金曜の夜、10時過ぎ携帯が鳴った。


私はちょうど仕事を終えて会社を出たところで
今日は金曜だから、お城近くのワインバーにでも一人で行くか

それとも、
どっかでお手頃ワインでも買って、お城でひとりでのみますか?
などと楽しい自問自答をしてる折であった。

電話の相手は、普段は福岡にいる一番上の兄であり

「お前、いま銀座近くに居らん?」
「うん。今会社出たとこ。なんで?」
「今、仕事関係のやつらと一緒におるんやけど、うまいワインでも飲まん?」
「…行く~~~~!!」

と言うことで、急遽銀座に直行となった。

うちの兄貴は拠点は福岡だが、とにかく出張が多くて、アトランタだ、ヘルシンキだ、チューリッヒだ、京都だ、名古屋だ、とどこに居るのかわからない。その日も次の日から北海道だと言っていた。
こう書くと、やたらとかっこよく聞こえるが全くそうではなく、ワインに目がない、戦闘力だけは豊富ないいオヤジである。

特に戦闘力が豊富な分、気前よくご飯とワインをおごってくれるので、この時ばかりは、私もごたごた反抗せずに、大人しく仲良く飲むことにしている。


にしても・・・・

兄弟どおしの話って、基本的に何度も何度も同じ話の繰り返しだ。

引き出しのなかに入ってる兄弟の思い出話はそうそう真新しいものは何もない。
繰り返し、繰り返し、同じものを取り出して
眺め直して、笑ったり、感動したり…。

その日は、兄のお仕事仲間の方がお二人加わっており、
私と兄の思い出話に全く嫌な顔ひとつせずににつきあって下さった。
感謝感謝である。

だからであろうか。
第三者にわかってもらうためであろうか。

思い出話の彩りがまた鮮やかなのである。
お酒のせいなのか、いい意味で地元に居ない開放感なのか、

二番目の兄の失敗談(二番目の兄自身は失敗とは思ってはいない)
慌てまくった父親の話
怒りまくった母親の話
すぐ女性に良い顔してた祖父の話
それから、兄のいまの素敵な家族の話。

一緒に蝶を追いかけた話。
水筒の水を分けあって、家族全員でやった最初で最後の山登り。
鳥類センターで私がおもらしをした話。

もう何度も聞いたよ、と笑いながら言いたくなる話を
兄も私も何度も何度も繰り返した。

そして、また大切に心の引き出しのなかに仕舞った。
また、取り出して話す時のために大切に。

家族ってほんとにすごいと思う。
生まれた時から、ひとつのグループなのだ。
責任も義務もグループで背負って、
喜びも悲しみも怒りも、頼んでもいないのに背負ってくれてる。
そして、またそれぞれに新たな家族が出来て、また皆で背負うのだ。

家族って本当に不思議だなぁと思う。
生まれた時から決まっていて、選べないのに、
なんとなく私はこの家族を選んだ気がする。

「お兄ちゃん、身体気をつけてね」
そう言ったら、子どものように、「ん」と、こくんと頷いた兄が居た。
そして、「お前もしっかりがんばれ」と返ってくる。

どんなに歳をとっても、兄と私の距離は、蝶を追いかけていたあの頃のままだ。

息を潜めて、捕虫網を高くあげる兄を後ろから見つめていたあの頃のまま。

大袈裟だけど、両手を握りしめて、ちょっと祈るような気持ちで…。


以下は、皆で飲んだワインと、フォアグラとトリュフのリゾット。

蝶ではないが、よろめいて、網にかかってしまうぐらい、美味しかった(笑)


気がついたら、2時半であった…

ったく、不良である。

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