あの頃は
小さなつくしを見つけるだけで
とても嬉しくて
摘み取って
駆け出して
母のもとへと走る距離がもどかしくて
そのつくしを受け取る母の手が
とても大きく感じられて
それが食卓に並んだ時の感動が大きくて
そんな風に一つの出来事が
まるで吸い込まれるように
エキスを散りばめながら
感動を連ねていった
その感動は美しい思い出となり
心の奥深くの地層に眠る
日々の生活は
季節感があまりにもなくて
あっと言う間の毎日
でもその感動が地層の奥で
それが私の本質だと時々言う
琥珀のようにキラリと輝きながら
地下水と言う涙を流しながら
この時が本当の私だと言う
一番の純化された魂は、
きっとそこに在る
自分が自分であるとの手応えは
あの頃の春の河辺で
小さな手でぽきりと折った
つくしんぼの茎の感触
頼りないけど
確かでいて
驚きに満ちていて
そして、手渡す時の喜びに溢れる
遠い過去の感動の思い出は
自分の本質そのもの
だから、
人はときどき振り返って
甘ったるい過去の時間を味わう
自分を取り戻すために
裏切らない思い出を
ちゃんと温め直す
心のなかに
御守りのように
ひっそりと立つ
つくしんぼ
ありのままの自分が蘇る
ひょろりとした
つくしんぼ
うつつ