等に操られて振込を行ってしまい、日々返済に追われながら一生懸命働く人も少なくないようです。騙される側にも責任があるにしろ、ひどい話ですよね。こうやって人の生き血を吸っているヤクザ共と出会い系サクラとして荒稼ぎしている女達は許せません。
 今回の訪問では最終的に思いもかけず、「内村さんには今後も捜査にご協力願いたい。作成したレポートは、今後の捜査の資料として使わせていただきたい」とお墨付をいただくこととなり、担当刑事さんと名刺交換もしました。
 僕も色々と考えた末、出来る限り情報提供を行い、捜査に協力することにしました。このことが収入になるわけでは無いですが、犯罪者の跳梁を許すわけにはいかないという正義感が、僕にそう決意させました。
 今後は引き続き、捨てメールアドレスを使って別人になりすまし、騙されているフリをして逆に詐欺団体の情報を引き出す予定です。奴等はメールで「会社に電話するぞ、住所調べて取り立てにいくぞ」などともわめいていましたが、捨てメールアドレスのアカウントには架空の住所を書いたので、調べようがあるはずもなく、万が一そのような事態になったとしても、刑事さんが間に入って決して僕に実害が発生しないよう努力することを約束してくれました。
捜査への協力にあたって、僕は自分のfacebookの情報を極力減らし、可能性は少ないですが、皆さんに危害が及ばないように隠密裡に行動するつもりです。アップロードした写真や投稿で、個人が特定される恐れのあるものは削除も検討しています。(それ以前に友達にしか公開してませんが。)
 少しでも振り込め詐欺被害撲滅の一助となれればと願い、僕自身も金融犯罪に対する研究および、警察との情報交換を怠らず、勉強していこうと思います。
 今後は本業の片手間ではありますが、【裏探偵稼業日記】と称し、皆さんに金融犯罪から身を守る術を、タイムリーに提供していきたいと考えています。不定期ですが進展があれば都度、ご報告できればと思います。
 以上になります。最後まで読んでくださってありがとうございました。

〈コメント〉
・Bさん(男性)
 思わぬ副業だね。小説みたいだ(笑)IPアドレスをたどれる技術屋が相手にいると厄介だから使う端末は適度に変えた方がいいかもしれないね。(オパ編)
・内村トシアキ
 Bさんへ
 これを機にルポライターに転身しそうな勢いでした(笑)端末の使い分けは大丈夫。刑事さんから適宜、指導を受けるからさ!
・Cさん(女性)
 実は内村さん、潜入捜査で今の会社にいるだけで、もう刑事さんだったりして(笑)
・内村トシアキ
 Cさんへ
 いやいや、そんなことはないです。あくまで「一般人」です(笑)インターネットは顔が見えないから、怖い。それを悪用する卑劣な奴等には、こっちも卑劣な手段で徹底抗戦すべし。
 ホントPCの扱いには気をつけてね♪
・Dさん(男性)
 君は一体何と戦っているんだ・・・(オパ編)
・内村トシアキ
 Dさんへ
 自分でも「俺はどこへ向かってるんだろう」と、時々分からなくなる。ただ一つ言えることは、少しでも他人の力になりたいってこと。
・Eさん
 内村君らしいね!気をつけて、無茶しないで頑張ってね!(オパ編)
・内村トシアキ
 Eさんへ
 ありがとう。警察にもコネができたから、いざとなったら守ってもらうさ!これも社会勉強さ!
・オパーリンさん
 内村君、君、天才的な行動力だね!マジですごいと思うよ。俺も、間接的ながら、悪の追撃に協力したい。だから差し支えなければ、是非ともこの一連のFacebookの投稿を僕の同人誌に掲載させてほしいんだ。もちろん、ペンネームを使ってもらって構わないからさ。ダメかな?
・内村トシアキ
 オパへ
 お褒めにあずかって光栄です。自分でも何やってんだかと思うけど(笑)転載は大歓迎さ!俺も今後は若干ルポ的なものを意識して書こうと思ってる。裏探偵稼業日記も都度転載して構わないよ♪
 ペンネーム、ペンネームね。。昔使ったハンドルネームがあるから、それで。「内村トシアキ」でよろしく(^^)

