代表質問:インドとの原子力利用基本合意 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

代表質問:インドとの原子力利用基本合意

 参議院における総理に対する代表質問、何回かに分けてご報告してまいりましたが、今回のインドとの原子力利用基本合意に関する質疑が最後の報告になります。

(1)総理は国会への報告において、日印の原子力協力原則合意に関し、万が一、インドが核実験を行うようなことがある場合には、日本からの協力を停止することになると述べました。ところが、当時の日印会談の概要や両国の共同声明には、インドが核実験を行った場合の協力停止措置については一切盛り込まれていません。
 そこで小生の方より、「なぜ国会に報告したこの措置が共同声明等に盛り込まれていないのか、実際にインドに対しこの点を明確に発言したかについて」質しました。
 これに対し総理は、「仮にインドが核実験を行った場合には、日本からの協力は停止します」、「かかる我が国の立場はインドも了解しており、今般の日印の共同声明等では、こうした点も踏まえ、原則合意に至った旨を明らかにした」と答弁しました。
 お分かりの通り、なぜこの措置が共同声明に盛り込まれていないのかについては、全く答弁していません。
 
(2)既にインドとの間で原子力平和利用に関する二国間協定を締結した米仏等は、核実験を再開した場合のみならず、IAEAによる保障措置への協力を条件として課しています。これは総理が国会に報告した核実験禁止よりも厳しい条件です。
 そこで小生より、「総理はなぜ、他国よりもはるかに緩やかな条件を挙げて、インドに対する原子力協力を報告されたのですか。インドがIAEAによる査察を断り、多くの国がインドに制裁を科してもなお、我が国は核実験を再開するまで協力を継続することになるのか」と質しました。
 これに対し総理は、「核実験モラトリアムの継続、IAEAによる補償措置の適用等を含む約束と行動と呼ばれるインドの政策を前提として」いると答弁しました。
 インドとの協力は、「約束と行動」と呼ばれるインドの政策を前提としているとしながらも、IAEAによる補償措置受け入れが条件か否かについては不明確でした。この点については、改めて国会の質疑で明らかにしなければなりません。

(3)4日、総理は、インドによる核実験がある場合には日本の協力を停止すると国会に報告しました。これを受けて小生の方から外務省に本件について二度に亘り確認したところ、協力停止措置に関する報道はあるかもしれないが、協定の中身にかかわるのでお話しすることはできず、政府要人がそのことについて話したこともない、これは政府としての立場であるとの回答がありました。総理が明言しながら、外務省が「政府の立場」として否定する。おかしな事態ですし、このような状況では、本当にインドに協力停止措置を明言したかも疑わしくなります。
 そこで小生より、「合意文書に明記されず、両国首脳会談の概要でも触れられず、総理が発言されてもなお外務省が否定する日本側の制裁措置を、いかにして担保し、国民の理解を求めるおつもりなのか」と質しました。
 これに対し総理は、「インドによる核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることは、私からモディ首相に対して明確に述べています」、「かかる我が国の立場はインドも了解しており、今般の原則合意もこれを踏まえたものであります」との答弁がありました。
 総理は初めて、核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることをインド側に明言したことを認めましたが、合意文書に明記されていないこと、外務省が否定していることとの矛盾についての説明はありませんでした。

 今回の代表質問を通じ、政権の外交交渉は「詰め」が甘いのではないか、繰り返される総理の余計な答弁や誤った解釈が国益を既存しているのではないか、という疑問がさらに強くなりました。この通常国会の参議院においては、「先発」役たる代表質問をさせていただいた責任もあり、今国会を通じて、国益という観点からさらに委員会で議論を行っていくつもりです。