参議院、北朝鮮の拉致問題に関する特別委員会での質疑ご報告 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

参議院、北朝鮮の拉致問題に関する特別委員会での質疑ご報告

6月9日、参議院拉致特別委員会の対政府質疑が、今国会でただ一回だけ開催されました。その際には、党を代表して質問に立たせていただきましたので、概要を簡単にご報告いたします。

1.政府与党が拉致特別委員会開催から逃げている点について
(大野)今年に入ってから参議院の北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会が対政府質疑を行うのは初めてである。特に、外務大臣が出席に難色を示したために与党が開催に応じなかったという話もあるが、拉致問題は安倍政権の最重要課題というのは口だけか。
○(岸田外相)政府にとり拉致問題は最重要課題であるが、委員会の出席調整ができなかった。

2.現下の情勢で北朝鮮に対し発するメッセージ
(大野)北朝鮮はこれまで、圧力を掛けられた際に、人権・人道問題等で譲歩してきているところ、国際的な圧力が昨今強まっている中、対北朝鮮の制裁を解除若しくは我が国が緩和する唯一の道のりは拉致問題の解決であるというメッセージを明確に伝えるべきではないか。
(加藤大臣)これまでも、拉致問題の解決なくして北朝鮮がその未来を描くことは困難であるということ、それを理解させることが重要である旨を様々な機会で発言したきたが、働きかけを継続した。

3.特定失踪者の認定及び捜査状況の公表について
(大野)いわゆる特定失踪者については、平成十八年十一月に松本さんを認定したのを最後に、十年以上も追加認定がない。このままでは特定失踪者の問題が闇の中に埋もれてしまうのではないか。
(加藤大臣)しっかりとした捜査、調査をして認定をしていく。
(大野)追加認定が進まない中で、警察庁に尋ねると、個別の事案は捜査、調査に支障を来すおそれがあるのでコメントを差し控えると繰り返すだけである。政府の定番の回答を十年以上聞き続けている御家族の方々の気持ちを考えるべきである。拉致にせよ特定失踪者の問題にせよ、時間が多く残されていない中においては、これまでの方針を変え、現在の捜査や調査の状況について、可能な方、可能なケースについては事案を公表して、例えば国内外の関心を惹起することを提案したい。
(加藤大臣)幅広く公表していくということは必ずしも適当ではない。
(大野)全てではなく、可能なケースについての公表について是非御検討いただきたい。

4.国連人権高等弁務官報告の活用
(大野)カービー委員長等によるCOI報告書を、日本政府は拉致問題の解決に向けてどのように活用されていかれるおつもりか。
(加藤)同COI報告書は、北朝鮮における深刻な人権侵害について包括的に記述、詳述しているが、国際社会においてこの拉致問題を含む北朝鮮の人権問題に対する大変高い関心、これを改善していかなきゃいけないという大きなうねりを生み出してきた文書だ。COI報告書に明記された日本人拉致問題についての国際社会の理解と協力を得て、一日も早い解決を図っていきたい。国連総会、国連人権理事会において北朝鮮の人権状況決議決議においてもCOI報告書の記述を引用し、拉致問題の早期の解決の重要性を訴えるといった形で活用を図りたい。
(大野)その意味では、昨年十二月に国連人権高等弁務官が韓国と北朝鮮のいわゆる離散家族の問題について報告書を出しているが、そこでは様々な離散家族のインタビューを具体的に書くことによって、国際世論の関心を惹起している。例えば国連人権高等弁務官に対しても拉致被害者や特定失踪者に関する報告の作成を求めることを提案したいがいかがか。
(岸田外相)日本政府は、これまでも国連人権高等弁務官に対し北朝鮮による拉致問題等に関する深刻な懸念を伝えてきた。拉致問題に特化したような報告書を出すように働きかけたらいいのではないかという御提案も含め、引き続き働きかけは行っていきたい。
(大野)先ほど警察の捜査云々という話を聞いたが、韓国の国連人権高等弁務官報告書作成に際しては、数多くの離散家族の具体的な話を取り上げることにより、関心を煽った。したがって、捜査・調査の具体的な話を明らかにして、報告書に盛り込めるようにすべきである。
(加藤大臣)委員おっしゃるように、ある意味ではリアリティーを持ちながら、いかに悲惨なものであり、御家族がどれだけ苦しんでいるのかもしっかりアピールすることが非常に大事と思う。

