♦同じ名字の彼
――2007年 春
ひらひらと舞い散る桜。あたしはそれを右手で掴もうと、空を見上げながら歩く。
地面に落ちる前につかめたら、幸せになれる。
いつか誰かから聞いたことがある。
「あっ・・・」
ふわりと握り締めた拳の中に、一枚の花びらが迷い込んだ。
幸せになれる――
心地のいいスタートだ。
大川あずみ。今日から高校生。
都会とは言い難しいちょうど都会と田舎の中間と呼ぶにふさわしいそんな場所が、あたしの生まれ育った地元である。
電車で数分のところに海があり、歩いて数十分のところに山がある。
海と山に囲まれた自然溢れるこの町が、あたしは大好きだ。
「あず、おはよう^^」
空に突き刺さるような高い声が響いた。
「おはよう」
改札口を出た所で、陽菜が待っていた。
彼女は山城陽菜(やましろひな)。中学からの付き合いで、一番仲のいい友達とよべる。
背丈はあたしとほぼ同じ。日本人女性の平均ぐらい。
だけど体重は平均以下。ダイエットの効果あり!ってところ。
成績も抜きつ抜かれつ競い合いながら、こうして同じ高校に合格した。
真新しい制服を着た生徒達の合間を器用に通りながら、あたしたちは肩を並べて歩く。
見慣れない家、はじめて歩く通学路。
すべてが新鮮で、わくわくしてしまう。
「同じクラスじゃなかったら嫌だな」
長い髪をゆらす陽菜が不安そうに呟いた。
「大丈夫だよ。一緒になれるような気がする」
なんてポジティブな発言をしてみたけど、内心あたしも不安でいっぱいだ。
玄関を抜けると、下駄箱に張り出されたクラス発表に群がる生徒たちが視界に入る。
ガヤガヤと、たくさんの声が混ざる。
「見てくるね」
陽菜は人を掻き分け、前へ前へと進んでいった。
黒、黒、黒、ビミョウに茶色。
さすがに入学したばかりだからか髪を染めている生徒は少なく、黒いデコボコが視界に広がる。
髪を染めてみたいな、なんて思う気持ちはあるけど、初日から実行できる勇気はない。
落ち着いてきて、周りが染め出したタイミングで、自分も茶色にしようと思っている。
しばらくすると人の間から顔を出した陽菜が、満面の笑みを浮かべてこちらに戻ってきた。
あたしはその顔を見た瞬間、彼女に向かって微笑み、ピースサインを返した。
言葉はなくても伝わる。同じクラスになれたのだ。
「うれしいね!うれしいね!」
生徒達を掻き分けあたしに駆け寄る陽菜は、興奮して大はしゃぎをしている。
「うん!すごぃうれしい!」
顔の筋肉がゆるむ。
陽菜と同じクラスになれたということは、本当にうれしいことだった。
《つづく》
---------------------------------------------
へんなとこで切っちゃってすいません汗
ながすぎたかなーとおもってw
