入管法について参議院本会議で質問いたしました。 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

入管法について参議院本会議で質問いたしました。

昨28日、1年半ぶりに本会議での代表質問を行わせていただきました。冒頭、北方領土交渉について正した後、以下の通り外国人労働者受け入れに関する入管法への質問を行いました。我が党の立場を明確にし、反対だけに終始しないとの考え方から、国民民主党の対案をひきながら、あまりにも生煮えでありながら国の形を変えかねない入管法について質しました。

 

 国民民主党は、我が国が直面する少子高齢化と生産年齢人口の減少という現実の問題に鑑み、外国人材の受入れには理解を示します。しかしながら、それは国の形を変えかねない大きな政策変更であり、国会における充実した議論が前提です。
 それにもかかわらず、本法律案は、受入れ分野や必要とされる技能水準についての規定が曖昧で、余りに多くが政省令に委ねられています。議論は不十分で、先送りの答弁ばかり、重要な項目が法律事項になっていない。
 総理、それにもかかわらず、拙速に参議院に法案を送らなければならなかった理由は何ですか。国のありようを変える法案です。参議院では丁寧な国会審議に付すとお約束をください。
 本法律案は、中小事業者を始めとした人手不足の深刻化により、我が国経済の持続可能性が阻害されるおそれがあるため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材確保が困難な分野において即戦力となる外国人を受け入れる仕組みを構築すると説明されています。
 それでは、どのような業種、職種で、それぞれ何人程度の人手不足が生じており、それがどのように我が国経済の持続可能性を阻害するのでしょうか。また、生産性向上や女性、高齢者等の国内人材の確保のための安倍政権の政策的取組が功を奏さなかった理由は何でしょうか。総理にお伺いをいたします。
 フランスでは、経済が好況であった際に外国人労働者を数多く受け入れましたが、経済が悪化してもこれらの労働者は出国せず、最下層の仕事を奪い、低賃金で引き受けたために、フランス人の雇用を奪い、賃金を押し下げました。その結果、サルコジ大統領時代に激しい外国人排斥デモが発生したのです。だからこそ、近視眼的な目先のニーズではなく、慎重な議論に基づく国民の理解が不可欠です。
 しかし、これら検討する事項、政省令に委ねられている事項が多過ぎます。総理、来年四月に法施行をしなければならない理由を示してください。
 国民民主党は、外国人労働者受入れ再検討を要求する対案を速やかに提出するつもりです。そこでは、施行を六か月間延期し、その間に全ての外国人労働者等に関する制度の在り方に検討を加えることを求めています。
 平成二十九年に外国人技能実習制度の受入れ期間を二年間延長する第三号実習生制度が新設されました。この卒業に合わせ法施行が必要との報道があります。本来、技能実習生と新たな制度に直接関係はないはずです。それにもかかわらず、法務大臣は何度も、何万人もの外国人が帰国してしまうとおっしゃっていました。他方、第三号実習生の期間満了は最も早い人で来年十一月です。
 法務大臣、施行を六か月延期しても、何万人もが帰国するということはありませんね。施行を延期して、これまでに指摘された多くのリスクを検討するべきではありませんか。
 我が国が真に人手不足の規模を超えて外国人人材を受け入れる場合、日本人の賃金を押し下げるおそれがあります。今回の法律案を提出するに当たって、人手不足の現状を把握しているのなら、賃金押し下げを防止するために、受入れの上限についての規定を明示するべきです。
