なにかこの頃は、夜の秋なる風情もないような気がする。
異常気象で、夏の喜びも、秋の愁いもなく、過酷な自然に翻弄される地球の姿が、
見えるばかりである。
更にいえば、古代もまあ、こうあったであろうし、もっと、過酷であったに違いない。
地球が再び変化しようとする兆候なのであろう。
それが、安定するまでは、かなりの時を要するのであろう。
自然のとりとめもない力の前には、人間の力なぞ、なんのことがあろうぞである。
曾祖母の裁縫箱や夜の秋
兜屋根連なる村や夜の秋
登窯封じて置くや夜の秋
赤レンガ倉庫群とや夜の秋
窓開けて遠き灯の見ゆ夜の秋
陰陽師安部晴明や夜の秋
山家へと訪ね来しひと夜の秋
黄ばみたる酒場のポスター夜の秋
ポスターが語り継ぐこと広島忌
若き日のポスター一枚百合匂ふ
ポスターで募集してをり祭笛
新涼の琥珀の眼鏡なりにけり
先生の眼鏡ずり落つ水着かな
眼鏡して涼しき一重瞼かな
鼻と髭付たる眼鏡夏祭