http://ameblo.jp/oosui/entry-11508123219.html 上巻


こちらは、「知りたがり屋の博士 -上-」からの続きです。


*************

博士は急いでキュリオを取り出して彼女にかざしました。


彼女はどうしてウィンクしたのだろう。


博士は思い、急いでキュリオを覗き込みました。

そこには、いつものようにその理由がぼんやりと水の雫のなかに浮かんで来る・・・・


はずでした!


でも、何も浮かばないのです!

キュリオはただのガラス玉みたいに、遠くの激しく動く赤い服の彼女を映しているだけでした。


そんなはずはない!

博士は慌てました。今まで一度だって、そういうことはなかったのです。



桜水現実のサクラサク-フラメンコ

博士は、あわてて隣で酔っ払っている男性をキュリオを通して見ました。


「この人はなぜ酔っ払っているのだろう?」

しかし、また何も浮かんでこないのです。


キュリオは、ただの水晶玉になってしまったのだろうか?

博士は首をひねります。


そこにちょうど、懐中時計にしきりに耳をあてている初老の男性がやってきました。


「ちょっとすみません。その懐中時計は壊れているのですか?」

「そうなんですよ。困ったものです。大事な大事な懐中時計なのに」

「ちょっと失礼・・・」


そう言って、博士はキュリオを通して懐中時計を見ました。

たくさんの歯車が並んでいるのが見えます。その中の一つが止まってしまい、ほかの歯車がせき止められて、うんうんと動けずに唸っているのが見えました。

よくよく見ると、その止まってしまった歯車を支える細い細い芯が、いびつな形に曲がっているのが見えます。


「歯車の一つを支える芯をまっすぐにしたら、動くようになるでしょう」

博士は言いました。

「有難うございます。時計やに今から行くところでしたが、原因がわかっているのなら話は早い」

男性はそう言って、帽子を被りなおし、嬉しそうにいそいそと去って行きました。


博士は首をひねりました。

壊れているのではないらしい。

キュリオをまじまじと見てみましたが、以前と何の変化もありませんでした。


気が付くと、周囲にあれだけ群がっていた人達が居なくなっていました。

踊りを踊っていた例の美しい薔薇の女性ももうどこかへ居なくなってしまいました。


しまった。


博士は反射的に思いました。

どこに行ってしまったのだろう。あの美しい女性は・・・。


その次の日から、博士は彼女を探し求めました。

何故こんなに博士が彼女を探しているのか、自分でもわかりませんでした。

しかも、キュリオは相変わらずなんの問いにも答えてくれませんでした。


しかし、博士は彼女のウィンクを思い出すと、胸をタオルで思いっきり絞められたような苦しい気持ちになるのです。にもかかわらず、そのシーンを何度も何度も思い浮かべました。

何故なら、苦しい気持ちと同時に、真綿にくるまれたような何か甘やかな気持ちになるのです。


何故、こんな気持ちがするのだろう・・・。


博士は首をかしげて、とうとう、キュリオを自分にかざしてみました。


しかし、やはりキュリオはただのガラス玉同然で、彼のシャツの胸のボタンがぼんやりと大きくにじんで見えるだけでした。


「もう答えを教えてくれないキュリオなど要らない!」


ある日博士はとうとう癇癪を起して、キュリオを床にたたきつけました。

博士は穏やかな性格だったので、めったに怒ったり声をあげたりすることはありませんでしたが、彼女に会いたいばかりにイライラがつのってしまったのです。


その途端に、キュリオはぼ~っと霞み、ふわっと消えてしまいました。


続く・・・



「知りたがり屋の博士 -下-」に続きます。

http://ameblo.jp/oosui/entry-11512437318.html