AAV7調達の疑問等;外交防衛員会における予算委嘱審査報告 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

AAV7調達の疑問等;外交防衛員会における予算委嘱審査報告

3月23日、参議院外公防衛委員会の予算委嘱審査において、F35A及びAAV7をはじめとする防衛装備品の調達について質問いたしましたので、ご報告いたします。
詳細はこちらから:http://online.sangiin.go.jp/kaig…/daily/select0104/main.html

1. 水陸両用装甲車AAV7
AAV7は装甲を施した水陸両用車両で、尖閣等が占拠された際の奪還作戦に使用するとされていますが、きわめて高額であるのみならず、その速度は遅く、上陸地点の制限も多い装備で、且つ1回限りとなるであろう上陸作戦で52両をいかに用いるのかという疑問が付されています。この調達及び運用についての疑問を質しました。
まず小生より、AAV7の最大速度、輸送能力及び上陸の際の制限等について確認し、海上での時速は13km、人員で最大24名の輸送が可能で、さんご礁などの地形では上陸できない旨の回答がありました。
戦闘下ではAAV7を輸送する船舶は遠くに停泊をして上陸作戦を実施するところ、遅い速度のAAV7が、当初から想定される良好な地点に上陸すれば、容易に標的になりかねないのではないか、と質したところ、中谷大臣は、「まず敵を制圧をして、海上優勢、航空優勢、これを確保した上で陸上部隊を上陸をさせるということを想定としており・・・AAV7の海上からの上陸のみならず、LCAC(海上自衛隊保有のホバークラフト)そして潜入ボート、これを航空機から投入をする、またCH47、V22オスプレイといった航空機による空中からの上陸など様々な複合的な組合せで、手段を組み合わせて実施する」と述べたのでした。
このLCACは海上で40ノット(約74km/h)、輸送能力は50トンで、上陸の地形制限はAAV7よりはるかに少ないものです。大臣が言うように、海空を制圧してから運用するのであれば、装甲の必要性がなくなり、AAV7と共にLCACや潜入ボート(ゴムボート)を同時に使用する想定ならば、AAV7調達の必要性に疑問が出ます。そこで大臣に伺ったところ、中谷大臣は、「島嶼部を奪回、確保するに当たって島嶼部に敵兵力が残存している可能性も否定できないために、陸自部隊が自らを防護しつつ海上から着上陸するためには防護力を備えたAAV7は必要不可欠な装備」だと言うのです。
これでは納得できず、小生のほうから、「水陸両用作戦の流れで航空優勢、海上優勢が確保されたら、併せてV22やボートやLCAC使うことになっているんです。大臣、危ないんだったら、このボートの人たち危なくなっちゃいますよね。まだ残存勢力がいて、併せて使えないじゃないですか。違いますかね。大臣のおっしゃっていること、僕にはよく正直理解ができません。併せて使うことができないような状況であればAAV7だけになるのかもしれないし、この防衛省の説明資料は併せて使うことになっています。ボートの人は死んでも構わない、こういうことでしょうか。」と聞くと、大臣は、「死んだら困ります」との答弁で、与党席からも失笑が漏れました。
さて、このAAV7ですが、先に運用している米軍の場合、我が方の最大の輸送艦「おおすみ」の約二倍の規模がある排水量二万六千トン規模の輸送艦でも最大14両のAAV7しか運用できません。ところが、中期防によると五十二両のAAV7を調達することになっています。高価で制約の大きいAAV7をこれだけの規模で調達し、三個連隊三千人の人員と共に運用するのは、現実的ではないと指摘させていただいたところ、大臣は、「おおすみ」型輸送艦を改造し、三隻を活用すれば、「性能上は四十四両全て輸送することが可能であると考えております。」との答弁でした。
これに対し小生より、更問をさせていただきました。やはり、52両のAAV7の調達には、どうしても納得できません。
戦闘が行われていれば、なかなか海上自衛隊の船は陸に近いところに行きたくありません。なるべく遠いところで降ろす。しかしながら七ノット。逆の風が吹けばよりスピードは遅くなるでしょう。ところが、LCACは、より早く、しかもより多くのものを輸送できる。しかも、海上優勢、航空優勢が確保された後というふうに言われているわけですから、私は、これだけのものは必要であるというふうに国民に対して説明するには残念ながら説得力が欠けていると思わざるを得ません。よもや陸上自衛隊のポストや人員を獲得するために、AAV7を活用して海上自衛隊のLCACを排除すると、こういうロジックでは、まさか大臣、ないとは私も思います。
 しかしながら、日本の安全をきちんと確保をし、なおかつコスト、それから適性、こういったものをしっかりと見極めていくためには、大臣、全くAAV7が必要じゃないとは言いません、ただし、この規模だとか運用の仕方をもう一度御検討いただき、現実的な運用にされるべきではないかというふうに思います。

2.F35A
 この日の質問では、FMS調達とライフサイクル管理の関係についても質しましたが(http://ameblo.jp/oonomotohiro/entry-12153282356.html)、これにも関連するのがF35Aの調達です。中期防では、高価で単発エンジンのF35Aが調達予定になっていますが、ステルス性及び機動性に優れているとされる双発エンジンのX2先進技術実証機の初飛行試験が予定されていました(すでに4月22日に実験が成功)。このX2はF2戦闘機の後継機となるのではないかと目されているところ、将来におけるF35Aとの役割分担について質しました。戦闘機の自国開発は、「青息吐息であった我が国の防衛産業の基盤技術を維持、育成するのみならず、外国製品と比較して一般に透明性が高い、あるいは長期の使用に耐える、さらには民生技術の転用」といった効果もあり、長期的な構想と役割分担を検討し、F35Aの調達を抑えることも必要ではないか、と質したのです。
 これに対し大臣からは、「X2等の実証研究を含めた検討を進めているところで」あり、「委員のご指摘を踏まえて、防空体制を総合的な体制で行い得るように、様々な観点も含めましてしっかりと検討してまいりたいと考えております。」との答弁がなされました。