
郷愁をあたためてゐる猫柳
今頃になって、本格的に雪が降り始めました。今日は、天気予報が外れかなと思ったら、違いました。
波風も野もひかりをる猫柳
薄氷を前にふたりのベンチかな
白波へ尻尾を預け臥龍梅
春の猫翡翠のごとき夜目なりぬ
軒低き能登の旧家や白魚川
自転車を停めて見てをり白魚網
地酒酌むまづ民宿の田螺あえ
縄文の丘早々と雪割草
太陽にばりりと歯型海苔を噛む
流氷の根もぷかぷかにぷつかぷか
邂逅は想ひあればや蜷の道
日当たらぬ苔むす岩や猫の目草
迷ひ込む獣の道や青木の実
白峰を眼前に置きうまごやし
たすきする若き僧侶や春障子
山火立つ悪魔の貌の面長に
柔らかきところへ積もり春の雪
下萌に笑顔絶やさぬ地蔵かな
はんなりと芯強き人水菜かな
真白な富士を背にして焼野かな
蕗のたうむかし庄屋の蔵ひとつ
指に急く勢ひのあり春の水
緋毛氈呉須絵の皿に壬生菜かな