日・イスラエル投資協定国会質疑のご報告 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

日・イスラエル投資協定国会質疑のご報告

平成29年6月8日、参議院外交防衛委員会においてイスラエルとの投資協定について質問に立ちました。

 

この協定は、主権及び管轄権の及ぶ範囲と定義、さらには人権をめぐり投資した企業や投資家が被りかねないリスク等、数々の問題がある協定でした。問題があるにもかかわらず、政府は個々の問題についてイスラエル側に確認すらしていないことも明らかになりました。
しかし、民進党としては「過去の投資協定にはすべて賛成してきた」という不思議な理由で賛成を事前に決めていたこともあり、余りに問題が多いにもかかわらず、ちゃぶ台返しを行うこともできない中でのもどかしい審議となりました。
技術的な部分も多いのですが、投資企業や投資家の将来におけるリスクにも関わりますので、技術的な事項も含め、ご報告させていただきます。

1.人権決議とイスラエル企業による違法な占領地ビジネス
(大野)我が国が賛成票を投じた第25回の国連人権委員会決議がエンドースしたビジネスと人権に関する指導原則では、ビジネスを行う当事者に対しては紛争に起因する人権侵害に加担しないことを求める一方、国に対しては、紛争の影響下にある地域におけるリスクを特定し、評価するための適切な支援と広報を求めている。外務省は、本協定審議入り直前に、ホームページのイスラエル関連データを改定し、リスクが生じる可能性を指摘しているものの、現在のリスクを特定していない。イスラエルが国際法違反の入植活動をおこなう占領地のリスクを特定しない理由は何か。
(上村参考人)本協定の、あるいはこのビジネスと人権に関する指導原則に関わるようなリスクについてはないと判断した。
(大野)入植地以外について輸出等は行われない、イスラエルの企業は関わらないということか。
(上村参考人)今回の投資協定の領域の範囲については、イスラエルの主権を領土内、大陸棚、経済的排他水域に限っている。
(大野)イスラエルにある企業は、入植地において若しくは入植地以外の占領地においてもビジネスを行っており、リスクはあると思うがイスラエル企業は占領地ビジネスに関わらないということか。
(上村参考人)協定の適用については個別に判断をしたい。人権的なものに配慮するような箇所を幾つもちりばめてあり、イスラエルの企業が国際法に反するものについては、必ずしも例えば衡平な待遇を与える必要はないというような条項も入れてあり、具体的な状況に基づいてこれから判断をしたい。
(大野)念頭に置くだけではなく、特定し広報することが求められているのである。

