鏡池散る紅葉帰るがごとく鏡池 安息は思索に似たり寒の鯉 小春日の演習場に白煙 短日や朝夕闇の通勤路 奈良へ行くくらがり峠柿落葉 七五三かまどの神の居る社 冬菊の彼岸此岸と咲き競ふ 咳すればチラリ横目の車内かな 道祖神裳裾明るき柿落葉 木枯しや路地と路地とを結ぶ路地 海沿ひの銀杏落葉や熊野道 夜半の冬眉毛の薄き人ばかり 一日につけし節目の寝酒かな 鳥一羽つぶすもてなしきりたんぽ 冬の日の付け句に惑ふ庵かな 冬服の肩に疲れのありにけり