―以上本文―

・執筆者プロフィール
内村トシアキ
(ウチムラトシアキ)
1986年生まれ 26才。筑波大学生命環境学群生物学類卒。現在化学メーカー勤務。
傍ら政治、経済、社会、自己啓発に関するニュース、書籍等を研究しエッセイを書いている。不本意な浪人生活および就職活動で養った虚無的視点により「物事を鋭くえぐる」ことを信条とする。東京都在住。


[オパーリンによる解説]
「内村君との思い出」
執筆者 オパーリン

 久方ぶりに本誌「オパーリン王国」から新人がデビューすることとなった。しかもタダの新人ではない、超ド級の大型天才新人「内村トシアキ」、デビューである。この記事は内村氏がその並々ならぬ行動力をもって、自身のSNSに投稿していたものを僕が読み、戦慄の余りに思わず本誌への転載を依頼したことがきっかけで掲載に至った。まず初めに、転載を快諾して下さった内村氏に心からの感謝を申し上げたい。
 さて、本解説を書き始めるにあたって、僕と内村氏との関係などから書いていき、読者の皆さんに内村氏の人となりが伝わるような形になればと思っている。
 内村氏は僕の大学時代の同級生であり、数少ない友人の一人である。卒論作成の為に研究室に所属する4年生の時に研究棟が同じになり、意気投合して仲良くなった。僕以外にも同級のS君も同じ研究棟でよく三人で一緒にご飯を食べに行ったりした。
内村君はどんな人か、と考える時、まず頭に浮かぶのは彼は恋愛の達人であるということである。仲良くなった直後、僕とS君には長いこと彼女がおらず、一緒にいて話題になるのは女の話ばかりであった。どんな話をしたかと言えば、「俺たちはモテない、それは現状における事実である。ではなぜモテないのか、それを見きわめ、解決していけば、それすなわちモテる様になるに違いあるまい」というようなところから始まり、が臭い野郎である僕とS君に画期的な解決策が思い浮かぶはずもなく、延々と禅問答が続く、というのが毎回のお決まりのパターンであった。
 しかし、内村君と出会って、それが革命的に変わった。繰り返し述べるが、内村君は恋愛の達人だったのである。いつだったかは失念したが、僕とS君と内村君と三人で昼食を食べに行った時のこと、たまたま話題が女の話になった。S君も僕もどうしたらモテるのか一向に分からない、と内村君に打ち明けた。その時、内村君の眼がキラリと光ったのである。そして彼は言った。
「どうやったらモテるか、そんなの簡単だよ。教えてやるよ。」
 内村君の「断言」に僕らはビビった。こと恋愛に関してそんなに自信満々に断言する人を始めてみたからである。なので、実を言えば少し半信半疑な気持であったことも確かだ。しかし、モテたい。その気持ちには勝てず、と言うよりも聞くだけならタダだろうという気持ちで、僕とS君は内村君に彼の恋愛哲学ともいうべき恋愛の秘儀を伝授してもらうことにした。
 内村君の恋愛講義の初日、開口一番に彼は言った。
「いいか、お前たち。恋愛はドラクエだ!」
 僕たちは彼が何を言っているのか全くわけが分からなかった。しかし、タダだし、親切に教えてくれているのだから最後まで聞こうと思いなおし、黙って内村君の次の言葉を待った。僕達の戸惑いを見透かしたように、内村君は自信満々に言葉をつづけた。
「ドラクエと同じように、恋愛には攻撃力、守備力、HP、MP、レベルが存在する。そのレベルを上げていくことで各バロメータを成長させるんだ。そうすれば、女なんて「イチコロで惚れさす事」が可能だ!」
 僕には依然として意味が分からなかったが、S君が内村君の元カノを見たことがあり「実際に超可愛かった」と言っていたので、彼の言い分を信じ、どうしたらレベルが上がるのかを実際に教えてもらうことにした。
 それからも、内村君の熱血恋愛講義は続いた。内村君は今の僕とS君のレベルや各バロメータについて解析してくれた。僕はレベル3、S君はレベル2だった。内村君は何レベなのか、と尋ねたら、彼はレベル59だと言っていた。さすがは達人である。
 そんなこんなで、僕たちは内村君に言われるままに(レベルの話以外にも、オーラの話なども教えてくれた。僕は赤のオーラ、S君は青のオーラだったと思うが、詳しい話は僕には高度過ぎて理解できなかった)修行し、彼の恋愛術を実行した。
 その時、僕には好きな人がいた。当然、内村君の恋愛術を実践し、僕はその子にアプローチした。そして、フラれた。が、僕は彼の恋愛術が間違っていたなんてこれっぽっちも思わない。現に内村君は自らの恋愛術で次々と女を「惚れさせまくる」ことに成功しているのが何よりもの証拠だ。僕のレベルが足りなかっただけだ。
 しかし、内村君は何でそんなにすごい恋愛術を身につけることができたのだろうか?僕たちは気になって聞いてみたことがある。すると内村君はニヤリ、と笑って言った。
「知りたいか?」
僕たちは是非とも知りたい、と内村君に迫った。
「実はな、俺にはこの恋愛術を伝授してくれた師匠がいるのさ。」
と彼は言った。
 以下、内村君の話の内容を要約すると次のようになる。内村君に恋愛術を伝授したのは「ナンパの天才」と呼ばれる人で、200人の女を食ったらしい。内村君はネットでその天才のことを知り、弟子入りしたらしい。その内村君の師匠はナンパ塾なるものを経営しており、実は内村君はまだ正式には入門していないらしい。そのナンパ塾に入門するためには50万円の入会金が必要であるらしい。内村君は入会するかどうか迷っているらしい。
結局、内村君が入会したかどうか、僕は知らない。「一見すると恋愛の達人に見える内村氏だが、実際のところは臆病で、女の子を惚れさせることは出来ても押しは強くないので、これまでに惜しいところまでいきながら、チャンスを逃していることも多い。(笑)
それがご愛嬌なのだが。」