5.朝鮮半島の邦人退避
(大野)安保法制は、車両による邦人等の輸送に関する自衛隊法改正を含んでいるが実効的とは思えない。邦人退避の際には、相手国の同意が前提だが、韓国政府が武装した自衛隊を韓国の領土・領海において活動させることを認める蓋然性をどう考えるか。また、朝鮮半島情勢が緊迫したが、日本政府は本件について韓国政府と協議をしたか。
(岸田外相)仮定に基づいた質問への答えは控える。韓国政府と具体的などんなやり取りをしているのかについても控える。
(大野)現実の問題として、北朝鮮も韓国も、我が国の自衛隊を同国の領土・領海に受け入れるというのは政治的判断として難しいかもしれない。それでも、実効的にどうやって日本人の命を救うべきかを検討すべきである。民進党が提出している周辺事態法改正案には、了解がある場合の相手国の領海及び公海における退避する邦人等への自衛隊による支援を可能にする条文を、私自身が中心になって朝鮮戦争当時の状況も調べて書き込んでいる。この場合には、自己の保護下に入った邦人等を守るための自衛隊による武器使用も認めている。朝鮮半島のケースを見ても、米軍は軍のアセットは持っているが、輸送手段は限定的である。そんな中で、公海で我が方自衛隊がアメリカ人を含む邦人等の退避を支援し、自己の保護下に入った場合に警護し、あるいは隊法の百二条が定めている借り上げ船舶で輸送するようなことを条件に、朝鮮半島に所在する邦人の保護をアメリカにやってもらうよう交渉するという選択が現実的と考えたから、この法律を起案し提出した。政府が実効的な対応をできない以上、我々が一昨年来提出しているこの周辺事態法改正案、議論の俎上に上げて、国会で審議するように大臣からも働きかけすべきではないか。
(岸田外相)委員から御説明があった法案は国会が御判断されることなので、行政府の立場からの発言は控えたい。

6.朝鮮半島有事の際の日本から発進する米軍機の事前協議
(大野)昨年7月15日に安倍総理は、「救援に来援する米国の海兵隊は日本から出ていくわけでありまして、当然これは事前協議の対象になるわけでありますから、日本が行くことを了解しなければ韓国に救援に駆け付けることはできない」と述べた。日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地使用の場合には事前協議の対象だが、その他の韓国に米軍の飛行機等が発進する場合に我が国の許可が要るという総理発言は、正しくない理解ではないか。
(岸田外相)岸・ハーター交換公文では、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用が事前協議の対象であり、それ以外は事前協議の対象とはならない。
(大野)駐米韓国大使館は、在日米軍基地は国連軍司令部の後方基地としての任務を遂行しており、事前協議なしに在日米軍を出動させることができるとしているが、国連軍の後方基地では戦闘作戦行動は認められていないので、韓国側も理解できていないと考えるが、いかがか。
(岸田外相)国連軍地位協定上想定されている朝鮮国連軍の活動は全て兵たん上のものであり、戦闘作戦行動に従事することが想定されていない。米軍に関しては、先ほどの交換公文が適用されることになっている。
(大野)その通りだ。しかし総理は理解できていない。そこで、大臣、第一に総理の認識を正しいものに改めていただきたい。第二に、在米韓国大使館も理解できていないので、韓国側に対してもきちんとした理解を求めるべきである。
(岸田外相) 総理の答弁はいま一度確認したい。韓国とも意思疎通をしっかり図っていくことが重要。
(大野)5月2日、北朝鮮は朝鮮半島で核戦争が起こる場合、米軍の兵たん基地、発進基地、出撃基地となっている日本が真っ先に放射能雲で覆われるであろうという言語道断な発言を行っている。他方、北朝鮮が戦闘作戦行動のみならず後方支援も標的とする以上、戦闘作戦行動以外の発進についても米軍に事前協議を求めるべきではないか。
(岸田外相)既存のメカニズムも活用しながら、日米の意思疎通を図りたい。