 なぜ本法律案には受入れの上限に関する規定がないのか、総理の答弁を求めます。
 国民民主党が対案で検討を求める事項の中には、地域格差の解消措置が含まれています。東日本大震災の被災地を含め、地方の人手不足は都市部と同様に深刻です。
 この点について、衆議院での修正で、地域格差、特に大都市集中を招かないようにするため必要な措置を講ずるとされました。修正をしてもなお、その方途については法律に示さず、先送りですか。これならば、修正など、必要などなかったのではないでしょうか。
 そこで提案します。
 総理、第一に、業種、職種のみならず、地域別の受入れ数を定めることを法律に明記するべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
 第二に、業種内での移動の自由を無条件に認める措置を改めるべきです。
 私は、外国人労働者受入れ先進国であるアラブの湾岸諸国で暮らしてきました。これらの国では、外国人労働者が職場を変わる場合には、通常、一旦出国をさせて新たな受入れ組織の適正さの判断や当該申請者の適否等を審査してから、再び新たな在留資格を付与し入国を求めるという制度を有していました。ありていに言えば、出国させるための工夫が存在していました。
 ところが、入管法案では、出国させる実効的な制度的担保、適正でない受入れ企業等へのわたりの防止等の措置が確保されていないばかりか、業種内での移動を認めているために、入国の際に必要な措置を仮に講じても、労働者は途中でより高い給与を求めて首都圏に移動するだけです。底のないバケツです。
 業種内で移動する際には、一旦出国をさせ、それから業種、地域的ニーズに合わせて再審査する制度を法律に盛り込むべきではありませんか。総理、お答えください。
 特定技能の外国人は、社会保険の対象となることが予定されています。特定技能の外国人及び家族について、健康保険に加入するのは何人ぐらいで、それによる国庫負担はどれくらいになるのでしょうか。また、健康保険は海外在住の扶養家族に対しても適用されるのでしょうか。海外では、闇レートで入手した現地通貨で診察を受け、公式レートで請求して、差額を不正に得る例も知られています。海外における健康保険の不正利用の実態を把握し、それに対する対策は考えているのでしょうか。それぞれ、厚生労働大臣の答弁を求めます。
 本法案では、特定技能第一号人材に被扶養家族の帯同が認められていません。総理、家族帯同を認めない理由を教えてください。我が国政府が公務員や技術者を一定期間、帰国を前提として海外に派遣する際には、原則として扶養家族の帯同は拒否されないものと理解をします。例えば、外務省の研修生のように、技能の高さとは関係なく、政府関係者が扶養家族を帯同する際には税金から家族に対して旅費等の手当が支払われます。高い技能を有する外国人以外の家族帯同が適切でない、政府がこのようにお考えになるならば、我が国政府が海外に派遣する公務員等の扶養家族に税金から手当の支払を行うこと、適切と国民に説明ができますか。国籍によって家族の海外への帯同の適否への見解が異なり、そこに国税を支出することが適切と考える理由、総理、是非お示しください。
 最後に、本法案には施行後二年の見直し規定があります。外国人受入れ政策を始めてから抜本改革を行えば、社会や企業に大きな影響と混乱を与えます。それよりも、我が国民民主党が提案するとおり、まずは立ち止まって国民大の議論を喚起し、政省令ではなく法律で制度を定める努力を追求することを強く求めて、私の質問とさせていただきます。

