
露草の目指す高みに届かざる
諍ひのしじまの中へ小鳥来る
表裏なきことの明るさ吊し柿
報道は娯楽番組うそ寒し
台風の来るてふ夜の静けさよ
明け方の薄闇包む秋の雨
路地今もみんなのものや秋刀魚焼く
必要な分の長さに飛蝗とぶ
邯鄲や明りに工夫ありし庭
渓流と照葉が奏づハーモニー
誰よりも場を心得て秋扇
居酒屋は家庭料理やむかご飯
木の実道獣の糞の新しき
存分に青空へ熟れ木守柿
峠道柚子の里より来る売子
夫と妻ふたりの旅の秋思かな
風来ればこころが急くや吊船草
止り木へ銀杏ほのと香立つ
草の実を見つけて嬉し散歩道
気に入りの風待つてをり草の絮
青空をカンバスとして照紅葉