 さて、長くなったが、以上が僕と内村君との思い出である。今回本誌に転載することとなった「裏探偵稼業」シリーズ、これはネットでの出会い系詐欺についての研究レポートである。内村君の実体験をふまえ、その危険性への鋭い考察がなされている。そして何より、自ら「独自研究」を行い、警察に捜査協力を直談判し、しかもそれに成功するという内村君の行動力と交渉力、感服せずにはいられない。これからも、裏探偵稼業シリーズの一読者として、探偵・内村トシアキの更なる活躍を期待している。



(※解説文改稿のお知らせ)
本記事公開後、内村氏よりメールを頂き、私による解説文「内村くんとの思い出」に何点か現実の内村氏とはかけ離れた箇所があり、誤解を与えかねないとの指摘を頂きました。
具体的には以下の様に修正を依頼されました。

「内村とオパーリン編集長の思い出の欄だけど、うん、読んでて凄い面白かった(笑)
けど、いかにも俺が超チャラ男で、女を食いまくってるように受け取られかねないので、
×「女を喰う」的表現
→〇「女の子を惚れさせる」
に変えてほしい💦
あと以下は加筆で、
「一見すると恋愛の達人に見える内村氏だが、実際のところは臆病で、女の子を惚れさせることは出来ても押しは強くないので、これまでに惜しいところまでいきながら、チャンスを逃していることも多い。(笑)
それがご愛嬌なのだが。」
的に、適当な箇所にはさんで欲しい。
今ちょうどfacebookで仲良くなってる子が何人かいるので、今のままで見られたら破綻する(笑)😁」

