塀の上頭だす墓蝉時雨
洗濯物を室内へ入れ込んだら、蝉が付いてきてました。付いたまま外に持っていて放しました。
蝉時雨大樹にありし深さかな
小葉擬宝珠寺の沿革記す石
蝉時雨顔の見えざる大師像
廃屋の跡の賑はひ猫じやらし
祭笛寄付一覧の立看板
夏草に埋もれてをりぬ庭の石
蝉の殻金輪際といふ力
道路へと思ふ存分百日紅
高架ゆく特急の音炎天下
青蔦の手掛かりのなき大空へ
真つ直ぐな高架の上の夏の空
夏休みなれば少年少女かな
底紅の大樹に抱かれ輝けり
底紅の交信をする宇宙かな
薮枯らし天を支へてゐるやうな
曇天の日も鮮やかな木槿かな
車止賑はせてゐる猫じやらし
片蔭でペットボトルや作業員
鬼百合の畏まりをる玄関先
抱く父を団扇で煽ぐ子のをりぬ
羅の風にすぐさまそよぎけり
羅に風すぐ宿りをりにけり
緑陰を見つけて一句記しにけり
翔び去りし蝉の鳴き声けたたまし
風孕むやうにゆつたり夏ドレス
白日傘ときに相合傘となり
炎天下客並びをるベーカリー
ワンチャンも入れる店や氷旗
夏空もむかしのままや旧駅舎
泣ける子をなだめてゆける炎天下