『でもこの時間だと、オニ高のヤツらきてんじゃない?』
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ノッコの一言に、全員が「あぁ~」とげんなりする。
オニ高。
それは、あたしたちが通っている大森高校の、夜間部のこと。
大森第二高校。だから、略してオニ高。
そのイカつい名の響きにまけないぐらい、生徒たちは総じてガラが悪い。
毎日夕方近くになると、登校してきたオニ高生たちが学食に溜まり始めるわけだけど・・・・。
その光景たるや、ここはスラム街ですか>と尋ねたくなるほど。
昼と夜で、この学校はガラリと顔をかえるのだ。
「あ!そぅいえば!」
突然、まりえが声をあげた。
「オニ高のプリンスって、知ってる?」
「プリンス・・・・?」
おいおいおいなんだそりゃ。イギリスじゃねーんだから。
「なに?なにそれ?」
白けるあたしを置いて、モカが食いついた。
「今年からオニ高に入った男の子なんだけどー。これがもぉっ!とんでもなくカッコイイの!」
「えー、見たいみたい!」
「今から学食いこっか」
「うん!」
・・・・・えぇ~。マジかょ。めんどくせ。
気乗りしないけど、みんなが行くからあたしもついていった。
学食にはすでにおに高生がウジャウジャいて、ビビったあたしたちは入口から顔をのぞかせ様子をうかがう。
「どう?プリンス、いる?」
「んーっと・・・。あっ!いた!!あそこ!!」
まりえが指差したほうをみんないっせいに見る。
あたしも、一拍遅れてみた。
「ほらっ、自販機の前にすわってる」
・・・・・・え?
「茶髪に、白の服の」
・・・・・・ちょっと待った。
「あれだょ、オニ高プリンス!」
「あぁ・・・・・・あーーーーーっ!」
大声を張り上げたあたしに、痛いほどの視線が集中。
「どしたの、泉穂」
モカたちがオロオロする。
オニ高生のみなさんの目が怖すぎる。
なのに肝心のアイツは、まるで聞こえちゃいねぇって感じで、ボケーッと紙パックのウーロン茶を飲んでいる。
「た、橘 アキ!!」
名前を叫ぶと、やっとこっちを向いた。
あぁやっぱり。本人だ。てことはコイツ・・・・・・オニ高の生徒だったわけ?
プリンスって・・・・・・お隣さまかよ!?
あたしがこんなに目を白黒させてるってのに、橘 アキは得意の無表情のまま。
そしておもむろにストローから唇を離し、入口に立つあたしを見る。
また昨日みたくロクにしゃべらないつもりか?と思ったら、意外なことに橘 アキが口を開いた。
だけど、そこからとびだしたセリフは、
「誰、あんた」
・・・・・・地球のみなさん、この男を殴っていいですよ!!
その後は、なんかもうサイアクだった。
失礼極まりない橘 アキはさっさと教室いっちゃうし、モカたちからはさんざん質問攻めにあうし。
帰宅するころにはグッタリつかれきっていたけど、あたしは眠気をガマンして、窓の前で待機し、そのときを待った。