との事です。
ですので、解説文をそのとおりに修正・加筆いたしました。
内村氏、読者の皆様には誤解を招きかねない表現を使ってしまいました事、心よりお詫び申し上げます。

「オパーリン王国」編集長
オパーリン

連載第5回
『その「声」は「誰」の声?』
執筆者 東町健太、オパーリン

・企画趣旨
 とある大新聞に日がな寄せられる読者の「声」。その声は一体誰の声なのか?何を代弁しているのか?国民、労働者、女性、弱者、子供、はたまた単に「我々」という曖昧な共同体意識か?気になって読んでみれば、これまたびっくり、とんでもない・・・、いやいや思わず溜息がこぼれるほどのすばらしき投稿ばかり。
 ということで我々オパーリン王国では東町健太氏を委員長にすえ、「『その「声」は「誰」の声?』委員会」を結成した。当委員会では毎月、これらの投稿の中から特に秀でた投稿について勝手に表彰し、講評を行うこととする。

・『その「声」は「誰」の声?』委員会 メンバー紹介
 選考委員長 東町健太
 選考副委員長 オパーリン

・2012年8月 結果発表
〈佳作〉
「優先席より「特別エリア」を」
(出版編集業 男性 東京都板橋区 52歳)
 かねてから電車の「優先席」の存在に疑問を抱いていた。実際にどれほどの効果があるか。対象者を外見で判断しづらいケースも多くないだろうか。優先席とは名ばかりで、譲り合いの精神に頼っているのが現状ではないか。心臓ペースメーカー使用者などへの配慮も十分ではない。
 そこで、従来の「優先席」に変わり、「特別エリア」を設けてはいかがだろうか。携帯電話の使用を禁止し、高齢者や妊婦の着席を優先するエリアは、床と側面の色を変え、標識を描いて他と区別する。改装費用は安く済み、普及すれば啓発効果につながる。少なくとも妊婦らにマークを配る愚策は消えるだろうし、高齢者の安心も増すのではないだろうか。鉄道会社個々ではなく、全国共通で人々の意識を変える大胆な施策が必要だろう。

〈講評〉
・東町健太(選考委員長)
 なんという大胆な提案であろうか。筆者の提案がもし実現したらどうなるだろうかと想像してみてほしい。「特別エリア」の中で、携帯電話で声高に通話をする女子高生。「特別エリア」の中で、席に座って眠るサラリーマンと彼を恨めしそうに見やり立ち尽くす高齢者。「特別エリア」の中にいるにもかかわらず、誰からも席を譲ってもらえない妊婦。業を煮やした妊婦たちはこぞって鉄道会社に「マーク」を配る「愚策」に打って出るよう要求する。そんな、まさに現状と一寸違わぬ光景がその「特別エリア」内で展開されるだろう。なんという素晴らしいことであろうか。鉄道会社としてもその改装費用は決して「安く済む」はずはなく、誰がこんな正真正銘の「愚策」を考えたんだと後悔するに違いない。こんな大胆な施策を発案した筆者には惜しみない賛辞を送りたいと思う。