2.国際法と国内法に従った主権の行使について
(大野) イスラエルとの間で過去に締結した租税条約と本投資協定における領域及び主権等の及ぶ範囲の書きぶりが異なっている。国内法並びに国際法に従い主権を行使できる地域が、イスラエルの領域であるだけではなく、投資協定で、領土それから大陸棚、そしてEEZについての主権的権利と管轄権が書かれているのはなぜか。
(岸田外相)投資協定と租税条約、いずれにおいても、イスラエルが国際法及び国内法令に従って主権を行使する範囲に限定することになっており、この両者の間において具体的な違いはない。
(大野)具体的な違いがないのなら、なぜ書きぶりを変えたのか。具体的に確認したいが、イスラエル政府による占領地での土地や家屋の収用、破壊、強制移住及び天然資源の利用、あるいは入植地の許可発行はイスラエルによる主権の行使か、イスラエルによる主権的権利の行使か。
(岸田外相)イスラエルが占領地において領域主権に基づく国家管轄権を行使することが認められないというのが我が国の立場。主権的権利及び管轄権というのは、排他的経済水域あるいは大陸棚という物理的に限定された範囲について国連海洋法条約が定める特定の目的又は対象事項に関連して国内法令の制定、適用、執行する権利をこの内容とするものである。
(大野)議論が粗い。さすが安倍政権。日・イスラエルの租税条約では、領土、領域とそこを分けて、こっちは主権でこっちは管轄権というふうに分けている。投資協定では全部一緒に書いた上で、そこに「主権、主権的権利又は管轄権」と一緒に入れ込んでしまっている。そもそも国連海洋法条約で定めている管轄権とは書いていないではないか。普通に読んだら、大臣の発言のようには読めない。どういった権利の行使かについて答えていないので、答弁いただきたい。
(上村参考人) 占領地においてイスラエルが実際上行っていることは、特に占領地行政と言ってよいかと思う。領域主権に基づく国家管轄を行使しているということは決して認められないことだ。
(大野)それは、国際法違反あるいは国連でも非難をされていることか、確認したい。
(岸田外相)その通り。
(大野)そうだとすると、イスラエルが国際法に従っていない部分があるということになる。しかし、「国際法及びイスラエル国の法令に従って」と両方重なる部分に投資協定は適用される。租税条約のときのようにきちんと分けてはいない書きぶりの中で、果たしてイスラエルと我が方の国際法に対する認識は同じか。ヨルダン川西岸の占領地域における占領地行政の行為は、ジュネーブ第四条約違反であるという認識を我が国も共有をするか。
(岸田外相)第三次中東戦争の全占領地についてジュネーブ第四条約が適用され、入植活動同条約に違反するという立場である。
(大野)そのとおり。しかし、2012年のイスラエル政府のレヴィ報告書では、西岸地域にはジュネーブ第四条約は適用されない、国連総会が批判しようがICJが何言おうが、自分たちの解釈は違うと言っている。イスラエルと国際法の立場は、明らかに西岸に関する限り異なっている。そうだとすれば、本投資協定の適用に際して、西岸を明示した上でこの地域は適用外と確認したか。
(岸田外相)第三次中東戦争の全占領地は含まれないとする我が国の立場はイスラエルも十分承知をしている。この条約の交渉において我が国は我が国の立場をしっかり説明をし、そしてイスラエル側はその立場をしっかり理解する、こうした確認を行ったということだ。
(大野)西岸を明示して確認したか。
(上村参考人)日本政府の基本的な立場については繰り返し説明をしている。そういう意味で、西岸も含めて説明をしたということだ。
(大野)西岸を明示してはおらず、全体について説明だけしたと言うことか。我が国の立場は理解されていると言っているが、政府間の協定ではあるものの、不利益を受けるのは企業である。日本の投資家や企業がイスラエル企業に投資を行い、当該イスラエル国の企業がジュネーブ第四条約の違反を行う場合、人権侵害に伴うリスクを負うのは企業である。もう一度聞くが、西岸についてジュネーブ条約第四協定が適用されるということを明示して確認したか。
(上村参考人)全体として日本の立場を説明したという中で、第四条約について特に議論した、そういうセッションを設けたということはない。

3.差別禁止法の取扱
(大野)本年2月1日の協定締結直後の21日、イスラエルは、国内の企業が占領地に対して物品やサービスなどを提供するとき、それを治安や信条上の理由で拒否する場合にはその旨を掲示することを義務付け、それをしない場合には罰金を課す差別禁止法を制定した。日本の企業や個人が投資をしたイスラエル企業が占領地に対して物品やサービスを提供するときに、占領地を明示せずに行う場合には、日本企業は人権上の風評被害等のリスクを負う可能性が当然あり、占領地ビジネスに加担したと言われる。逆に、明示する場合には罰金を払うこととなり、期待される投資の効果が得られない可能性がある。ならば、本投資協定が国際法に基づくとすれば、我が国の企業や個人は本協定に基づく限りこの差別禁止法の適用は受けないことを確認したか。
(岸田外相)この法に係る具体的な施行の態様については今現在もイスラエルにおいて検討中であるので、それについて直接申し上げるのは控えたい。経済や金融あるいは法的なリスクがあるということを、面会の機会あるいはホームページ等を通じて、しっかりと企業に説明したい。
(大野)さすが責任感の強い大臣だ。相手国に対して個別のケースについて確認もしないのに、どうやって説明するのか。この法律の話はすでに衆議院で取り上げられており、リスクがあることを承知したならば、見守ってなどいないでイスラエル側に個別に聞けばよかったではないか。
(大野)定義を変えるだけでもいい、2月21日の法律について確認するだけでもいい、それだけのことなのに何でできないのか。余りにも不誠実だ。
(岸田外相)この法律については、引き続き注視するし、法律の実態について確認の努力は続けるべきであると思う。

