『花も夢を見るのだろうか』
とても美しい人を見た。
あんな風に華やかになりたい。
そうだ、いっそ花になろう。
蝶やミツバチも、人々も寄ってきて、美しさに皆驚嘆するだろう。
そうしたら、きっと幸せだ。
いやいやでも、萎れていく自分を見るのは、どんなにか悲しくて悔しかろう。
とても知恵のある人を見た。
あんな深くてどっしりした、生き方をしたい。
そうだ、いっそ樹になろう。
集まる人や動物たちに、涼し気な木陰を作ってあげれば、彼らはきっと癒され、私を尊敬するだろう。
そうしたら、きっと幸せだ。
いやいやでも、老木となってきしみ始め、葉も枝も落ちていく自分を見るのは、どんなにか悲しくて悔しかろう。
とても自由な人を見た。
あんな風にどこにでも身軽に行けて、やりたいことをやれたらいいな。
そうだ、いっそ鳥になろう。
思う存分に翼を広げて、大空に飛び出すのだ。遠くのいろいろな町を見て、風を、空を感じるのだ。
一番遠くまで飛べば、皆が羨むだろう。そうしたら、きっと幸せだ。
いやいや、だんだんと体力が落ちて、飛距離が短くなり、最後には一つの場所にしか居られなくなる。
そうなったら、余計に悔しくて、どんなにか悲しかろう。
今まで行ってきた場所の華やかな思い出が、今度は重たくのしかかるに違いない。
生命という共通項のなかで、生きとし生けるものが体験することは、きっと皆結局は同じだ。
どんなに美しくても、知恵があっても、自由であっても、過去からも脈々と、皆、平等な生命の流れのなかに生かされている。
とても不思議な夢を見た。
たぶん私は花で、私は樹で、私は鳥になっていた。
とても楽しくて、歌を歌いながら、周囲の動物たちや人々に、これ以上ない程の強くて優しいまなざしを向けていた。
彼らも私と同じように美しくて、そして、慈しむように、私を見つめ返していた。
不意に心に温かなものが流れ込んできて、誰かが私に「愛だ」と言った。
その途端、心にある翼が空を包み込みそうなくらいに広がるのが分かった。
何か特別なものに向けて、心が強く引き付けられる。
これからそちらに向かうのだと分かる。
どこにあるかわからないのに、すでにあると思うのだ。
「愛」を感じた時、本当に欲しい何かは、むしろ求めるのを止めた一瞬の「永遠」に現れるのだと知った。
恐れも何もない、静謐で力強い「永遠」が、私をただただ導いていた。
花も樹も鳥も、夢をみるのだろうか。
いや、彼らはきっと既に知っているに違いない。
その時その時の「永遠」を、ただ生きているだけなのだから。
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