奥多摩の峰を斑に野分雲
雨の予報が出ているせいか、昭和記念公園は静かでした。
野分雲峰へと猛るごとく立つ
法師蝉木々の高みに居るやうな
曇天の動かぬ雲や白木槿
案内板覗く二人へ秋の蝶
ジーンズとロングスカート花畑
デッサンの位置を定めて秋の空
大股で歩む外人虫集く
黒髪の真白きドレス花畑
少女らのポーズしなやか花畑
秋草に頬寄せてゐる少女かな
母親の両手の中へ花畑
花畑一羽の烏過ぎりゆく
秋の野を口開けてゆく烏かな
ジグザグに登山のやうに秋の蝶
降る雨は覚悟の散歩つくつくし
鬼やんまデスクゴルフのコースゆく
栃の実や御伽の国の出入り口
栃の実に夢の詰まつてゐるやうな
栃の実の宝珠のごとく成りをりぬ
硬質な風もあるべし金水引
姥百合の森の沈黙破りをり
姥百合を邪魔するもののなき会話
秋の蝶翅をポンプのやうにして
黒揚羽森の破れ目のやうな枝
森をゆく風の調べや松風草
女郎花翔びくるものにある重み
原つぱの白炎となる野菊かな
森ひとつ動かしてゐる秋の蝶
藪蘭の紫といふ高みかな
愛犬へ夫婦二人の秋扇
ひとところ群をなしたる赤とんぼ