アニメ『言の葉の庭』 新海誠
劇場アニメーション 『言の葉の庭』 (サウンドトラックCD付) [Blu-ray]6,264円Amazonアニメ『言の葉の庭』をようやく見た。予告の一瞬だけの映像がとても綺麗で前々から見ようとは思っていた。50分に満たないくらい、30分アニメ2話分の分量だが、ほとんど完璧に近い作品に仕上がっている。新宿御苑の池のほとりの屋根付きベンチというか、小屋というか、開かれているけれども、誰かがすでに座っているときに座るにはちょっとした抵抗があり、でも雨宿りという口実があれば他人と座っていても不自然ではない、いってみれば喫煙所みたいな、とても絶妙な場所が物語の半分の舞台として選ばれたこと、これがこの成功のほとんどをなしている。 そちらが幻想の、雨の日の、世界だとすると、現実の、晴れの日の世界は学校。15歳の少年は晴れの日は朝からまじめに学校に行き、雨の日に東屋で出会う空想的な大人の女性に思いを馳せながら一日でも早く「おとな」になりたいと願う。そんな、空想の、雨の日にのみベンチで出会っていた二人が、現実界でばったりであってしまったときから物語は一気に終局へと雪崩れ込む。夢想的世界と、つまらなく自分がちっぽけな現実の世界は、新宿御苑と学校、雨と晴れ、とでこれまでは厳密に分割されていたのだが、それが崩れ去り、ここちよい関係に危機が生じる。そして・・・映像の美しさは言わずもがな、雨ってこんなに美しいのかと、雨の日が好きだった幼稚園児のこころに立ち返る人もいるだろう。ただ、「ほぼ」というのは、どうしても最後の結末がここまでもってきてそれかよ、というあまりに人間的で、ちっぽけなものだから。もっとも27歳と15歳の、等身大の感情のぶつかり合いという意味ではリアルだ。でも、言の葉の庭という名前から連想していた、「言葉」と庭の密接な絡み合いといったものは、最初に発せられる短歌、思いがけずも二人のその後を予言してしまうことになる、短歌だけであって、それもヒロインの職業柄、何の気なしにでたものだけのようだ(あるいはそういうのは照れによるもので、あった瞬間からあの歌の中身を少年に向けて呼びかけていたのであれば、それはそれであんまりにはしたないだろう)。 つまり15歳の少年の側からすればすばらしく美しい物語だ、だが、ヒロインと、そして3年の女子生徒の立場からすると、物事はますます悪化している。そのもやもやがあるから、手放しで二人の恋の成就を願うわけにもいかないなんともすっきりしないラストになるわけだ。ただ、2話分でここまでまとめなければならないことを考えると、いずれにしてもほとんど完璧に近いと思う。