・オパーリン(選考副委員長)
 うーん、相変わらずぶっ飛んだ「声」である。が、頑張ってだね、筆者の提案の意図を汲み取ると、現状と変更案は以下のようになると思われる。現状:外見で判断するのは難しく、譲り合いの精神に頼っていて効果がない。変更案:特別エリアを設けて床と側面の色を変えて、標識を描いて区別、携帯の使用禁止。
 さて、現状の批判については至極最もな話だと思うし異論もない。が、変更案については読んでいて頭の中に「?」が50個くらい浮かんでしまった。何が変わったのか全く理解できないのである。僕が馬鹿なのだろうか?現在でも「優先席」的なステッカーは社内に貼ってあるし、それでも「譲り合いの精神」とかいうものが社会全体から欠如しているために、まったく効果がないから困っているのに、それを筆者の言う「特別エリア」にすることでどのように現状を改善できるのか全く理解できない。なにも変わってないでしょ。
 まずは論理的整合性というものを、ほんの少しでもいいから頭の中に思い浮かべて文章を書くことから始めましょう。「譲り合いの精神をいかに取り戻すか」とか「ただエリアを設定するだけでなく、強制力を持たせるべきだ」とかいう論調ならまだ意味が分かる(別にその論調に賛成できるわけではないが、少なくとも文章の意味は理解できる)が、筆者はそれ以前の段階である。
しかし筆者はそんな状態であるにもかかわらず、恥ずかしげもなく投稿し、しかもその文章から「どや」感がありありと伝わってくる。筆者の凄まじい厚顔無恥っぷりには目を見張るものがある。凄すぎる。僕だったらとてもじゃないが素面では外に出歩けない。
と、この講評文を書いているうちに、むしろ筆者は天才なんだ、論理的整合性などというそんなチッポケなことにとらわれず、僕とは全く違う次元で生きているんだ、と考えを改めさせられた。筆者の天才的な発想を賞して佳作に推薦する。

〈佳作〉
「日中友好「魚釣りの島」を夢想」
(主婦 女性 東京都日野市 79歳)
 尖閣諸島は歴史的、国際法上も日本の領有であるという。とはいえ琉球王朝の時代などは、もっと緩やかな関係で日中の人々が行き交っていたのではないかと想像できる。地図を見れば、なんと台湾に近いことだろう。
 日中政府間の外交努力により尖閣諸島を日本の領土として認め合った上で、この諸島が東シナ海を平和・協力・友好の海にするために一役買えないものか。そんなことを猛暑の中で考え、我ながら名案が浮かんだ。
 日本の領有権は明確にした上で、魚釣島の名にちなみ、魚釣り目的なら来島できるようにするのだ。近代漁法による漁業でなく、個人的な魚釣りに限り日本人も中国人も訪問できる。釣り糸を垂れながら友好親善を深められる。お互いを刺激するような施設などは絶対に造らない。太公望たちは釣りと談笑を楽しみ、それが終わるとそれぞれの国に帰っていく。
 私は争いごとが大嫌い。香港の活動家らの上陸問題を機に、日中が軍事力を増強するなどして尖った関係にならないよう心を痛めている。日中友好を深める「魚釣りの島」案は政治家や専門家たちには稚拙、滑稽などと一蹴されるかもしれないが、夢想に終わらせたくもない。

〈講評〉
・東町健太(選考委員長)
 文章のはじめでは「名案」と胸を張り、後半では「稚拙、滑稽」と自嘲してみせ、しかし最後には「夢想に終わらせたくもない」という斬新などんでん返し。これだけ短い文章にもかかわらず、先が全く読めない見事な作品である。これほどまでに見事に破綻した文章はそうそう読めるものではない。文学の前衛はここまできたのだ。

・オパーリン(選考副委員長)
 「日中政府間の外交努力により尖閣諸島を日本の領土として認め合った上で」、「近代漁法による漁業でなく、個人的な魚釣りに限り日本人も中国人も訪問できる」と筆者は提案するが、そのどれも中国政府は決して認めることはないだろう。さすがは「猛暑の中」で「夢想」した「名案(笑)」である。おっと失礼、「迷案」である。いや、また間違えた。しかも「尖った関係」なぞと「尖閣」と絡めているとことがまたオツである。そもそもが筆者のこの名案(笑)は「魚釣島の名にちなみ」とダジャレ感覚で生まれたものであることが素晴らしい。筆者の周りには一言でも「なめるな」とたしなめてくれる友人はいないのだろうかと心配になる。
 餓鬼でも口にすることがはばかられるほどの名案(笑)を新聞に投稿してしまうその勇気を賞して佳作に推薦する。

〈大賞〉
「相手チーム応援禁止の席とは?」
(無職 女性 横浜市南区 26歳)