4.ゴラン高原に対する管轄権
(大野)時間がないので、次に進みたい。1981年12月に制定されたイスラエルの法律は、ゴラン高原に対してイスラエルの管轄権(ジュリスディクション)が及ぶとしている。このジュリスディクションがゴラン高原に及ぶとすれば、それは国際法違反である。ところが本協定では、ジュリスディクションを認めている。ゴラン高原に対するジュリスディクションはこの協定に基づく限りにおいては及ばない、我が国の投資家や企業について及ばないということを確認したか。
(岸田外相)国際法に反するということはそもそもあり得ない。占領地にこの協定が適用されないということも、これは国際法の関係において当然のことであるというのが大前提である。
(大野)イスラエル国内法が規定していて、しかも国連総会が求めてもイスラエルは拒否して、ICJが言っても拒否している。そんな状況だからこそ、リスクを負うかもしれない企業に対してどういう責任を政府は負うんだという話をしているのだ。ならば、提案するが、イスラエル租税条約と同じ文言に戻してから提出してほしい。
(岸田外相)条文自体、先ほど申し上げたように、領域と排他的経済水域と大陸棚、さらには主権と主権的権利及び管轄権、こういったものについては先ほど申し上げたような整理を行い、そしてそれについて交渉の中でしっかり確認をした。日本の立場についてしっかり説明を行い、イスラエル側もそれを理解した、それを確認した。この条文を租税条約に合わせたらどうかということについては、そのような確認を行っているので、書換えを行うことは必要ないというのが政府の立場だ。

5.政府による紛争解決支援
(大野)ならば政府は、今私が申し上げた三つの事項について仮に不利益なことがあった場合には、間に入ってその企業とイスラエル政府の間をとりなすのか。
(上村参考人)この協定の中には、例えば合同委員会というメカニズムもあり、問題が起こったときに両国政府がこの協定の義務に基づいて話合いをする機会もある。イスラエルがいかに何と言おうとも国際法では認められていないこと、この協定で守られるべき権利ではないということは明白だ。しかし、仮に万々一不利益を被るというようなことがあれば、必ずこの合同委員会、あるいは経済合同委員会といった機会を活用して、そのような不利益が起こらないように万全の努力を行いたい。
(大野)民間企業が不利益を被る場合には政府が間に入って不利益がないようにとりなすか。
(岸田外相)協定が締結された後、日本とイスラエルの間で協議すべき事案が発生したならば、合同委員会等を通じて日本政府としてイスラエルとしっかり協議を行いたい。
(大野)不利益を被るのは企業である。企業が一々イスラエル政府に対して確認し、イスラエル政府と議論するのか。リスクを放置したままで、理解されたと言っても、これでは企業は動けない。

6.3つの問題の確認
(大野)ゴラン高原にジュリスディクションが及ぶかどうか、そして差別禁止法がこの協定に従う限り適用されないかどうか、西岸についてジュネーブ第四条約を適用されないとしたイスラエルの従来の立場はこの協定によってひっくり返されたと確認したか。それぞれ確認したのか。
(岸田外相)我が国の立場をしっかり確認し、国際法に従うと協定の中にしっかり明記されている。
(大野)国際法上の立場を共有していない国だから問題なんだ。国連総会決議に反してもかまわない、そういう国だからこそ聞いている。
(岸田外相)御指摘の点も含めて日本の立場についてはしっかり説明をし、イスラエルはそれを理解をし、それについて確認を行った。
(大野)確認していないじゃないか。
(岸田外相)国際法に従って行うと明記している。しっかりと日本の立場については説明し、そしてイスラエルも理解をし、確認をして、そして協定ができ上がった。
(大野)余りにもおかしい。ジュリスディクションについてはここに書いてあるとおり曖昧だ。これは国際法に従うかどうか確認をすべきである。国連の場等で拒否している第四条約については。この協定だけは違うということを確認したのか、改めて聞きたい。
(岸田外相)イスラエルが国際社会において独自の主張をしているという御指摘は承知しているが、イスラエルも理解をしたからこそ国際法に従ってやるんだという条文ができ上がっている。

(大野)時間がないのでこれで質問を終わるが、不誠実だ。きちんと確認をした上で国会に対して了承を求めるべきである。イスラエルとの二国間の投資協定は是非やるべきだが、幾つもの問題があって、リスクを個人の企業や投資家が取らなければいけない余地が残されているとすれば、そこは明確にしなきゃいけない。普通じゃない国際法の解釈をしている国と協定を結んだということを指摘したい。かりに行政裁判を起こされたら、あなたたち負けますよ。そこはしっかりと認識した上で、この協定について早急に取り組むことをお願いしたい。