覚えていますか?特定秘密保護法案の議論:国会情報監視審査会の問題点について | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

覚えていますか?特定秘密保護法案の議論:国会情報監視審査会の問題点について

小生は、一昨年の特定秘密保護法審議の中心を担わせていただき、「政府が秘密を保有することは当然だが、それが恣意的に運用され、国民の知るべき権利を阻害したり、行政の瑕疵を覆い隠すものとなってはならない」と主張してきました。このような考えに基づき、審議では、特定秘密の運用に関する監査(オーバーサイト)および可能な限りの事後検証の制度確立が不可欠と訴え、最終的にはあまりに政府側に都合のよい形での法律となったと判断し、反対に回りました。

このような中、最低限の形しか整えられていない国会の「情報監視審査会」が衆参で立ち上がり、昨年より活動が開始されました。小生もこの8名の委員会の一人に選ばれました。国民に信頼を得られる形で特定秘密が運用されるためには、この審査会が最後の砦です。しかしながら、秘密部分を除いてもなお、議事録公開が認められない等、政府・与党側には、国民の信頼を得ようという姿勢が欠如しています。そこで、これらの問題の内、特に周知しておくべきと考える主要な問題の概要を記したいと思います。

30日、参議院情報監視審査会は昨年度政府より提出された特定秘密指定管理簿を調査し、報告書を提出しました。ちなみに同審査会は、政府による特定秘密の指定および適正評価の在り方を調査および審査し、その経過と結果について国会議長に報告を行うことになっています。また、政府に改善すべき点がある際には、勧告を提出する権限があります。

この権限に基づき、報告書が提出されましたが、国会の委員会からの依頼を受けて行う審査案件は衆参共に一件もなく(この「審査」と「調査を理解せずに報道していた会社がありましたが)、調査に基づく報告が行われたのです。

参議院調査会は30回に近い議論を重ね、初年度としての制度構築に始まり、その後は調査を行い、それは是是非で実りの多いものでした。公開されている特定秘密指定管理簿等に基づき、疑義のある件については特定秘密の公開までを求め、衆議院では特定秘密文書の公開はゼロ件でしたが、参議院では3件の文書の提示と説明を勝ち取りました。

しかしながら、やはり問題はまだまだ山積しており、国民の理解と信頼を得るようなものには至っていないというのが結論です。

第一に、小生が要求した警察庁とNSCの特定秘密が審査会が提示されなかったのみならず、政府与党が結託して要求そのものがつぶされたことです。法に基づけば、審査会は政府に対して調査・審査のために特定秘密の提示を求めることができますが、政府には、それが特に難しいと考える場合に「疎明」する権利が与えられています。ところが、正式に「疎明」をしたくないと考えたのでしょうか、疑義があるから提示を要求しようとしたのに、与党側は政府が提示したくないと考えたこれらの特定秘密について、審査会で決を採ると言い出し、多数決で要求しないことに決したのです。提示を受けた3件については、政府側として提示に難色を示さず、決も採られなかった一方で、政府が嫌がれば、疑義があっても多数決により、法が定めるプロセスにすら乗せないようでは、審査会の責任は果たすことができません。

第二に、政府内の行政組織によって特定秘密の取り扱いの在り方が異なっている様子が見受けられました。特にサード・パーティ・ルール(第三国から提供された秘密については提示できないものもある)の運用が異なっていました。これも小生が指摘した事項ですが、国会での審議の際には、サード・パーティ・ルールに該当しても提示できるものとできないものがある、という答弁でした。外務省は、この答弁に沿う形でサード・パーティ・ルール適用対象の特定秘密を提示しました。ところが警察庁はこれを拒んだうえで、すべてのサード・パーティ・ルール適用の特定秘密は提示できないとしたのです。
このような政府内で運用が統一されていない様子はほかにも散見され、例えば公開される管理簿の概要のうち、防衛省部分では10程度の概要の記述が一言一句同じでした。これでは国民は、何を特定秘密にしているかわかりませんが、他の一部行政機関の概要は適切で明確な書きぶりでした。どうやら、内閣官房の取りまとめと政府内監査が機能していないという印象を受けました。

第三に、数多い問題のうち、5項目を挙げ、政府が改善すべき点がある場合に行使できる「勧告」権限を行使しようとしましたが、これもまた、多数与党の抵抗にあいかないませんでした。与党は、行政府の「勧告」権限は重いものであり、改善すべき点があるならば直接審査会で政府に指摘し改善させればよい、と法律に全く書かれていない根拠を挙げて反対してきました。そもそも国会法に基づく「勧告」には前例がなく、重いか軽いかさえわかりません。そのうえで、改善すべき点については与党側も認めているのだから、「勧告」するのが当然です。野党としてはこの与党の姿勢に対峙し、決裂し、それを世に示すという選択肢もありましたが、やはり改善させるという重い責任もある中、5項目すべてについて、文章を柔らかくしたうえで報告書に盛り込むことで妥協が成立しました。

本審査会の運用についてはまだまだ改善すべき点も多い中、これからも時宜をとらえてご報告させていただきます。