製薬会社はまだまだ儲け過ぎ | 日本國人

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令和元年・紀元2679年10月1日開始。

 最近、病院にたむろしている製薬会社の者共に、變化がみられる。

 かつての製薬会社は、ひどかった。特に、田舎ではそうである。二十年前には、医者にすりよってきて、自分の会社が開発した薬が有功であるという論文を、高額な執筆料を払って二十代の若い医者に書かせようとしたり、そういう医者を割烹やらで摂待した上、頼みもしないのにキャバクラなるところに招待したり。しかも、そういった接待の料金は、単に無料というわけではない。行き帰りのタクシー券が出るのはもちろんのこと、割烹やキャバクラで医者が製薬会社社員に講義をしたという名目で、数万円の講義料まで振り込まれたりするのだ。繰り返すが、医者になってまだ数年に過ぎない二十代の医師に對して、である。もちろん、その見返りに、うちの会社の薬をなにとぞよろしく、というわけである。なにもわからぬ若い医者から洗脳しておこうという魂胆だったのかどうかは知らぬが。

 それが、ここ最近は、そういった景気のいい話は、とんと聞かなくなった。接待が無くなったばかりでなく、製薬会社が主催または後援するような、ホテルの宴会場などを貸し切った講演会や勉強会の類も、めっきり減ってきているのである。そして、そのかわりに最近流行っているのは、Web講演会なるものである。全国各地の医者どもが、職場の机の前に座って、パソコンにて薬屋が選んだ”エライ先生!”の講義をインターネットを通じて何十分もの間、生中継で”拝聴”している姿は、想像するだに滑稽きわまりないものだと思うが、これが現實に行われているのである。

 ともかく、製薬会社が以前よりも経済的に苦しくなっているのはよくわかる。しかし、これまでが、あまりにも儲けすぎだったのだ。現状でもまだまだ儲けすぎであろう。なにしろ、莫大な講師料を支払ってのWeb講演会などというくだらぬことをする余裕があるのだ。さらに、いまだに、病院には、何人もの、製薬会社のMRとかいう立ちんぼがいつも突っ立っている。一つの薬を紹介するために、何人ものMRどもがやってきていることも多い。Web講演会などを医者に見せようとするくせに、薬の宣伝はWebだけで済ませようとしないのは珍妙なことだと、皮肉のひとつも言いたくなるというものである。説明書を持参した社員が一人来れば十分であろう。

 医師の給料は、どんどん減っている。醫療費削減のためには、患者負担の適正な増加とともに、薬価もどんどん下げるべきである。製薬会社には、まだまだ無駄があるようにみうけられる。

 

紀元二六八〇年・令和二年 一月六日