サイバー分野における日米安保条約5条適用について | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

サイバー分野における日米安保条約5条適用について

 報道によれば、日本政府が、北大西洋条約機構(NATO)が2014年に採択した「ウェールズ宣言」が、加盟国へのサイバー攻撃をNATO全体への攻撃とみなすとの意思を明確にしたことを念頭に、日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会において、日本へのサイバー攻撃に対し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条を適用することについて検討を開始した。(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190104-00000507-san-pol

 

 今日のサイバー上の安全保障政策の重要性に鑑みれば、サイバー攻撃を武力攻撃と同様に扱うべきか、日米安保条約の下でいかに位置付けるべきかを検討することは正しい。しかしながら、日本政府はこれまで、本件についてあまりにも鈍感であった。報道にあったNATOウェールズ・サミットでの宣言は5年前のこと。

 それにもかかわらず、小生の質問によって、この「ウェールズ宣言」について政府が長い間、無関心であったことが明らかになったのである。昨年4月の委員会質疑で、これだけ重要な問題が米国も参加するNATOで合意されたのであるから、その適用詳細について聞いたのかと質したのに対し、当時の黄川田政務官は、「聞いてはございません」と答えている。これに対して小生が、サイバー攻撃に対する対応は重要であるため、「無責任ではないんでしょうか」としたうえで、「分からないのなら聞くべきじゃないですか」と聞いて初めて、「委員御指摘のとおり、確認」することを約束したのである。

 米国は当然のことながらNATOの一員である。日米協議においてサイバーを専門に協議する枠組みを民主党政権時代にせっかく作ったにもかかわらず、5条の適用のあり方を照会すらしてこなかったのである。小生の指摘を受けてからやっと検討する気になったのか、米国の圧力を受けて重い腰を上げたのかはわからないが、思い付きのような政策転換で武力攻撃の認定に関する5条適用について取り上げ始めるのでは、政府の真剣度が疑われる。

 

 今後、改めて本件をとりあげて質し、真に必要な対応について政府側と真剣な議論を進めていきたいと考えています。なお、ご参考までに、当時の小生の委員会質疑について、以下の通り議事録を掲載しておきます。

 

