君がこの町からいなくなって、もう1年になる。
この1週間は長かったのに、1年は早い・・・
事の始まりは2年3ヶ月ほど前だね。
突然家を出て行った君。
タオルケット1枚だけ持って、
“賃貸マンション借りれて鍵も貰えたから今日はこっちで寝る”
ってメールで知らせてきた。
「オカンも早くこの家出た方がいいで。体ボロボロになるで。」 と心配してくれたね。
ホント、君がいないと防波堤がなくなったみたいだったよ。
その後1年経ってから、私もこの町に来た。
スープの冷めない距離ではあるけど、干渉はしない!! と決めて。
君が関東に行ったのは、栄転でも転勤でもない。
君が自ら決めたこと。
そのわけは、いろいろなことが複雑に絡んでいるんだろう。君自身もどう説明していいのか解らない部分も多々あるんだろうな。
でも、ポツンと君は言った。
「関東に行ったら、もうこれであいつにバッタリと出くわすこともないやろ」って・・・
何割くらいかは、あいつのことも絡んでいるんだね。本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。
あの日、駅で「ありがとう」と言い、顔を拭きながら改札を入っていった君。
その背中を抱き寄せて引き止めたい気持ちを抑えた。
でも・・・・抱き寄せたところで何も出来ない・・・
君の人生は君のもの。思うように生きればいい。
親がどうこうできるものじゃない。
でも、疲れた時はいつでも連絡するんだよ。
背中にそうつぶやいた。
その景色はモノクロだった。周りの音はすべて消えていた。
駅の階段を上がる君の姿が、だんだんだんだん遠ざかり、見えなくなった。
夜道を泣きながら帰り、ベッドになだれ込んで泣いた。
涙もすっかり枯れはてて、泣きしゃっくりが止まらなくなって、バスタブの中に突っ立っていつまでも頭からシャワーを浴びた。
そして、泣き疲れて眠った。
鳥の巣症候群にはならないぞ!! そう思ってこの1年生きてきた。
この町に来てからストレスは感じないから、心は元気だよ。
体・・・・、元気とはちょっと・・・言えないけど・・・・
でも大丈夫! オカンのことは心配しないで君は君らしく生きればいいよ!
関東のほうが人付き合いがあっさりしていて、オレには合う。って言ってたね。
のんびりとした街で君らしく生きろよ!
お正月はどうするのかな?お正月くらい帰ってきたら?
オカンの部屋、狭いけど、なんとか布団くらいは敷ける様にするよ。お正月くらいホテルで泊まってもいいし。
君も頑張ってるんだから、オカンも頑張るよ!!