秋天の薄雲富士の影絵なす
秋らしくなって、曼珠沙華も満開になりました。
奥多摩や秋の絹雲肩に掛け
弁慶の史跡へ招く曼珠沙華
廃屋の草の中より曼珠沙華
白粉花や街の歴史を知りをりぬ
人にみな隠れこころや曼珠沙華
線香の香を運ぶ風曼珠沙華
白雲は自由自在や曼珠沙華
集団になればざわめき猫じやらし
白粉花や生活音の漏るる道
曼珠沙華同じ模様の皿五つ
囚はるる垣根の中の曼珠沙華
人にみなひとりの時間秋薔薇
虫の声高速道の音の中
燃え立たすこころの芯やカンナ立つ
魂の宿れる烏瓜の花
垣根より一本のびて曼珠沙華
秋蝶の速さ季節の早さかな
樹下といふ陰影ゆるる曼珠沙華
ひかり乗せ風を乗せゆく曼珠沙華
針のごと触手を延べて曼珠沙華
静けさを抱きてをりぬ曼珠沙華
その中の一茎白き曼珠沙華
俯きて屈みて撮れる曼珠沙華
曼珠沙華郵便ポストより赤し
黒靴に黒きズボンや曼珠沙華
ラーメンの幟十月桜かな
日差し得て疎密十月桜かな
せせらぎの静か十月桜かな
水玉のやうにひかりや芒の穂
宙に浮くものこそ宇宙曼珠沙華
ぶら下がり浮きたる萩のトンネルは