それからも毎日、島田に対する暴力は続いた。
男女問わず順番は回ってくる。
初めのうちこそ恐怖に支配されてたが、次第に慣れていくことに、また恐怖を感じた。
当たり前になってはいけないと、わかっていたはずなのに。
あたしたちには、まだまわってきていない。
この日もいつもと同じように床に転がる島田を前にして、ハジメが吠える。
「次は玲奈」
ハジメの冷たい声が教室に響く。
玲奈。ついにきたのだ。仲間にまわってきた。
隣に座る玲奈を見ると、まっすぐ前を向いて微かに口元を緩めている。
まさか・・・・笑ってる?
一瞬そんなことを思ったけど、見間違いだと思い直す。
こんな卑劣な行為をしなければいけないというのに、笑うなんてあり得ないことだ。
「ついに来たね」
いつもの昼休み、顔色を悪くしながら裕子ちゃんが言った。
順番はいつか必ずまわってくる。
40人足らずの中で、いまだに回ってきていないのが奇跡だったのかもしれない。
けれどまだ、心の準備ができていない。
“まだ”どころか、あたしには一生心の準備なんてできないだろう。
「玲奈、どうする?」
問いながら、あたしはふとハジメの発言のあとの玲奈の顔を思い出した。
微かに微笑んだように見えた彼女の口元。
心のどこかで引っかかって消えてくれない。
「あたし、できると思う」
平然と、あたかも当たり前だと言うように、玲奈はさらりと答えた。
「嫌じゃないの?」
驚いて言葉をなくしたあたしのかわりに、裕子ちゃんが聞いた。
「だってしかたないもん。それに、少しスッキリしそうじゃない?」
開いた口がふさがらないということを、生まれてはじめて体験した。
あたしと同様、陽菜と裕子ちゃんも驚いていた。
感覚が麻痺していたのかもしれない。
痛がる島田に。
謝る島田に。
逃げている自分たちに。