本堂へ魂のごとくに秋の雲
殿が谷戸庭園のレンゲショウマが五輪ほど咲いてました。
樹々と草結びてゆける秋の風
奉納の幟旗立て秋の雲
ベーカリーショップで畳む秋日傘
秋簾六味てふ名の料理店
小説家描ける水彩秋の空
秋の空幸せの数白雲の数
書店名有休休暇赤蜻蛉
休日の案内書きに秋の風
陶鉢を覗けば金魚居る真昼
秋草の花壇公民館の前
秋の空大きな玻璃の公民館
商店に顔のそれぞれ秋の宵
受付の秋の風鈴ひそやかに
短冊の巡りて鳴れる秋の風鈴
受付の竹の庇や秋の風鈴
倒れてもなほしなやかや女郎花
女郎花日差しを濃ゆくしてをりぬ
しなだるるやうに倒れて女郎花
肩を貸すもののありしか女郎花
金塊はひとのこころに金水引
輝きを宿らす記憶金水引
永遠のなきが宇宙や金水引
それぞれが磁場となりたる金水引
庭園が蜻蛉の舞台なりにけり
庭園の柿落ちてゐる小径かな
薮蘭や樹下てふ風の道のあり
谷底の日の斑を揺らす秋の風
谷底の二本の松や赤とんぼ
額縁の中の虫の音四阿よ
秋の園ひたすら風を湧かせをり
葉の戦ぐ音の中にも虫の声