患者の紹介に余計な入れ知恵は害惡 | 日本國人

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令和元年・紀元2679年10月1日開始。

 醫療の世界は、専門分化が暹んでいる。例えば、ある程度大きな病院に行くと、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、消化器外科、循環器内科・・・等々、様々な診療科があるようにだ。そして、そういった病院で働く醫師は、どこかの診療科に所屬して、その診療科に標榜された科目の診療を行う。そして、患者を診療した結果、専門外の範疇の事態が發覺すれば、他の當該診療科にその患者さんを紹介して、診療を委ねるのである。

 このような患者紹介は、醫師の仕事としては、日常茶飯事である。患者さんを紹介してくれる醫師は、もちろん患者にとっても有り難いであろうが、紹介を受ける醫師にとっても、仕事をまわしてくれるということで、普通は好ましいことでもある。しかし、時には、患者にとっても紹介先にとっても、あまり有り難くない紹介の仕方をしてくる医師が居ることもまた事實だ。例えば、紹介にあたって、患者に不適切な入れ知恵をふきこんで紹介してくる医師である。

 先日、精神科を紹介してくるにあたって、「精神科へ行って、もっとよく眠れる藥を出してもらいましょう。」という余計なことを患者に言って、紹介してきた内科医が居た。その内科医、患者の眠れないという訴えに對して、よせばいいのに、依存性の高い睡眠藥を連續處方し、結果として効かなくしてしまっていたのだ。その上での精神科紹介である。

 そんな患者に、「もっとよく眠れる藥を出してもらいましょう。」等と言って精神科へ送り出したら、患者は過度な期待を持って精神科へやってくることになる。睡眠藥をもらって飲んでいたが、だんだん効かなくなってきた。それで、増やしてもらったけど、それでもだんだん効かなくなってきている。昨晩は一睡もできなかった。精神科へ行ってもっと強い睡眠藥を出してもらえば、ようやくこの地獄から解放される!。と。

 しかし、精神科醫としては、このように既に藥物依存となっている患者に對し、依存性の高い睡眠藥をさらに出して、依存を増惡させるわけにはいかない。生活状況を詳しく聴取し、生活改善を勧められた上で、このような依存性の高い藥はやめていきましょう、と、生活療法をなす

と、患者は、「え?藥を出してくれるんじゃあないの??。」と、落胆してしまう。

 紹介元から、「もっとよく眠れる藥を出してもらいましょう。」などということを言われなければ、ああ、そんなものかと、落胆しつつも認識を改めて正しい治療に入れたかもしれぬものを、下手な氣休めを言われたばかりに、天国から地獄、である。

 逆に、例えば、精神科医のくせに、學生の解剖學實習以來持ってなかったメスをもって、腹痛を訴える患者の腹部をテキトーに切り刻み、どうにもならなくなってから、よくならぬから外科の先生にお願いしてもっといい手術をしてもらいましょう、などと言って外科に紹介したら、外科醫の先生は、當然激怒するだろう。それと同じようなことだ。

 患者を他科の先生に依頼するときは、患者に余計な入れ知恵をせずに、紹介先専門領域については全て紹介先に委ねること、これが患者紹介の道義であろうと、日本國人は思うのである。

 

紀元二六八二年 令和四年 一月三日