
(金蘭です。)
金蘭のつつしみ深きこころかな
ちょうど今頃の、武蔵野の森の中に咲いているのが金蘭である。
山で出会うと、とてもうれしい気持ちになる。なにか得をした気分なのである。
金塊でもないのに、それに、金蘭は、これ以上は開かなくて、
それもまた、心を寄せたくなることのひとつである。
稚児百合の園児のごとく群れなせり
大空へなにを描かん筆竜胆
山住の一つ目小僧一輪草
手足みな円を描きて踊子草
海老根咲く村人知るや尾根の道
海老根咲く王道楽土四季の国
岩壁を垂直に添ふ岩燕
北国の今が旬とな桜餅
膨らまし元へ戻れぬ紙風船
一声に鳥一斉に夏隣
荷風忌の「抜けられません」路次の奥
身をやつすこともかりそめ竹の秋
鉄火肌ときに白肌春の宵
常ならぬさらに一盞大石忌
春時雨日本間なりし骨董屋
ぐらぐらの乳歯一本草青む
親展の手紙一通忘れ角
廃城の地に散り敷くや桜蕊
のつそりと八重山吹の吹かれけり
やさしさは生来のもの山吹草
この尾根を登つて来よと山つつぢ
ひとときを菫と過ごす丘の上
風は潮ここを住処と碇草
蕊幾つ東国ミツバ躑躅かな