サイバーセキュリティ:4月14日の内閣委員会のご報告その4 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

サイバーセキュリティ:4月14日の内閣委員会のご報告その4

 4月14日の内閣委員会におけるサイバーセキュリティ基本法改正案についての質問報告の最終回です(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/190/0058/19004140058010.pdf)。

 2014年9月、北大西洋条約機構(NATO)ウェールズ・サミット首脳宣言は、NATO加盟国に対する攻撃は、NATO憲章第5条、つまり集団的自衛権の適用だとしています。このNATOが第五条適用とする場合のサイバー攻撃の定義、および許容されるサイバー攻撃に対する集団的自衛権行使の範囲についての我が国の国際法上の解釈を外務省に尋ねました。
 すると黄川田政務官は、首脳宣言にサイバー攻撃の定義に関する記述はなく、サイバー攻撃が北大西洋条約第五条の援用に当たるか否かについての決定は、北大西洋理事会によりケース・バイ・ケースにて行われる旨記述されているとしたうえで、「サイバー攻撃と自衛権の関係におきましては、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきものであり、一概に述べることは困難であると考えております。いずれにせよ、これまでサイバー攻撃に対して自衛権が行使された事例はなく、サイバー攻撃に対する自衛権行使の在り方については国際的にも様々な議論が行われている段階であるというふうに承知をしております。一般国際法上、ある国家が集団的自衛権を行使するための要件などもいろいろなところで申し上げておりますが、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、ほかに適当な手段がないこと、必要最小限の実力行使であることというふうに一般的に考えております。」と答弁しました。
 すでに当方が読んで指摘している首脳宣言を再度述べ、集団的自衛権の一般的な解釈を述べたにすぎず、これでは質問に対するなんの回答にもなっていません。

 そこで小生の方から、NATOに対してこれらのことを確認したのか、と質しました。すると外務政務官は、「聞いているということではなくて、このNATOウェールズ首脳宣言がございまして、そこの中からこういうことが読み取れるということでございます」と、ひどさにもほどがあると思わざるを得ない答弁でした。首脳宣言くらい、当然読んでから質問しているのですから、これでは答弁になり得ません。

 サイバー上では、PCからの攻撃という国家の関与を認定しにくく、且つ踏み台等を介することもあるため、意図せずに攻撃側の国になることもあり得ます。それにもかかわらず、NATOという世界最強の同盟が攻撃を行うと首脳会議で宣言しているのですから、その要件について相手側に確認することもなく宣言を読むだけで放置しておくのは、あまりに「無責任」です。小生はこのような強い懸念もあったために、実はNATO本部のあるベルギーまで行って問い合わせ、議論して来ていますが、政府は、日本が世界最強の同盟から攻撃を受けるかもしれなくとも照会すらしないで大きな顔をしています。

 そこで、政府が国の安全を守るのは当然であり、相手側に照会すべきではないかと問いただしました。
 すると、何を血迷ったのか外務政務官殿は、「このサイバー攻撃についてはいろんなものが想定されるわけでございまして、その様々なケースでどういうことができるかというのは、先ほども申し上げましたが、議論の最中でございますので、ここで申し上げることはできません」と大迷走となりました。

 「議論の最中で申し上げられない」のではなく、単に聞いていないだけの話ではなかったのかとの思いから、「もう一度確認します。聞いたんですか、聞かなかったんですか」とただしたところ、くだんの政務官殿からは、「聞いてはございませんが、国際的にこういう形で様々な議論がなされているという段階でございます」との答弁。その議論についても詳細は承知しておらず、首脳会議の宣言を知っているに過ぎないていたらくです。

 ここで質問の時間が終了となったので、小生の方から「サミットの首脳会議の最終宣言で、これ、採択された文章の中に入っています。だとすれば、これは確かに議論されているものでありますから、明確に文章として表れているものですから、聞くぐらいは当然じゃないんでしょうか。是非、最後、政務官、私もうこれで質問終わりますけれども、最後に、これから聞きますということは是非御対処いただきたいと思います」と述べたところ、さすがに「委員御指摘のとおり、確認いたします」との答弁をせざるを得なくなったのです。

 危機感ゼロの外務省が、我が国が攻撃を受けるかもしれないような問題について、相手側に照会すらしない怠慢は、決して見逃すことができないとの思いを強くし、今回の質問を終えました。当然のことながら、早急な本法の再度の改定が必要であり、そのための布石としての意味も含め、付帯決議を起案して付しておきました。

サイバーセキュリティ:4月14日の内閣委員会のご報告その1
http://ameblo.jp/oonomotohiro/entry-12156351708.html
サイバーセキュリティ:4月14日の内閣委員会のご報告その2
http://ameblo.jp/oonomotohiro/entry-12156405085.html
サイバーセキュリティ:4月14日の内閣委員会のご報告その3
http://ameblo.jp/oonomotohiro/entry-12156664158.html
参議院内閣委員会サイバーセキュリティ基本法改正案付帯決議
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/190/f063_041401.pdf