これに対し、総理をはじめとする閣僚から、以下の通り答弁がありました。

 

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
 入管法改正案の審議の在り方についてお尋ねがありました。
 成長から分配への経済の好循環が着実に回りつつある中、有効求人倍率が全ての都道府県で一倍を超え四十四年ぶりの高さとなる一方、少子高齢化により生産年齢人口は毎年減少し、現下の人手不足の状況は深刻な問題となっています。
 これは待ったなしの喫緊の課題であり、可能な限り早急に新たな受入れ制度を実施する必要があるため、政府として、今回、改正法案を成立させ、来年四月からの制度スタートを目指すものであります。
 法案審議の在り方については国会において御議論いただくべきものと考えておりますが、政府としては、御質問の一つ一つにできる限り丁寧にお答えをし、本制度の趣旨や内容について広く御理解いただけるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 人手不足の現状と我が国経済への影響についてお尋ねがありました。
 成長から分配への経済の好循環が着実に生まれつつある中、有効求人倍率が約四十四年ぶりの高さとなっています。一例を挙げますと、介護においては三倍以上、建設業の中には十倍を超えるものがあるなど、極めて高い数値を示しています。
 他方で、少子高齢化の影響により、労働力となり得る生産年齢人口は毎年減少し、本年一月には初めて全人口の六割を切るに至っています。
 こうした中、政府としては、これまで育児・介護休業制度の整備や保育の受皿整備等の女性の活躍支援や、六十五歳までの雇用確保措置の着実な推進といった高齢者の雇用促進に取り組んでおり、二〇一二年以降、人口減少、高齢化が進む中にあっても女性、高齢者の就業率が上昇し、就業者数は二百五十一万人増加しています。それでもなお現下の人手不足の状況は深刻化しており、今後もその傾向は続くと見込まれることから、こうした取組を行ってもなお人材不足が深刻な分野に限り、今回新しい在留資格を設けることにより対応することとしたものであります。
 入管法改正案の来年四月からの法施行を目指す理由についてお尋ねがありました。
 成長から分配への経済の好循環が着実に生まれつつある中、有効求人倍率が全ての都道府県で一倍を超え、四十四年ぶりの高さとなる一方で、少子高齢化により生産年齢人口は毎年減少し、現下の人手不足の状況は深刻な問題となっています。
 これは待ったなしの喫緊の課題であり、可能な限り早急に新たな受入れ制度を実施する必要があるため、政府として、今回、改正法案を成立させ、来年四月からの制度スタートを目指すものであります。
 受入れ上限についての規定がない理由についてお尋ねがありました。
 政府としては、法律に基づいて政府が策定することとされている分野別運用方針において向こう五年間の受入れ見込み数をお示しし、上限として運用していくこととしています。受入れ見込み数は分野ごとに定めるものではありますが、人手不足の状況は経済、社会の状況によって変化し得るものであることから、受入れ分野そのものを法律事項としておりません。そのため、受入れ見込み数についても法律事項とすることは考えておりません。
 本法律案は、地域の受入れ人数を法律に明記すべきとの御指摘がありました。
 今回の制度では、そもそも全体の受入れ見込み数を法律で定めることを予定していませんので、地域別の受入れ数を法律で定めることも予定しておりませんが、地方における人手不足解消策については政府全体として取り組むべき課題であると認識しており、そのために必要な施策を検討してまいります。
 職場を変わる際には一旦出国させて再審査する制度について、お尋ねがありました。
 本法案では、特定技能外国人が受入れ機関を変更しようとする場合、在留資格の変更の許可を受けなければならないこととしており、転職先の受入れ機関が本法案等に規定する基準に適合するか否かをきちんと審査できるようにしております。そのため、外国人材にとっても負担となる御指摘のような制度を法律に盛り込む必要はないと考えています。
 特定技能第一号人材の家族帯同等についてお尋ねがありました。
 今回の外国人材の受入れ拡大については、その生活環境を確保するための各種支援を行う方針であるところ、このような外国人の家族を併せて受け入れることとした場合、その家族に対する支援も検討する必要があり、その点については幅広い観点から国民的なコンセンサスを得る必要があるものと認識しているところから、特定技能第一号については、その家族に対して家族帯同の在留資格を付与しないこととしています。
 また、この問題は、我が国の公務員等を海外に派遣する場合とは趣旨、目的が異なり、必ずしも同一に論ぜられるものではないと考えています。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

 

○国務大臣(山下貴司君) 大野元裕議員にお答え申し上げます。
 施行を延期して、これまでに指摘された多くのリスクを検討すべきではないかとのお尋ねがありました。
 まず、本法案の施行が半年遅れれば、その半年の間に、本来施行されておればこの制度を利用し得た、様々な在留資格により日本に滞在する万単位の外国人の方が日本で働く機会のないまま受け入れられなくなると考えられます。
 今回の受入れ制度は、深刻な人手不足の状況に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れようとするものであり、政府として、これまで積極的、継続的に検討を重ねてきたものであります。
 その上で、これまでに御指摘をいただいている課題等につきましては、今後、法務省令等を作成する中で対応してまいります。
 いずれにしても、現下の人手不足の状況は深刻な問題となっており、早急に対応すべき喫緊の課題であり、来年四月から制度をスタートさせることを目指すものであります。

 

○国務大臣(根本匠君) 大野元裕議員にお答えいたします。
 外国人への健康保険の適用等についてお尋ねがありました。
 健康保険は、雇用関係と扶養関係を基礎として、国籍や居住地を問わず適用する仕組みとなっており、海外在住の扶養家族に対しても要件を満たせば適用されます。
 その上で、新たに受け入れる外国人材やその家族の健康保険への加入人数や国庫負担への影響については、どの程度の方がどのぐらいの期間日本に在留するのか、どの程度の方が家族帯同可能な特定技能二号や他の在留資格に移行し、実際にどの程度の家族帯同が行われるかなどが不明であることから、具体的な数字としてお示しをすることは困難です。
 一方、外国人による医療保険の不適正な利用が報道等で指摘されていることから、厚生労働省においては、本年三月に、海外に居住する被扶養者の認定方法の厳格化を実施したところです。
 外国人の医療保険の適正な利用に向けた対応については、現在与党においても議論されているところであり、それも踏まえ対応を検討してまいります。

 

お読みいただければわかるとおり、まっとうに答える答弁ではありませんし、この期に及んで、今後対応する、検討するという答弁も多く、不安だけが残ってしまいます。審議はまだ継続しますので、法務委員会で議論していくものと理解します。国民民主党としては、本日の対案提出を含め、現実的な議論を行っていくつもりです。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181128-00000098-mai-pol