手に取れば惜しまるること黴のパン
萱草の花木立へと誘る
直実が生まれし丘や草いきれ
夏萩や煙の絶へし大浅間
笑顔はも合はずにをれぬ夏暖簾
湖に風なきひと日胡蝶蘭
山梨に富嶽見る山月見草
駒草に白きがありし八ヶ岳
外塀は江戸の浮世や洗い鯉
行水を思へば河童美女なりし
陶枕夢で説教七賢人
ふんどしの男等潔め夏袴
はやばやと浴衣着こなす娘かな
縁側で将棋を指すや半ズボン
瓜揉む妻の居ぬ日の台所
会話みな天へと抜けてビール干す
夏布団夢見るやうな軽さとも
肌の合ふ人会はぬ人鰌鍋
漂流の至りしところ皮鯨
噴水のうらめしさうに池の上