「ねぇ、最近毎日ひどくない?」
昼食時間、顔をしかめながらそう呟いたのは陽菜だ。
あたしはあれから、陽菜、裕子やん、玲奈と4人で行動を共にしている。
陽菜の言いたい事が島田のことだとすぐに理解できた。
「毎日嫌になる・・・」
「ハジメたちやりすぎだよね?島田が可哀想」
「でも、何もできないよ」
「それはそうなんだけど・・・」
周りに聞こえないようにヒソヒソと話す。
ハジメの仲間に聞かれたくない。やっぱり彼等が恐い。
「新は学校になかなか来ないし、毎日つまんないー」
そう言ったのは、新に思いを寄せる玲奈。
彼はごくたまにフラッと学校に現れ、フラッと帰っていく。
学校に来ない理由はわからないけど、家庭内に何か事情があるという噂を耳にした。
それ以上は誰も知らないらしい。
だからその話の真相もわからない。
誰とも行動を共にしない、一匹狼な彼。
どこか陰があり、ミステリアスな一面が、玲菜だけでなくたくさんの女を夢中にさせている。
「早く新に会いたいな」
握りしめたフォークにウインナーを刺す玲奈。
「大川君は謎だよね。全然学校来ないし、何してんだろ」
あたしはあえて“大川君”と呼ぶ。
“新”と呼ぶのが恥ずかしいからなのか、“大川”という自分と同じ名字に無意識に特別な感情をもっているのか、自分でもよくわからない。
「次に学校来たらもっと話しかけるんだ!」
玲奈は彼が学校に来る度に積極的に話しかけるようにしているらしく、気合はいつでも十分だ。
「玲奈の話は置いといて話戻すけど、これ以上島田いじめエスカレートしないといいね」
遠くを見つめながら、願うように呟いたのは裕子ちゃん。
「イジメなんていつか飽きるんじゃないの?」
玲奈はどこか他人事のように言った。
たしかにあたしたちは直接的に関わっているわけじゃない。
ただ、傍観していることは罪じゃないのだろうか。
見て見ぬふりをすることは、正しいことなのだろうか。
「こんな無意味な話するのやめない?勝手にやらせときゃいいんだよ」
玲奈が今度は明るく言った。
陽菜と裕子ちゃんはそれに頷くこともせず、ただ、うつむくだけだ。
「・・・・早く、やめてくれるといいね」
あたしがいうと、玲奈以外が静かに頷く。
何も起きませんように――。
あたしたちは、たしかにあの日、強くそう願った。