190 - 参 - 内閣委員会 - 10号 平成28年04月14日
○大野元裕君 時間がないし、今日は黄川田先生にもお越しをいただいているので、ちょっと別な話を次にさせていただきますけれども、外務省にお伺いいたしますが、ネットの話というのは日進月歩でございます。サイバー上の環境も大きく変化をしています。サイバー上の安全保障が現実の世界において大規模な被害をもたらす、こういった可能性もいろんなところで指摘をされているところでございますが、その一方で、サイバー攻撃って僕ら余りよく定義として分からないところがあります。
 そんな中、一昨年ですか、五月だったと思いますが、NATOの、北大西洋条約機構のウェールズ・サミットにおきまして、NATO加盟国一か国に対する攻撃は他国に対する攻撃とみなして、NATO憲章の第五条適用、つまり集団的自衛権の適用だということを実は宣言しているんです、NATOはサミットにおいて、首脳会議において。
 つまりこれ、とても権威ある機関がそういうことを言ったというのは物すごくやっぱり重い話だと私は理解をしていますけれども、仮にNATOが、NATO構成国に対するサイバー攻撃を受けた、そのときに五条適用であるということを言う場合のサイバー攻撃の定義、及び我が国として、国際法上の解釈ですけれども、許容されるサイバー攻撃上の集団的自衛権の行使の範囲というのはどこだというふうに今我が国は考えておられるんでしょうか。
○大臣政務官(黄川田仁志君) 大野委員にお答えいたします。
 御指摘のとおり、二〇一四年の九月のNATOウェールズ・サミットにて採択された首脳宣言において、サイバー攻撃についていろいろと議論がされましたが、このサイバー攻撃の定義に関する記述はございませんでした。また、サイバー攻撃が北大西洋条約第五条の援用に当たるか否かについての決定は、北大西洋理事会によりケース・バイ・ケースにて行われる旨、記述がされております。
 サイバー攻撃と自衛権の関係におきましては、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものであり、一概に述べることは困難であると考えております。いずれにせよ、これまでサイバー攻撃に対して自衛権が行使された事例はなく、サイバー攻撃に対する自衛権行使の在り方については国際的にも様々な議論が行われている段階であるというふうに承知をしております。
 一般国際法上、ある国家が集団的自衛権を行使するための要件などもいろいろなところで申し上げておりますが、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、ほかに適当な手段がないこと、必要最小限の実力行使であることというふうに一般的に考えております。
○大野元裕君 済みません、五月じゃなくて九月でしたね。失礼いたしました。
 黄川田先生、とすると、我が方これ確認したんですか、NATOに。一般的にとおっしゃいましたが、聞いたんですか、これ。教えてください。
○大臣政務官(黄川田仁志君) 聞いているということではなくて、このNATOウェールズ首脳宣言がございまして、そこの中からこういうことが読み取れるということでございます。
○大野元裕君 それは少し無責任ではないんでしょうか。攻撃をされたときに跳ね返りで攻撃を我が方受けるかもしれない、そういうものです。しかしながら、それがケース・バイ・ケースで分からないとすれば、我が国サイバー上の話ですから、これ何かまだ分からないわけですよね。
 実は私、聞きに行っているんです、NATOまで行って。余りにもやっぱりこれ危険ですから。是非、やはり政府としては、どういうケースなんですかというのは聞くのは当然の話じゃないですか。そうじゃないと、我が国攻撃受けるかもしれないんですよ、NATOの条約に当てはまれば。
 それはそうじゃないんですというならそれで結構です、もちろん。それは我が国が安全をきちんと守るのは当然の話ですから、政府として。ただ、分からないのなら聞くべきじゃないですか。もう一度教えてください。
○大臣政務官(黄川田仁志君) このサイバー攻撃についてはいろんなものが想定されるわけでございまして、その様々なケースでどういうことができるかというのは、先ほども申し上げましたが、議論の最中でございますので、ここで申し上げることはできません。
○大野元裕君 さっき聞いていないとおっしゃったんじゃないでしたか。
 もう一度確認します。聞いたんですか、聞かなかったんですか。
○大臣政務官(黄川田仁志君) 聞いてはございませんが、国際的にこういう形で様々な議論がなされているという段階でございます。
○大野元裕君 サミットの首脳会議の最終宣言で、これ、採択された文章の中に入っています。だとすれば、これは確かに議論されているものでありますから、明確に文章として表れているものですから、聞くぐらいは当然じゃないんでしょうか。
 是非、最後、政務官、私もうこれで質問終わりますけれども、最後に、これから聞きますということは是非御対処いただきたいと思います。
○大臣政務官(黄川田仁志君) 委員御指摘のとおり、確認いたします。

190 - 参 - 外交防衛委員会 - 14号 平成28年04月21日
○大野元裕君 先週、内閣委員会で、これは当時、黄川田政務官がお越しになってお答えをいただきましたが、一昨年九月、NATOのウェールズ首脳会議におきまして、サイバー上のNATO加盟国一か国に対する攻撃は、NATO憲章の五条適用、つまり集団的自衛権の適用対象となるという声明を最終的に採択をいたしました。
 これについて実はお伺いしたところ、いや、ケース・バイ・ケースと書いてありますというのが当時の政務官のお答えですが、これ、集団的自衛権をNATOが行使するということは、万が一の場合我が国攻撃されるわけですから、一年半以上もほっぽっておいて、実は確認していないというんです、これもNATOに、聞いていないというんです。
 そこで、きちんと聞いてくれという話をお願いを申し上げ、政務官はイエスというお答えをいただきましたので、そこで、先週の話ですからお伺いしたいんですけれども、NATO側に対して確認をし、どのようなケースで集団的自衛権の行使の対象、つまり、もしかすると我が国が攻撃されるかもしれない要件になるかということを引き出したか、教えてください。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、NATOウェールズ・サミットにおける首脳宣言においてケース・バイ・ケースだという記述があるということについて更に確認しろという御指摘をいただきました。そして、結果として確認をいたしました。
 そして、御質問のNATO憲章第五条の具体的な適用範囲について確認しましたところ、NATO側の回答は、サイバー分野において全ての起こり得る事態を予見することは困難であり、どのようなサイバー攻撃が北大西洋条約第五条の援用に至るか否かについての決定はケース・バイ・ケースにて検討される、こういった回答を得ております。
○大野元裕君 一年半ほったらかしたというのがまず問題なんです。実は、僕、これNATOに二回聞きに行っています。同じ答えをもらっています。日本、攻撃されるかもしれないんですよ。それを一年半、声明を読んでそれで終わり、確認もしない、こういう対応は絶対に受け入れられないと思いますので、是非こういった機微な問題についてはしっかりと御対応いただきたいと思っています。