日当りの水場の近くに、生息するように思う。
金剛山から葛城山への登り返しに、水越峠という、実に、情緒たっぷりの峠があり、
そこに、金剛山から降り立ったときに、釣船草の群落に出会ったことを思い出す。
なぜか、水越峠という名前と、釣船草のそのバランスが、
さすが、古人が名付けたものであると、感心したのである。
奈良から大阪へと抜ける峠であるから、
歴史そのものは、充分にあるに違いない。
釣船草というと、そのことを思い出すばかりである。
林間の日に裏返る秋の蝶
雨雲を呼び込み揺るる水引草
林道に大岩小岩秋の蝶
渓はみな雲湧くところ秋の雨
青梅街道なりしはむかし登山道
丹波山の渓に佇み葛の花
秋時雨濡らす峠の石畳
峰々に高みを競ひ秋の鳶
杉鉾の尾根を重ねて秋の山
大菩薩峠ひらりと秋の蝶
街道に表も裏も秋の山
逸早く逃げ行く鳥や秋の山
振り向けば秋雨となる峠かな
ブナ大樹祠の中へ秋時雨
登高のいにしへ人と歩みたり
稜線の人と出会はぬ秋の山