行く年の凡庸として里の山
旧年中は、皆さま大変お世話になりました。来る年が皆様にとりまして、良い年でありますようお祈り申し上げます。ありがとうございました。
行く年の子らを育てし野辺の道
行く年の大海原に夫婦岩
借景の比叡今しも雪催
亡き人を偲びて年を惜しみけり
冬の蠅ひかりの高さへと歩む
玻璃といふ非情な檻や冬の蠅
大年の同じ時刻に出会ふ人
大年の赤橙映ゆる都市の空
古里の酒買ひに行く大晦日
酒器ひとつ箱より出して大晦日
心労の種そのままに年を越す
登りたる山の想ひ出年を越す
大歳の怒涛つんざく音のせり
大歳のひとり過ごせば亡母の声
ひと渓の扇駆けゆく除夜の鐘
除夜の鐘松明めらと盛りたる
煌々と乾きてをりぬ除夜の月
除夜の星ひとつが殊に瞬きぬ
集落に知らぬ人なし除夜詣
除夜詣連絡船も眠らざる
古里のぼそぼそなりぬ晦日蕎麦
地酒はもぶつかけてゐる晦日蕎麦
年の夜の一合時をかけて酌む
見知りたる寺の幾つか年の夜