代表質問:慰安婦関連日韓合意部分 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

代表質問:慰安婦関連日韓合意部分

 7日、民主党を代表して参議院本会議において総理等に対し代表質問を行わさせていただき、この模様はNHKでも生放送されました。前日の衆議院における岡田克也代表に続き、力不足ながら、主として総理の外遊報告に対する質問をさせていただきました。本日より何回かに分けて、この代表質問のご報告をさせていただきます。本日は、慰安婦問題をめぐる日韓合意についての質疑です。
なお、代表質問は、全文を前日午前中に提出しており、政府として熟慮の上に答弁できるものになっています。

 年末、岸田外相が訪韓し、日韓合意に至りました。安倍政権下で悪化し続けた日韓関係が未来志向なものに変わる契機になることを願っています。その一方で、この合意については、いくつも確認しなければならないこともあり、そのうちのいくつかについて質しました。

(1)「今回の日韓合意の法的位置づけ、特に、65年の日韓基本条約を補足する合意なのか等、この条約との法的関係について」問いました。
これに対し総理は、全く答えませんでした。これは答弁漏れであるとして与野党間の議論となりましたが、本会議中の協議では結論が出ず、翌日の議運委員会でも議論となりましたが、与党側は「答弁した」の一点張りでした。よほど答えにくい論点だったのでしょうが、両国間の協定や合意の法的位置を不明確にしたままでは、将来に禍根を残しかねません。

(2)また、次の質問として、請求権・財産権を含む法的問題については解決済みとしてきた我が国政府の立場は変わらず維持されているかを問いました。これに対する答弁をもって、与党側は、上記(1)の質問への答えも含まれているとしたわけですが、全く理解できないものでしたので、総理の当該部分の答弁全文を下に掲載しておきます。
 「日韓間の財産、請求権の問題については、1965年の日韓請求権・経済協力協定により法的には完全かつ最終的に解決済みであるということが日本政府の一貫した立場であり、今回の慰安婦問題に関する合意によってもこの立場に何ら変更はありません。」

(3)さらに、野田政権下でアジア女性基金のフォローアップ事業について検討した際、安倍政権の閣僚であった自民党議員が国会の質疑において、「政治的にも解決済みである」、あるいは「人道的な見地から知恵を絞っていきたいということは、決着しているわけじゃない、そういうふうに向こうはとる」と発言して来たことをふまえ、政治的解決や、人道的な見地から知恵を絞ることも許されないならば、今回の合意はどんな解決なのか、と質しました。
 これに対して総理は、「これまで、慰安婦問題の解決の性格については、様々な見解があったものと承知していますが、いずれにいたしましても、今回の合意をもって、もはやこの問題は最終的且つ不可逆的に解決されることとなりました」と答弁しました。不誠実な答弁でした。

(4)日本側が拠出することになっている基金についても問いました。かつてのアジア女性基金は国税による支出ではなく、さらに一歩突っ込んだ税金を使用するものである以上、予算の真偽に責任を担う国会としては、当然質さなければならない問題です。このため、小生の方からは、「法的責任を果たすことなく、韓国側が設置する基金に日本のみが税金から拠出するということは、この基金の支出行為に対して我が国が発言権を留保していると理解してよいか」と質問をしました。
 これに対し総理は、「日韓両政府が協力して事業を行うことが確認されました。事業は両国政府間で合意された内容の範囲で実施する」こととなっており、「日韓それぞれがこの合意を着実に実施することとなって」いると答弁しました。韓国側の拠出はないわけですから、この基金の唯一のドナーの元手は日本国民の税金でありますが、どうやら「協力」以上に、日本側の発言権は担保されていないようです。

(5)「この基金への10億円の拠出は、慰安婦像の撤去が前提となるのか」とも質しましたが、この点に関する答弁は無かった、もしくは、(4)の答弁に含まれていると総理は仰りたかったのかもしれません。

(6)総理は今回の合意に関し、「私たちの子や孫、その先の世代の子ども達に謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない」と幾度も述べてきました。しかし、そもそも韓国政府が謝罪を求めた対象は日本国民ではなく、日本政府であったはずです。政府間の関係はいい時も悪い時もあるでしょう。しかしながら、韓国政府が日本国民に対し謝罪を求めているのではない以上、政治指導者が、国民にこの問題を押し付けてはならないと考えます。特に小生は中東暮らしが長く、民族間の対立が根付けば、その怨念は何世紀にも及びかねない中、この総理の発言を看過するわけにはいきません。
 そこで小生の方から、「韓国政府は日本国民に対する謝罪を求めていたのか。今回の合意がなければ、今も将来も、日本政府ではなく、日本国民が慰安婦に謝罪する責任を負っていたと総理はお考えか」と質しました。
 これに対し総理は、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えております。その決意を実行に移すために決断したものであります」と答弁したのです。問題を理解する努力ができないのか、あるいは強弁することで民族間の対立を扇動した責任が消えるとお考えになっているようです。

(7)岸田外務大臣が、慰安婦像の「適切な移動がなされる」と述べたことをふまえ、「慰安婦像が現在の地点になければ、撤去されずともよいと韓国側に表明したのか。また、どこに移動するか、確約を取ったか」と質問しました。
これに対し外相は、「韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力するとされており、これに尽きます。少女像の移転先などは合意されていません」と答弁しました。数メートルでも移動されれば、10億円の血税を払うことになるにもかかわらず、詰めの甘さは相変わらずです。

 それぞれの質問に対し、与党議員は大きな拍手を送っていましたが、こんな答弁で諒とする国会であってはなりません。