家族と横浜スタジアムに野球観戦に行きました。地元の横浜ファンでほぼ埋め尽くされた右翼スタンドで、ヤクルトの応援をしていたら、中年の女性が近づいてきて言いました。「ここは右翼スタンドなの。ヤクルトの応援は不愉快。左翼スタンドに行って。」
断ると、その女性は連れの男性と一緒に、大声で私を罵倒し始めました。「応援の常識を知らないやつがいて困るよな。」「厚顔無恥って言うんだよ。バーカ。」
私は別に、横浜にヤジを飛ばしていたわけではありません。後で横浜スタジアムに電話をして尋ねたところ、右翼スタンドでビジターの応援をしてはいけないという規則はないとのことでした。私が右翼スタンドにいてはいけない理由は、どこにもないはずです。
一部の人たちだけで勝手に連帯感を抱き、そこからはみ出した者を、正当な理由もなく排斥する。これって「いじめ」ではないでしょうか。

〈講評〉
・東町健太(選考委員長)
非常に革新的な文章である。この文章を読んだ後、私はある一つの事件について想いを巡らせた。もう5、6年前になるだろうか。中野新橋に現れ、近隣一体に生活が危うくなるレベルの悪臭を振りまいた「うんこ煮込みおじさん」の一件である。

彼は中野新橋で暮らしていました。新宿に程近い場所にある住宅街にある自宅の敷地内で排泄物や残飯を煮込み、庭に埋めていたら近隣住民が来て言いました。「ここは住宅街なの。その排泄物の処分法は不愉快、お願いだからやめて」
断ると、近隣住民たちはマスコミの記者たちと一緒に大声で彼を罵倒し始めました。「生活の常識を知らないやつがいて困るよな。」「厚顔無恥って言うんだよ、バーカ。」
彼は別に、ただ彼のやり方で排泄物を処分していただけです。そうしたらたまたま信じがたいほどの悪臭が発生したけれど、自宅内で排泄物を煮込んではいけないという法律はありません。彼が排泄物を煮込んではいけない理由はどこにもないはずです。
一部の人たちだけで勝手に連帯感を抱き、そこからはみ出した者を、正当な理由もなく排斥する。これって「いじめ」ではないでしょうか。

中野のおじさんはあえなく逮捕された。当たり前の話だが。しかし、筆者はきっと第二のうんこおじさんになれる素質を持つ逸材であると確信している。

・オパーリン(選考副委員長)
筆者は横浜スタジアムで横浜を応援する横浜ファンを「一部の人たちだけで勝手に連帯感を抱き」と批判している。そして、「地元の横浜ファンでほぼ埋め尽くされた右翼スタンド」にわざわざ行って「ヤクルトの応援」をしていたのである。まず、何故そんな火に油を注ぐようなことをする必要があるのか、私には謎である。
そして、案の定、気分を害したホームチームのファンからクレームを付けられます。その後筆者はこのクレームを「断ると、」と、非常にサラッと書いていますがどんな断り方をしたのか、気になります。やはり、「声」欄は「不偏不党」「公正中立」を標榜する新聞の紙面の一部ですから、そこら辺はしっかりと書いてもらいたいものです。自分に都合の悪いことは書かない、それでは「公正中立」な新聞に相応しくありません。
さらに分析を続けると、筆者は「そこからはみ出した者を、正当な理由もなく排斥する。これって「いじめ」ではないでしょうか。」と締めくくっています。が、彼らは横浜ファンであり、筆者はヤクルトファンなのですから、そもそも同一集団に属している訳ではありません。ですから「はみ出す」こともないし、ただ敵対しているだけのものを「排斥」と表現することも妥当であるとは思えません。
推測するに、筆者は最後の一言「これって「いじめ」ではないでしょうか」を書きたかっただけなのではないかと思われます。そして、この文章を読んで「なるほど、確かにいじめだ」と納得する人が、果たしてどれぐらいいるのか、私には疑問です。
最後に一言、「どーでもいい」。